日産の新型バルブコントロール機構「VVEL」は、エンジンの発生トルク量を決定する吸気量の調節を、基本的にスロットル弁ではなく、吸気バルブの開閉幅や開閉時間の調節で行うというシステムだ。
スロットル制御をスロットル弁ではなく、バルブで行うメリットはいくつかある。まずはレスポンスの向上。通常のエンジンの場合、スロットル全閉の状態では、吸気ポートは空気圧が常に薄い状態にある。シリンダーが空気をどんどん吸い込もうとするのに、スロットル弁が空気の流入を邪魔しているためだ。
「普通のエンジンでは、スロットル弁から吸気バルブまでの距離が大きいために、全閉状態からスロットルペダルを踏んでも吸気ポートの圧力が高まるまでにタイムラグがありました。ですが、VVELの場合はバルブ直前の圧力が常に大気圧に近く、バルブを大きく開けた瞬間には空気の流入量が増大します。それでレスポンスが向上するわけです」(パワートレイン計画部・平井俊弘氏)
また、普通に巡航しているさいはバルブの動きが小さくてすむためバルブまわりのフリクションロスも小さい、スロットル弁が普段は開いているためにポンピングロスが少ない、バルブコントロールの最適化によってトルクアップ効果が期待できる、といったメリットもある。BMWやトヨタは同様のシステムをまず大衆モデルから展開したが、日産はこの特性をスポーティカー向きと判断し、『スカイラインクーペ』を初搭載車に選んだという。
もっとも、全域にわたって完全にバルブだけでスロットル制御を行うわけではなく、「スロットルを使ったほうがレスポンスや効率がいい領域もある」(パワートレイン主管・矢島淳一氏)との理由で、高回転・高出力発生時などではスロットル弁を併用するという。