喉元のトゲだったセクハラ訴訟も落着
トヨタ自動車の北米事業が勢いを増している。今年度第1四半期(4−6月)の販売台数は、前年同期比で16.5%も増加、国内やアジアでの落ち込みをカバーして同期の過去最高益に寄与した。喉元のトゲだったセクハラ訴訟は4日までに和解が成立、同日には2007年モデルの値上げも発表した。ここで心機一転。1年前の値上げとは異なり、台数も利益も追求するという攻勢を鮮明にした。
月間で過去最高となった7月の米国販売は、初めて米フォードモーターを抜いて2位となった。北米でのトヨタの勢いを象徴するものだ。今年から投入したエントリー車の『ヤリス』(日本名『ヴィッツ』)や新モデルの『RAV4』『カムリ』などが好調な売れ行きとなっている。
ガソリン価格の高騰で燃費性能の良い小型車が人気を増しており、フルラインで商品に厚みのあるトヨタ車への支持が一段と高まっているのだ。全面改良が近い『カローラ』も7月は前年より4割増加、「モデル末期としては良質な販売」(トヨタ幹部)だという。
◆販売車種に応じて削られたインセンティブ
第1四半期の所在地セグメントの営業利益率で北米は、前年同期の7.5%から6.4%に低下した。「小型車シフトがやや利益率を下げている」(鈴木武専務)ほか、年末に稼動するテキサス工場など積極投資の償却負担が利益の圧迫要因となっている。
だが、懸念するに当たらない。第1四半期の米国での台当たりインセンティブは、昨年の1090ドルから759ドルへと約3割も圧縮されているのだ。単価の低い車種の増加に伴い、販促コストもきっちりと抑制されている。
07モデルの値上げによって、今後、利益率は上昇するのが確実だ。値上げは米市場でベストセラーのカムリなど9車種で、幅は0.3%から2.4%。カムリは28日から平均250ドル(1.2%)引き上げる。
◆日米摩擦には発展しにくい……
トヨタは約1年前にも一部車種の値上げを実施しているが、その時は経営不振の米メーカーに配慮するというメッセージも込められていた。値上げによって台数が多少落ちるのも止むを得ないという姿勢だった。だが、今回はカムリのほか、ヤリス、RAV4、『プリウス』など人気車種は軒並み値上げするという純粋な「経済合理性」による。
今年には、ダイムラークライスラーの北米クライスラー部門を捉え、米国で新ビッグ3を形成するのが確実。躍進によって生じる「摩擦再燃」の可能性が記者会見でもよく質される。
だが、トヨタの情勢認識は「かつてのように自動車が日米摩擦に発展しやすい時代ではなくなった」(首脳)と、質問者の相当先を行っている。収益を高めながらクライスラーを一気に抜き去るという今回の値上げが、そのことを示している。