【伊東大厚のトラフィック計量学】路上駐車と渋滞 その4

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警察庁の効果試算

警察庁交通局は、9月13日付けリリース「新たな駐車対策法制の施行状況について」の中で、利用者便益とCO2削減効果の試算を公表した。

試算は、東京23区と14政令指定都市の幹線道路2200kmを対象に、取締り実施前と実施後3カ月間の交通量や旅行速度実績で計算したものだ。時間短縮など利用者便益は1810億円、CO2削減効果は15万2000トンである(いずれも年間換算値、図1)。

◆効果のほどは……

利用者便益は、走行時間短縮分の金銭換算額とガソリン代節約額の合計だ。1810億円という額は、免許保有者あたりでも1万円に相当するという。これは、路上駐車による渋滞損失、すなわち社会全体の不利益が、極めて大きな額であったことを示している。

また、取締りの民間委託費は全国でも80億円というから、大雑把な計算ながら、取締りの費用対効果は、1810/80=22.6となり、とても効率的な対策となる。

CO2削減効果は、15万2000トンである。これは、ETC普及による料金所渋滞の解消によるCO2削減効果と、ほぼ同等の効果になる。

また先日環境省が公表した2005年度の運輸部門のCO2排出量は、2億5700万トンであり、京都議定書の目標まで、残り700万トンとなっている。15万トンの削減は、2006年度のCO2排出量削減に寄与することになる。

◆効果はもっと大きい?

今回の試算は、控えめな値ではないかと筆者は思う。というのは、試算対象の道路延長が2200kmに留まっているためだ。日本には、都道府県道以上の幹線道路の総延長は、17万8000kmだ。そのうち、市街部には約3万km、市街中心部(※1)に限っても、1万6400kmである。(図2)

交通量の多い東京23区と政令指定都市とはいえ、試算対象とした2200kmは、全国のごく一部、市街中心部の道路1万6400kmの13%に過ぎない。

路上駐車の取締りは、全国の都市で実施されている。やや大雑把ながら、道路延長比で全国に拡大すると、利用者便益は1兆3500億円、免許保有者数を7900万人とすると、一人あたり1万7000円にのぼる。

CO2削減効果は、113万トン程度と見込まれる。これは、京都議定書の目標達成までの残り700万トンに、大きく寄与するものだ。

(※1)市街中心部:人口5000人以上の地域で、人口密度が4000人/平方キロメートル以上となる地区のこと。DID(Densely Inhabited District)という。

《伊東大厚》

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