モバイル長崎スマートカード誕生に見る、公共交通の課題と進化

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12月12日、長崎のバス会社4社で共通利用できるおサイフケータイ対応サービス「モバイル長崎スマートカード」が始まった。同サービスは複数のバス事業者にまたがって利用できるという点で日本初であり、対応する車両数も合計1306台と多いのが特長だ。

「モバイル長崎スマートカード」について長崎県バス協会長崎県交通事業者協同組合の高崎亨専務理事、西肥自動車の中塚武所長、長崎県交通局営業部運輸課の楠山史郎課長への3名のインタビューをお届けする。


●長崎県内の激しい公共交通競争

モバイル長崎スマートカードのサービス開始にあたり、他地域と大きく事情が異なるのが対応バス事業者の多さだろう。長崎県の人口は約148万人であるが、その中で長崎バス/さいかい交通、長崎県営バス、佐世保市営バス、西肥バスの4社局という事業者の数は多いように見える。しかし、これでも長崎スマートカードに対応するバス事業者は、県内の一部だという。

「長崎県内には乗り合いバスだけで事業者が14社あり、非接触ICシステムを導入しているのは本土を中心とする5社。モバイル長崎スマートカードには、このうち島原鉄道を除く4社局が対応しました」(高崎氏)

県内には、乗り合いバス事業者以外にも、貸し切りバス事業者や、町村の支援で貸し切りバスを乗り合いで提供する事業者も存在するという。長崎県は離島が多いという事情もあるが、それでも「他県と比べると事業者の数は多い」(高崎市)。例えば、近隣の宮崎県などは、宮崎交通の1社で県内バス事業のほぼすべてを取り仕切っている。

「本土地区でいいますと、大まかにバス事業者の担当する地区はありますが、例えば市内は長崎バスと長崎県営バスというように営業地域が競合する場所もあります。長崎県は他県に比べると、バスなど公共交通の利用率が高く、それが事業者の多さに繋がっています」(高崎氏)

長崎での公共交通利用率が高い背景は、主に地理的な要因による。長崎県の地図を見てもらうとよくわかるが、県内の中心である長崎市、また観光地で有名な佐世保市などは、平野部が少ない土地だ。特に長崎市は海と山に挟まれており、市内の平地は少ない。ちょうど今年のITS世界会議が開催されたサンフランシスコに似た地理的要因を持っている。市内の駐車場は慢性的に不足気味で、クルマでの通勤や買い物がしにくい環境にある点も、サンフランシスコの事情に近い。

モータリゼーション以降、公共交通事業者の脅威となったのが、通勤や日常的な買い物でのクルマ利用の増加であるが、長崎市内は「他県に比べればクルマ利用の浸食が少なく、需要落ち込みの比率も少なくてすんでいる」(高崎氏)という。

「ただ、事情は(長崎県内の)地区によって大きく異なります。西肥バスが担当する県北地区、離島部においては、クルマ利用の増加における影響が大きく、需要が落ち込んでいます」(中塚氏)

一方、長崎市内においても、バス事業者のビジネスが安泰なわけではない。バス事業者同士が競合するのはもちろんだが、市内を走る路面電車との競争がある。また慢性的な少子化傾向による通学利用者の減少や、駐車場の不便があっても増えるクルマ利用の影響も顕在化している。

「特に路面電車とは価格面での競争が激しい。あちらは全線100円で乗れて、しかも観光名所や繁華街など市内主要部がほぼ網羅されている。例えば朝の通勤時間では、(郊外からバスに乗ってきたお客様が)路面電車の始発駅で一斉に路面電車に乗り換える。市内のバス需要への影響は無視できません」(高崎氏)

「特に朝の通勤利用では、定時運行という点で路面電車に分があります。バスにもバスレーンが存在しますが、場所が限られている。専用軌道を走る路面電車の方がより定時的に運行されていますから」(楠山氏)

公共交通利用が比較的多い長崎県でしあるが、事業者同士の競争激化や少子化の影響などもあり、バス事業者の利用客数は毎年4−5%ずつ減少している。この傾向を少しでも改善するために、バス事業のIT化や相互利用時の利便性向上が必要だったという。

●長崎県内の激しい公共交通競争
●バス事業者の利便性向上で乗客減少に歯止めをかける
●おサイフケータイ採用の動機は「利便性向上」と「コスト削減」
●モバイル長崎スマートカードの今後
《神尾寿》

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