路上駐車取締りの強化
今年の6月から、路上駐車取締りが強化された。メディアでも多く取り上げられたので、民間監視員の採用、車の所有者にも違反金が課されるなど、その内容をご存知の方も多いと思う。
路上駐車は、交通渋滞につながり、事故を誘発する危険性も高い。また、交通量の多い道路や交差点付近では、渋滞悪化の影響が特に大きい。今回の法律改訂の効果はどのくらいあったのだろうか。
◆路上駐車や渋滞はどのくらい減ったか?
警察庁は7月、6月中の取締り強化の状況や効果を公表した(警察庁交通局「新たな駐車対策法制の施行状況について」)。それによると、「瞬間放置駐車台数」(=路上駐車台数)は、大阪の御堂筋で543台から236台(調査区間は4km)、名古屋市では1030台から231台(同、4km)となるなど、路上駐車台数は半分以下と激減している。
渋滞も減った。図1は、さきほどの警察庁資料から、施行前後での平均旅行速度の変化を計算したものだ。東京都内では昨年6月より13.8%、大阪府内では今年5月に較べ15.5%アップしている。両者の比較時期が異なるものの、平均をとると、14.6km/hから16.7km/hへ14.2%アップと計算できる。
◆速度14.2%アップの意味
14.2%アップは、どの程度の効果なのだろう。この平均速度で10km走ると、所要時間は41分から36分で済み、5分短縮だ。一日、通勤や仕事で混雑した都市内を50km走ったとして、25分もの短縮になる。これは、運転していて実感できるレベルだろう。
金銭換算ではどうだろうか。道路整備や渋滞対策など効果評価に用いる、「時間価値」という概念を使って換算してみよう。国土交通省の資料によれば、時間価値は、乗用車1台あたり62.86(円/分)である。これを「時間価値原単位」と呼ぶ。25分の時間短縮は、1台1日あたり1600円弱、年間240日として、約38万円にもなる。原単位の妥当性の議論はあるにせよ、都市内を車で移動する人とって、交通の円滑化による効果は大きい。
【参考】時間価値原単位は、分あたりの平均賃金のようなものだ。統計によれば、乗用車1台あたりの乗車人数は平均1.45人程度なので、1台あたり62.86円は、1人あたりに換算すると43.4円だ。43.4円は、“時給”で2600円、1日8時間×240日で“年収”にすれば500万円ほどになる。平均値としては妥当なところか。