【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?

自動車 社会 行政
【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?
  • 【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?
  • 【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?
  • 【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?
  • 【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?
  • 【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?
  • 【放談会2002 Vol. 8】軽自動車なんか要らない!?

三浦 軽自動車の世代交代が進んでいます。三菱の『ekワゴン』、スズキ『ラパン』、ダイハツ『マックス』、ホンダ『ザッツ』。これに『フィット』、『マーチ』、『ヴィッツ』を加えたコンパクトカー市場が盛り上がっています。

牧野 たしかにそれぞれ個性を持ったクルマだとは思いますが、軽自動車は果たしてこのままでいいのだろうか、と思うんです。税金や保険で優遇されるミニマム・トランスポーターの割には、結局、リッターカー・クラスの縮小コピーという線から抜け出せないでいる。もし税金と保険の恩典がなくなれば、市場は激減するでしょう。スズキの初代『ワゴンR』やダイハツ『ミゼットII』に続く独創的なクルマが出てこない。

安田 軽の分野で「売れるクルマ」を出すということでは、つねにスズキが先行してきましたね。ワゴンRのあとにダイハツ『ムーヴ』が出るという具合に。その意味では、スズキはトップシェアなのに大胆なことをやる会社です。逆に、ダイハツは「万年2位」に甘んじている。ワゴンRは男性客の指名買いを呼び戻した。まことに大きな功績をもたらした商品だった。

牧野 ナンバー2が元気で、つねにトップのスキを突いて仕掛けてくるようだと、競争が促進されるのですがね。

安田 トヨタは、ダイハツに軽でトップシェアを取って欲しいと考えています。だから、軽に特化してもらおうとしているわけです。それに対して、スズキは「絶対にトップは譲らない」と公言している。ダイハツはというと、かつてはスズキに迫ったし、現状でもチャンスがないわけではないのに、何かしてやろうという気概は感じられない。

三浦 昨年の放談会でも、その話題が出ましたね。

安田 たしかにスズキの業販組織はものすごく強力で、そこを切り崩すのは難しいと思いますよ。しかし、チャレンジしないのでは話にならない。

牧野 ミゼットIIは、いいところを狙った商品だったと思うんです。軽規格をフルに使わなくてもクルマはできるんだということを証明しました。ただ、あまりにも商用車的で安っぽい部分があったし、一発芸で終わってしまい、先の展開をしなかった。MCCスマートを軽規格に収めて日本で販売していますが、やろうと思えばあの手のクルマをもっとうまく演出することはできるはずなんです。それだけの技術力は持っている。4人乗りで100万円の軽ではなく、ふたり乗りで60万円とか、そういう方向が日本のメーカーから出てこないのは寂しい限りです。

安田 その意味では、ホンダに期待したいところなんです。ホンダの4輪の歴史の中では、唯我独尊というか、強烈な個性を持った商品がたくさんありましたよ。

牧野 そうですね。何かおもしろいことをやってくれるんじゃないかという期待はあります。ただ、ミドシップのホンダZは商業的には成功しませんでした。逆に、RV的に振ったライフは主婦層に人気を得た。

三浦 そこが商品企画の難しさですね。

牧野 まあ、独身女性をターゲットにした「なごみ系」とか「癒し系」のワゴンっぽい軽も悪いとは言わないが、じゃあ現在の軽自動車の寸法のなかで、本当に衝突安全性でリッターカー・クラスに並ぶのかというと、そうではない。たとえば側面衝突にしても、日本の試験方法だとシートスライドの中間位置だけでテストすればいいんです。その位置でぶつけるとき、たとえばBピラーの位置をちょっと動かせば、ボディ構造を変えなくても基準に通る。だから、側面衝突基準の導入に合わせたモデルチェンジでは、Bピラーの位置が変わったクルマとか、シート側面に鉄板を入れてテストにだけはパスできるというクルマとか、そういう対策も一部で見られました。本当にそれでいいの? と軽メーカーに問いたい。

三浦 日産が『MOCO(モコ)』で軽に進出しましたから、ますます競争は激しくなりますか?

牧野 私は、日産が本気で軽を売ろうとしているとは思いません。私がセールス・スタッフなら、軽を買いに来たお客さんにはマーチを薦めますよ。日産にしてみれば、より多くのお客さんをディーラーに呼び込む、商談のきっかけを作るという意味で軽自動車が欲しかったのではないか。いわば客寄せです。結果的に自社の工場の稼働率を上げるのが本来の目的だと思いますね。

安田 スズキからOEM(相手先ブランドによる生産)でもらう軽を売っても、『日産180』プランの足しにはならない。

牧野 それと、マツダです。かつては自社開発だった軽をスズキからのOEMに切り替えた。これから先はどうするのか。

安田 三菱は軽がようやく戦力になってきましたからね。

牧野 ekワゴンは「素」ですが、好感が持てます。エンジンもトランスミッションも割り切って、しかし4人乗れる万能な軽に仕立てた。その意図はよくわかります。三菱にとっては大きな戦力だと思いますよ。同じ時期に登場したスズキのMRワゴンも、ワゴンRと差別化した意図はわかります。しかし、いま日本で売られている軽自動車を全部集めて並べてみると、なんでこんなに狭いところで勝負するのだろう、という疑問が湧いてくると思います。ここまで横並びである必要があるのか、と。ちまちましたところで作り分けるだけの資金があるなら、もっと根本的な部分に投資してほしい。このままだったら、いずれ軽自動車というカテゴリーは自己崩壊するかもしれない。私はそう感じます。

《レスポンス編集部》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集