身近なところでは車上荒らしやパソコンの情報、大きなところではテロ対策のホームランド・セキュリティまで、「セキュリティ」はさまざまだ。ニューヨーク市でテロ被害の対応と復興で手腕を発揮した当時の市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏が1日、東京都内で講演した。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロはちょうどフランクフルトモーターショーの初日にあたり、展示会場関連施設が警戒のため閉鎖されたり、演出が自粛されたりの影響があった。長期的にも景気の動向に大きな影響を与えたことは、読者も知る通りだ。
その後、市長職を退いたジュリアーニ氏は経験を生かし、コンサルタント会社の「ジュリアーニパートナーズ」を設立。さらに日本のインターネット総合研究所と共同で投資ファンドを設立し、日本においてもホームランド・セキュリティの関連事業を立ち上げる計画だ。
講演でジュリアーニ氏は情報収集の重要性を語った。バイオテロや化学テロは被害の発生をいち早く察知し、いち早く対策をとることが被害を最小限にとどめる。ニューヨーク市では911テロ以前の1996年から「兆候監視システム」を構築していた。
これは市内の複数の病院の情報を一元化、感染症の発生・流行を監視するもの。データベースと比較して、患者の発生の傾向の異常が早期にわかるのだ。当初手作業だった情報収集作業は、99年頃にはオンライン化されている。これは実際に、西ナイルウイルス感染症や炭疽菌テロで被害の拡大を未然に防いだ。
またジュリアーニ氏はシステムの冗長性も重要だという。ニューヨーク市の危機管理局は、911テロでそれ自体が破壊されてしまった。しかしオンライン上にバーチャルなセンターを構築、事件発生後、1時間以内に業務を開始した。
またニューヨーク株式市場もわずか3日で業務を再開した。これが1カ月、2カ月も閉鎖されていたら、アメリカ経済に与えるダメージ、世界経済に与える影響は計り知れないものになっていただろう、とジュリアーニ氏はいう。
「ホームランド・セキュリティ」は911テロ後、テロに対する国家・国民の安全として生まれた概念だ。しかしホームランド・セキュリティはテロだけでなく、地震や台風、津波など、どんな災害にも有効である、とジュリアーニ氏は語った。