逃げろ!! そのとき使う「緊急脱出用ハンマー」とは? どう使う?

緊急脱出用ハンマー(イメージ)
  • 緊急脱出用ハンマー(イメージ)
  • 緊急脱出用ハンマー(イメージ)

自動車事故や洪水・水没などでドアや窓が開かず閉じ込められた際、ガラスを割って、車内から脱出するために必要なのが、緊急脱出用ハンマーだ。

普通のハンマーよりも破壊性が高く、使用者のケガのリスクが低い設計になっている。また、多くの製品で、ガラス破壊用の頭部とシートベルトカッターが一体化されている。


◆なぜ必要か?

●ドアが開かない状況でも脱出を可能にする

洪水や車両の前部が水に沈むような状況では、水圧によりドアが開かなくなる。また電装系のトラブルでパワーウインドウも作動しないことがある。そんな時、ハンマーでガラスを割って脱出できる可能性が大きくなる。

●シートベルトがロックされた際の対処

衝撃で作動するプリテンショナーにより、シートベルトが外れなくなることがある。この場合、専用カッターでベルトを切断するしかない。

●自分だけでなく他人の救出にも使える

国民生活センターによると、利用者188人のうち、43%(80件)は、他の車の乗員を救助するために緊急脱出用ハンマーを使用した経験があるという。

●ただし、割れないガラスがある

運転席・助手席のドアやリアドアのガラスには「強化ガラス(テンパーガラス)」が使われており、これはハンマーで破壊可能だ。いっぽうで、フロントガラスや一部のドアガラスには「合わせガラス(ラミネートガラス)」が使われており、これはハンマーで割れない。どのガラスが破壊可能である事前に確認しておくこと。

強化ガラスは、破損したときには細かい粒状になり、鋭利な破片ができにくい。強化ガラスは緊急脱出ハンマーで破砕することができる。強化ガラスは主にドアガラス、サイドガラス及びリアガラスに用いられる。JISマークの付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に「T」または「TP」の表記がある。

合わせガラスは、2枚以上の板ガラスに柔軟な樹脂を中間膜として接着したもので、ガラスが割れても中間膜によって破片の大部分が飛び散らず、容易に貫通されない。緊急脱出ハンマーで破砕することもできない。フロントガラスには必ず用いられ、ドアガラス、サイドガラス、リアガラスにも用いられている車種もある。JISマークの付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に「L」または「LP」の表記がある。

緊急脱出用ハンマー(イメージ)緊急脱出用ハンマー(イメージ)

◆使い方のポイント

●手の届く場所に常備する

緊急脱出用ハンマーは、シートベルトで動けない時でもすぐに取り出せる場所に置いておくことが重要だ。

おすすめの設置場所は、まず運転席ドアのポケット。乗車姿勢のまま片手で取り出しやすい。センターコンソール周辺(側面やボックス内など)の素早く取れる位置。アシストグリップ付近も車内の構造次第では選択肢になる。

走行中に動かない・飛ばないよう、また衝突の衝撃で飛散しないよう、ホルダーや面ファスナーなどで確実に固定しておくこと。

さらに、ワンアクションで取れるか(フタを開ける、箱を引き出すといった手間が要らない)、夜間でも手探りで分かる位置(触って形で判別できる位置)を考慮し、同乗者も取り出せる位置に“もう1本”を用意すると良い。

●サイド窓を狙って叩く

ガラスを割る時は、フロントガラスではなく、破壊可能な側面の窓を叩く。サイドウインドウの隅(四隅)=窓枠の近くを、ハンマーの尖った先端をガラス面に垂直に当てて、同じ箇所を数回叩くのが最も割れやすい。中心部は弾性が高く力が逃げるため割れにくいようだ。

体を座席やドアで支え、短い振り(手首のスナップ)で当てる。むやみに大きく振らず、連続打撃する。

穴が空いたら同心円状に縁を叩いて開口部を広げ、袖や布で手を保護しながら外へ脱出する。破片対策で、開口部に顔を近づけすぎない。

●シートベルトは素早くカット

衝撃でロックされたシートベルトは、ハンマー付属のカッターで切断する。ロックされたベルトの再使用はできないので、躊躇せず切断すること。

◆まとめ

緊急脱出用ハンマーは、自分や同乗者、さらには他のドライバーの命を救う可能性のある非常に有用なツールだ。しかし、それが使えるのは「破壊可能なガラスであるかどうか」を事前に確認し、すぐ使える場所に備えておくことが前提となる。日頃から使い方を確認し、非常時にあわてず使える準備が重要だ。

《高木啓》

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