2 | カチカチ、パサパサ |
イタリアの典型的パン「パーネ・コムーネ」は、パン切りナイフが負けるほど固い。そして1日置くとパサパサになるほど乾燥していて、悲しくなるほど無味である。その理由は、バターを使わず、塩も味を左右するほどは入れないからだ。
なぜこんなパンになってしまったか? まず、バター。イタリアは北部の山岳地方を除いて、長いことバターはポピュラーな食材ではなかったためである。
次に塩。これには諸説があるが、「その昔、塩が貴重だったから」というのが有力である。イタリアはご存知のように海に突き出した半島だが、多くの都市はローマへの巡礼ルートだった内陸で栄えてきた。ボクの住むシエナも中世に繁栄を謳歌した街だが、海からは90km近くある。
塩が貴重だった証拠に、また時代によっては塩で給料を払っていた名残として、今でも市役所の地下には『塩の保管庫』がある。毎日大量に消費するパンまでに塩を使う余裕がなかったのだろう。