モバイル長崎スマートカード誕生に見る、公共交通の課題と進化

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●モバイル長崎スマートカードの今後

こうして始まったモバイル長崎スマートカードであるが、今後の展開として特に重視しているのが、マルチキャリア展開だという。

「現在はNTTドコモのおサイフケータイにしか対応していませんが、当然ながらau、ボーダフォンのおサイフケータイにも対応したい。auについてはアプリの方式が違うので対応の負担が大きいのですが、一方で若年層のシェアが高いので、通学定期での(モバイル長崎スマートカードの)利用を考えれば、『それでも早期に対応したい』と考えています」(中塚氏)

その次のステップとして重視しているのが、オンラインチャージやオートチャージ機能の実装だ。

「現在、チャージはバス車内で運転手が行っていますが、停車時にチャージにかかる時間やお客様の利便性を考えると、いつでもチャージできるようにしたほうがいい」(中塚氏)

一方、松山市の伊予鉄道が取り組む「電子マネー」の導入と拡大による、地域通貨化という方向性については、モバイル長崎スマートカードは消極的だ。

「(モバイル長崎スマートカードは)複数のバス事業者が採用する電子乗車券システムで、回数券の代わりとして導入しています。その利用分を小売店など他の業種まで拡大しようとすると、従来の(事業者間精算の)仕組みを変えなければなりません。例えば、回数券扱いだから導入している10%の割り増し利用分をどうするのか、といった課題が出てきます。

現在はあくまでバスの利便性を向上するツールとして考えていまして、電子マネーとしての利用まで踏み込んだ議論はしていません」(中塚氏)

長崎県バス協会としては、今後もバス利用の利便性向上という視点でモバイル長崎スマートカードを進化させていき、「3キャリア対応後の、将来的な目標はカード利用者の3割−4割程度にしたい。利用履歴の確認ができるなど、カード型に対する優位性は継続的にアピールしていく」(中塚氏)という。

今年8月に電車・路面電車・バス・タクシーを網羅するIC乗車券/電子マネーシステムを導入した伊予鉄道、そして今回の長崎県バス協会のスマートカード事業への取り組みなど、昨今、公共交通のIT化と利便性向上への取り組みは急加速している。また、今年の愛・地球博では会場へのクルマの乗り入れを禁じて、公共交通への乗り換えを促したことで、大規模イベントとしては希有な「会期中の渋滞ゼロ」を果たした。

来年には、JR東日本がおサイフケータイ対応の電子乗車券/電子マネーシステム「モバイルSuica」を導入し、東京メトロなど民間鉄道/バス事業者が新たに採用する非接触ICシステム「PASMO」とも連携する。非接触IC「FeliCa」と、同技術を使う「おサイフケータイ」を軸に発展する公共交通の進化は今後も続く。

モータリゼーション期、自動車産業は「クルマ社会の実現」が豊かさであると無邪気に信じることができた。しかし、環境問題やエネルギー問題の深刻化は、もはや無視できない段階に達している。持続的なクルマの進化はもちろんであるが、公共交通の進化にも目を向けて、共存の道にもっと積極的になってもよいのではないだろうか。今年の「愛・地球博」は、ひとつの示唆であるといえる。

●長崎県内の激しい公共交通競争
●バス事業者の利便性向上で乗客減少に歯止めをかける
●おサイフケータイ採用の動機は「利便性向上」と「コスト削減」
●モバイル長崎スマートカードの今後

《神尾寿》

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