パイオニアは1月7日から10日まで米国ラスベガスで開催されたCES 2025に出展。企業ビジョン“未来の移動体験を創ります”の下、創業以来培ってきた車室内サウンドやセンシング、AIを活用した新たな提案を披露した。
4スピーカーでDolby Atomosを再現するディスプレイオーディオ

出展のメインとしていたのが、Apple CarPlayを介して、限られたスピーカーでもDolby Atomos(ドルビー・アトモス)のサラウンド効果を再現できるというものだ。
ドルビー・アトモスは、映画やライブ音楽を再生する際に、その場にいるような没入感が楽しめるサラウンドシステムで、本来ならその実現には5.1chや7.1chといった音響システムが欠かせない。会場にはそれを22個のスピーカーで実現したデモカーが展示してあったほどだ。
ただ、そうしたシステムにするには大がかりになるだけに費用もかさみ、仮に純正装着した場合でもその分のコストアップは避けられない。そこでパイオニアはドルビー・アトモス再生技術との組み合わせにより、元々設置されているフロント/リアスピーカーと4つのアンプチャンネルのみで、これを実現する新たなソリューションとして提案したのだ。
パイオニアによれば、背景にはiOSが2024年秋のアップデートからドルビー・アトモスに対応した楽曲をApple Musicで提供し始めたことがあるという。Appleとしては5.1chシステムでの再現を条件としているが、パイオニアはあえてAppleに4chでの再現をやらせてほしいと申込み、それを可能としたことが今回の提案になったというわけだ。
その実現には、ディスプレイオーディオ側にダウンミックスしたファイルをDolby Atomosで再現できる機能が必要となるが、組み合わせるスピーカーは4スピーカーないしフロントにツィータがある6スピーカーでも構わない。ただし、各スピーカーが4chとして独立して再生できる環境になっていることが条件となる。なお、CarPlay上での実現は初のことになる。
このシステムでDolby Atomosの音源を試聴してみると、ドラムの音が車内をグルグルと回り出すという意図した効果を見事に再現。デモカーはミラー裏側にツィータとドア下部にウーファーを組み合わせていたこともあってか、前方からの音に厚みも生まれており、その没入感たるや単なる6スピーカーとは思えない充実したものだった。
パイオニアとしては、OTAでアップデートしていくSDVのアプリケーションの一つとして、これをOEMだけでなく市販オーディオにも展開していく計画。後付けとなる市販の場合はオートタイムアライメントEQのように、セットアップの自動化で対応していきたいと話していた。
生成AIの導入で感じた、ナビアプリ「COCCHi」の未来

次なる注目の展示は「モビリティデータや位置情報を活用したソリューションサービス」で、「Generative COCCHi」の進化版だ。COCCHiは、日本ですでに80万ダウンロードを超えるナビアプリとして注目されているが、これにマイクロソフトの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」を活用したUX(ユーザーエクスペリエンス)向上の取り組みとして紹介した。