日産の新型バルブコントロール機構「VVEL」は、スロットル弁に依存せずに吸気バルブを制御することでエンジン出力の調整をするという新システムだ。
そのメリットのひとつとして、スロットル弁を使わないことで空気の通り道のひっかかりが少なくなり、エンジンの効率向上を妨げる大きな要素であるポンピングロス(吸気損失)を削減できることが挙げられる。
「『VQ37VHR』の場合、VVEL化によって、ポンピングロスを約1割削減しています。エンジンの性格付けによってはさらにポンピングロスを減らすセッティングにすることも可能です」(パワートレイン計画部・平井俊弘氏)
もっとも、スロットル弁がなくなったといっても、バルブの開度を小さくすることで吸気量を絞っているため、結局そこでポンピングロスが発生する。ポンピングロス削減という観点では、バルブを一瞬だけ大きく開いてやり、すぐに閉じるという制御を行うのが理想的だ。
この運転サイクルはミラーサイクルと呼ばれているもので、高効率化に大きく貢献する。空気を吸い込む量が排気量に比べて小さいため、トルクも低くなってしまうという欠点があったが、バルブコントロールの幅が拡大し、かつレスポンスよく制御できれば、ミラーサイクルから普通のエンジンであるオットーサイクルまでを完全にカバーできるノンスロットルエンジンができるかも!?
VQ37VHRはその理想的エンジンに対してどのくらいまで近づいているのか、自動車工学の現状をあえて無視して質問してみた。
「ミラーサイクルからオットーサイクルまでをリアルタイムで連続可変させるだけの制御は、現時点ではまだとても無理ですね。作ったとしても、実用にならないくらい遅いレスポンスしか得られません」(平井氏)
うーむ、当然といえば当然だが、残念。やはり電磁バルブが完成しない限り、機械式動弁系では限界があるようだ。もちろんBMWやトヨタと同様、VVELもある程度までは高膨張比での運転が可能ではある。
「VVELはバルブコントロール幅はかなり広いのが特徴で、その気になればミラーっぽいセッティングまで、かなり自由に作ることができます。『スカイライン』のVQ37VHRの場合はあくまで圧縮比と膨張比は1:1の割合ですが、VVELは日産の低CO2技術のベースとして、今後もどんどん発展させていくつもりです」(平井氏)
これまでトヨタ、ホンダなどのライバルに比べて低燃費技術のアウトプットが少なく、技術イメージを落としてしまった日産。低燃費技術をどんどん実用化して巻き返しを図りたいところだが、先陣を切るVVELの完成度はいかに!?