日産自動車は10月から神奈川県で交通事故の低減や渋滞緩和を目指す「SKYプロジェクト」の実証実験をスタートさせるが、このプロジェクトを推進するに当たって、山下光彦副社長の決断が大きく左右したという。
SKYプロジェクトはITS(高度道路交通システム)のひとつだ。そのITSについては、2000年頃から政府をはじめ、各省庁、自動車会社などで各種の研究が始まった。しかし、各省庁間の綱引きが激しく、なかなか前に進まないというのが実情だった。
そのやりとりに業を煮やした山下氏は「日産単独でもとにかく進めよう」と決断、部下にITSを活用したプロジェクトの推進を指示した。
日産関係者はすぐに警視庁に相談に行き、道路に設置されている光ビーコンを利用させてもらえないかとお願いした。「おそらくダメだろうなと思っていたんですが、どうぞ使ってくださいと、非常に協力的だった」と日産関係者はその時の様子を語る。
以来、日産のSKYプロジェクトは大きく進展し、実証実験をするまでになったのである。また、政府も今年、内閣官房が中心になってIT新改革戦略を打ち出し、ITSの実用化によって、交通事故死傷者数、交通事故数の削減を目標に掲げた。そして、08年には政府や自動車会社が一緒になった大規模実証実験が行われる。
「みんなついてこなかったらと最初のうちは心配したが、いまは山下副社長の指示の元、研究を進めておいてよかった」と日産関係者はホッと胸をなで下ろしている。