ビッグスリーの独壇場、米メーカーの牙城ともいえるフルサイズピックアップを成功させるためにトヨタは、新型『タンドラ』の開発にあたっては、デザインを含め抜本的な見直しを行った。シカゴで発表された新型タンドラのデザインを手がけた古川高保氏(デザイン本部第2トヨタデザイン部グループ長)は語った。
「道具としての基本要素以上に重点を置いたのは、レクリエーションツールの充実。もちろん“トゥルートラッカー”に受け入れられるよう、ラゲッジスペースはきちんと確保。アメリカのトラックとしては標準的なサイズなのですが、8.1フィート=247cmの長尺物も搭載できるようにした上でインテリア、外観のデザインを組み合わせてゆきました」
「フルサイズピックアップに要求される要素は、強さ、ファンクショナル、スペーシャフルです。ここにトヨタらしいフレッシュで、エモーショナルなデザインを加味したのが新型タンドラなのです」
「フルサイズピックアップは、男っぽいイメージ。ちょうどアメリカンフットボールのクォーターバックのようながっちりした守りの信頼感を打ち出しました。現行の『タコマ』から用いられている『トヨタトラックの顔』ともいえる台形グリルで顔つきは押し出し感を強調し、かつ強い骨格のボディデザインを採用。ドアのフレームの太さと強調しながら、キャビンとの比率を最適にしました」
「エクステリアのフォルムは鉄アレイをモチーフにしています。タフさを強調するために、グリップ部分など物の単位をmm(ミリ)でなく、インチで考えました」
「長距離での使い勝手を考え、センターコンソールに設けられた3つのカップホルダーの前2つを外すとランチボックスがそのまま入れられるようにしたり、マップホルダーも真ん中に置いたりするなど、細部にも面白い試みをしてみました」
「トラックはアメリカンスピリッツあふれるクルマです。アメリカでは2台に1台がトラックといっても過言ではありません。こちらの市場では、都会から田舎まで、それこそ70歳過ぎたおばあさんもフルサイズを乗り回します。生活に密着したクルマであり、その分みんなとても詳しい。アメリカに根付いた文化ともいえるクルマなのです」
「今回、新型はプラットフォームなど基本骨格こそ日本国内で設計しましたが、目に見える部分は殆どアメリカのTTC(トヨタテクニカルセンター)で開発しました。現地のデザイナーと設計者がアメリカで作りあげたのです。デザインはCALTY、ニューポート、アナーバーで行われました。開発陣営は徹底的にアメリカのトラックが用いられる現場を調査しました。フルサイズトラックは、日本の感覚で作っちゃいけないクルマなんです」