イギリス生産の輸入車となった2代目のホンダ『シビックTYPE R』。この21世紀も、走り屋から拍手喝采が沸き上がるであろうクルマだ。
峠を攻め込んだ時の感動は、TYPE Rシリーズならではのもの。2リットル直列4気筒の『i-VTEC』エンジンは、「精密機械とはこういうもの」と納得させる精緻な回転感覚を実現しており、音の迫力を伴って回すほどに気持ちが昂揚する。
エンジンだけでなく、メカニズムすべての働きがドライバーへ存分に伝わり、クルマと情報をやりとりすることで「自分が操っている」という実感を強く受ける。多くの退屈なクルマとは、この点で明らかに一線を画す。
乗り心地は、いかにも期待できなさそうだが、スポーツモデルとしては意外なほど一般的。サスペンションはしなやかに動き、高い速度まで安定性を維持する。また、MTとしては珍しい「インパネから生えるシフトノブ」は、ポジション的にちょうどいい。攻めている時に探すことがない。
ここでひとつ気になるのは、『インテグラTYPE R』の存在。現時点で新車購入できる「もうひとつのTYPE R」だ。どちらを買うべきか難しい選択だが、筆者はサーキット向けならインテグラ、峠用ならシビックをすすめる。理由は、閉鎖されたコースで限界まで走らせた際の操縦性は、インテグラが一枚上手。しかし一般公道の峠では、シビックの「しなやかさ」がほしいからだ。
《河口まなぶ》