日産先進技術『SU-LEVディーゼル』…大気並みの排ガス性能

エコカー 燃費
日産先進技術『SU-LEVディーゼル』…大気並みの排ガス性能
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日産自動車は8月6、7日のメディア向け「先進技術説明会&試乗会」において、スーパークリーンディーゼル向けの将来技術、「HC・NOxトラップ触媒」を披露した。

HC・NOxトラップ触媒は、NOx吸蔵還元触媒の一種だ。NOxをエンジンから排出される別の物質と反応させて無害化するという点では、トヨタが欧州向けモデルの一部に採用している「DPNR」、ホンダが昨年発表したアンモニア自己生成型NOx触媒と同じ方向性の技術である。

日産のHC・NOxトラップ触媒の特徴は、NOx(窒素酸化物)、およびNOxと同じく排ガス規制物質であるHC(炭化水素)の両方を異なる層に吸蔵、還元するという点だ。触媒は表層がNOx浄化層、中層がプラチナを触媒に使用するNOxトラップ層、下層がゼオライトを使用するHCトラップ層と、三層構造になっている。

通常走行時はリーンバーン(希薄燃焼)状態で、HCとNOxがそれぞれのトラップ層に蓄積されていく。有害物質が飽和に近づいてきたら、エンジンを一瞬NOxが発生しないリッチ燃焼(燃料を多量に噴射し、わずかに燃料が燃え残る制御)で運転し、そのさいに発生するHCに、さらに微量のO2(酸素)を混ぜて供給する。

この両者が反応することでNOx浄化層にH2(水素)とCO(一酸化炭素)が生成される。そこにたまったNOx、HCをリリースして反応させ、無害物質であるH2O(水)、N2(窒素)、CO2(二酸化炭素)に還元するのだ。水素を直接利用するため、尿素SCRなど既存のアンモニア系還元触媒のように、有害なアンモニアが排出されてしまう心配がないのも大きなメリットだ。

一見シンプルな理屈だが、「HCが素通りできるようなNOx層の考案、層構造を作るための特殊コーティング技術、触媒を作動させるためのエンジン制御技術など、いろいろなブレイクスルーが必要だった」と、開発を担当したエンジニアは話す。

この触媒が理論通り反応するかどうかに参加者の興味が集まったが、実際のデモンストレーションでは、NOxの数値は驚くほど少ない値にまで削減されていた。また、リッチ燃焼を行なうタイプの触媒は燃費面でマイナスに作用するが、日産のこのシステムはすでに「現時点ですでに燃費のビハインドは1%未満」(開発担当エンジニア)というところまで煮詰められている。

この新触媒を使ったスーパークリーンディーゼルの排ガスレベルはTier2BIN2(Tier2BIN5に比べNOx70%減、HC90%減)に相当し、SULEV(超低排出ガス車)を達成できる見通しだという。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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