「最近の流行はオンリーワンのようですが、私たちはナンバーワンのミニバンを作りたかったんです。そのほうがわかりやすいでしょう(笑)」と語るのは、新型『セレナ』の開発責任者、日産自動車 商品企画本部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの丸茂敬明さん。
「新型セレナを開発するにあたって最初に考えたことが、5ナンバーサイズでナンバーワンの大きさを持つミニバンを作ろうという発想でした。今までのセレナは、いち早く両側スライドドアを採用し、使い勝手はよかったのですが、ブランド力としては少し弱かったように思います。それを挽回するためには、わかりやすいセールスポイントが必要でした。それが大きなボディと広い室内です」と丸茂さんは新型セレナのコンセプトを振り返る。
事実、新型セレナは全長を伸ばすことで、5ナンバーワンボックスミニバン最大の室内スペースを確保。外から見ても、中に座っても大きさと広さを実感することができるパッケージングを手に入れている。ボディサイズを小型化したホンダ『ステップワゴン』とは対極の進化だが、ワンボックスミニバンとしては正常進化といえるフルモデルチェンジだ。
丸茂さんは「ライバルはやはりトヨタ『ノア』&『ヴォクシー』とステップワゴンです。今まで大きかったステップワゴンが小さくなったことで、3車3様の個性が生まれたのではないでしょうか。その中でセレナは、大きいクルマをアピールポイントととして、三つ巴の戦いに持って行きたいと思っています」と続けた。
確かに大きくなったセレナは、スペースを求めてミニバンを選ぶ人にとってはわかりやすい魅力を持ったクルマになった。事実、新型セレナの受注台数は、発売後1カ月間で1万8000台を突破し、月間販売目標の3倍を超えた。
オンリーワンの個性よりもナンバーワンの大きさを選んだ丸茂さんの戦略は明解で、なおかつ継続的な効果が期待できる作戦だろう。(つづく)