鮮やかなグリーンのトヨペット
久しぶりに長めのドライブに出かけ、とある自動車ディーラー街で鮮やかなグリーンの「トヨペット」が眼に飛び込んできた。トヨタ自動車が今年から展開している系列ディーラーの店舗刷新策「VI」(ヴィジュアル・アイデンティティ)による新しい店づくりだ。複数の販売系列維持が難しいご時世の国内市場で、埋没しそうな「チャンネルブランド」を訴えかける試みに注目している。
VIはトヨタ、トヨペット、カローラの3系列が対象。従来、赤で統一されていたトヨタディーラーのシンボルカラーを、それぞれ「ワインレッド」「グリーン」「オレンジ」に変更する。年内には3000を超える全国の店舗で、VIをほぼ完了させる計画だ。すでに「ブルー」で統一されたネッツや昨年8月に営業開始したレクサスと合わせ、5系列の「それぞれの特性をより明瞭にする」(一丸陽一郎専務)。
◆新流通政策の仕上げとなる第3弾
トヨタは2003年初めに発表した国内の新「商品・流通政策」で、旧ネッツ店とビスタ店を統合するとともにレクサスの日本導入を打ち出した。04年5月に発足させた新ネッツ店は、若年層をターゲットにむしろトヨタ色を薄めるチャンネルブランド政策を取っている。
トヨタブランドの主体は、トヨタ店など残る3系列とし、それぞれ特徴をもった商品・チャンネル政策の定着を進めていく。この2年間でネッツの統合、レクサスの立ち上げとコマを進めて来た新流通政策でトヨタが打ち出す第3弾が3系列の強化である。
トヨタグループ内では3系列のアイデンティティを、トヨタ店が「トヨタブランドにおける高級車チャネル」、トヨペット店が「ミディアム市場のリーダーチャンネル」、カローラ店は「コンパクトを中心としたトヨタ最量販チャンネル」 と位置づけている。
◆「統合」のご時世に最大手の反撃
ただ、次々に投入されるコンパクトカーの扱いディーラーにはトヨタ店やトヨペット店も含まれている。必ずしも各チャンネルのアイデンティティに合致しているとはいえず、こうした位置づけには苦しいところもある。
業界の動きも複数チャンネル維持には逆風だ。ホンダが3月から3系列を統合したため、大手3社で複数チャンネルを継続するのはトヨタのみとなった。各店舗がすべての車種を扱う「分かりやすい流通方式」(日産自動車のカルロス・ゴーン社長)に顧客が馴染むと、「トヨタは分かりづらい」ということにもなってしまう。
3つの色分けによるチャンネルブランドの強調は、そうした業界の流れに抗する最大手の反撃ともなる。もっとも3系列強化の本質は、チャンネルごとに商品群のメリハリを付けることだ。『クラウン』『マークX』『カローラ』という各系列の代表車種のようにチャンネルをイメージできる2枚目、3枚目の看板車種が欠かせない。