【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、飲酒運転防止システムに先端技術を投入

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車両側ででき得る最高レベルの装置に

飲酒運転による事故やひき逃げ事件が後を絶たないなか、トヨタ自動車がドライバーの「総合情報」を先端技術で検知するシステムの開発に取り組んでいる。本来、ドライバーの順法意識の問題だが、クルマ側からでき得る最高レベルの防止システムを目指す。

トヨタの張富士夫会長は、昨秋に日本自動車工業会会長としての会見で、飲酒運転問題について「対策は喫急の課題。(トヨタとしても)ハードの開発を急ぐよう指示している」と強調した。自工会は昨年末、欧米に調査団を派遣しており、各国のアルコールの検知方式や運転ロックシステムといったハードと規制状況などを整理したうえで、近く会員各社に提示、開発に役立ててもらう。

◆『LS』のモニタリングシステムも応用

トヨタはまず、クルマへの後付けでも対応できる呼気吸い込みによる検知装置を実用化する計画。だが、これでは運転者以外の者が呼気を吹きかけるなど、悪質な抜け道もあるため、万全とは見ていない。

そこでドライバーの総合情報から判定、エンジンの始動をロックしたり、走行中のクルマを自動停止させたりする高度なシステムも実用化する。検知するのはドライバーの手のひらや運転席周りのアルコール濃度、さらに顔画像による挙動など。

手のひらや指先については、ステアリングにセンサーを設置して汗の成分などからドライバーの飲酒状態を判断する。顔の画像による検知は『レクサスLS』に搭載されたプリクラッシュ・セーフティでの脇見運転のモニターシステムを進化させるという。

◆将来は安全技術に包括される時代も

瞳孔の状態などから画像分析するため、居眠り運転への警告も可能になる。実用化には今後3年程度を要する見込みで、当初はオプション設定される。規制の動向にもよるが、将来は最先端の安全技術とともに、標準装備される時代も来よう。

飲酒運転防止装置については、もともと酒を飲まないドライバー、あるいは飲酒運転はしないという真っ当なドライバーにも余分な負担を強いるといった議論もある。

だが、そうしたドライバーも違法運転のクルマによる被害者になる可能性はある。クルマ社会の必要経費と割り切るしかない。メーカー側も最先端の技術投入と原価低減努力でこの課題に立ち向かうべきだ。

《池原照雄》

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