今はどうなってる? 有楽町線延伸区間が着工…豊洲-住吉を歩く

有楽町線17000系電車
  • 有楽町線17000系電車
  • 有楽町線延伸区間。※印の駅名は仮称
  • 有楽町線延伸区間。※印の駅名は仮称
  • 豊洲駅。写真奥が和光市方面、手前が住吉方面、ゆりかもめ豊洲駅は左手
  • 豊洲駅。※印の駅名は仮称
  • 豊洲駅前交差点。手前が和光市方面、奥が住吉方面、ゆりかもめ豊洲駅は右手
  • 豊洲駅を出た延伸線は左手前から左奥へカーブする。本線は晴海通りの下を直進
  • 区道・江257号。手前が豊洲方面、奥が住吉方面、左は豊洲小学校

東京地下鉄株式会社(東京メトロ)は2024年11月5日、有楽町線延伸(豊洲~住吉間、全区間東京都江東区内)の工事に着手した。東京都より2024年6月17日付けで都市計画決定が告示されたことに伴なう着工だ。この区間の現状を歩いてみた。

東京メトロ有楽町線は現在、和光市(埼玉県和光市)~新木場間(東京都江東区)を運行している。豊洲から分岐して江東区内を北上し、半蔵門線の住吉に接続する延伸区間がこのほど着工された。中間駅は、枝川(仮称)、東陽町(仮称)および千石(仮称)の3駅を計画している。


◆江東区内を南北に結ぶ

有楽町線の延伸とその事業運営は、東京メトロの成長戦略のひとつだ。2030年代半ばの開業をめざし、臨海部・都心部へのアクセス利便性の向上や沿線まちづくりへの寄与、東京圏の国際競争力の強化に貢献するとともに、新たな鉄道需要を開拓していく。

●豊洲駅

延伸区間は豊洲で既存の本線から分岐する。豊洲駅近隣にはオフィスビルや大規模商業施設、大型タワーマンションが立ち並び、メルセデスベンツやボルボの販売店もある。豊洲は臨海都心へ向かうゆりかもめとの乗り換え駅で、観光客の利用も多い。東京東部・北部・千葉方面と臨海副都心とのアクセス向上は有楽町線延伸線に期待される機能の一つだ。

延伸線は新木場方面に向かって左へ分岐する。豊洲はもともと分岐前提で建設されていたが、延伸にあたってホームの増設など、さらに大きく改造される。本線は都道304号・晴海通りの地下を南東へ向かうが、延伸線は豊洲を出てすぐ、江東区立豊洲小学校付近で左折、高層住宅の間の特別区道・江257号の下を北東へ向かう。

豊洲運河。延伸線は画面中央付近で左右に横切る。右手が豊洲方面、左手が住吉方面豊洲運河。延伸線は画面中央付近で左右に横切る。右手が豊洲方面、左手が住吉方面

●枝川駅

豊洲運河を地下で横断すると枝川エリアだ。住宅街や公園、工場や倉庫が混在する鉄道空白地帯で、オートエクゼの本社が枝川2丁目にある。有楽町線延伸線は特別区道・江063号、特別区道・江144号の地下を進み、枝川駅は枝川2丁目の江144号の地下、枝川橋東詰と都道9号・三ツ目通りとの間に設置される。

有楽町線延伸線区間と並行するバス路線は、豊洲駅前~東陽町駅前間に都営バス陽12系統が運行されている。豊洲駅前~枝川2丁目~木場駅前間では業10系統、豊洲駅前~枝川2丁目~東陽3丁目間では錦13系統も利用できる。

枝川2丁目バス停。手前が豊洲方面、奥が住吉方面。左右に走るのが三ツ目通り、その上は首都高速9号枝川2丁目バス停。手前が豊洲方面、奥が住吉方面。左右に走るのが三ツ目通り、その上は首都高速9号

地上に道路はないが有楽町線延伸線は特別区道・江144号を延長する方向へ進み、汐見運河の地下で右にカーブ、東へ向かう。JR京葉線と交差する付近から左へカーブ、ジェイアールバス関東の車庫、東京メトロの深川車両基地を地下で横切り、東陽2丁目に至る。ここから住吉駅までは都道465号・四ツ目通りを北上する。

●東陽町駅

東陽町駅には現在、東京メトロ東西線が乗り入れている。大手企業のオフィスが集中し、江東区役所や江東運転免許試験場の最寄りで、乗降客数が多い。有楽町線延伸線の駅は、東陽町駅前交差点を中心に四ツ目通り地下に設置される。東西線の東陽町駅の木場寄りに接続する乗り換え駅になるが、駅名は仮称として発表されている。

●千石駅

千石エリアは、遊歩道や親水公園が多くある穏やかな雰囲気の住宅街だ。戸建て住宅、個人商店、町工場、新しいマンションが混在する。駅は2丁目の四ツ目通り地下に設置される。東京都現代美術館までは徒歩15分、扇橋閘門までは徒歩10分ぐらいか。鉄道空白地帯の一つで、現在は東陽町駅前~錦糸町駅前間を都営バス東22系統が頻発している。

歩道に東京メトロのマーキングを発見!!歩道に東京メトロのマーキングを発見!!

●住吉駅

小名木川を横切るあたりで西側、進行方向左から半蔵門線が合流し、住吉駅に到着する。都営新宿線との乗り換え駅でもある。地上は千石から続く住宅街だが、駅のある住吉2丁目交差点付近は、近隣では商店の多い賑やかな街並みだ。

半蔵門線の住吉以北はもともと有楽町線として計画されていたからか、駅は有楽町線との合流が前提の構造だ。有楽町線用ホームはすでにあり、今は留置線として使われている。錦糸町・押上方面ホームと、渋谷・豊洲方面ホームとで上下2層構造になっているので、この駅では折り返しがしにくいはずだが、これまで発表された資料では、有楽町線延伸線と半蔵門線とは直通しないことになっている。豊洲市場や東京スカイツリーといった観光拠点のアクセス利便性向上も延伸線には期待されているので、開業までに運転計画は変わるだろう。

◆昼間毎時8本、直通は?

現時点で想定されている列車運行計画では、ピーク時は12本/時、オフピーク時は8本/時を基本とする。一部列車については本線(和光市方面)と直通運転を行なう。今後、接続路線も含めたサービス水準、需要などとのバランスも総合的に勘案して、運行計画を検討していく。本線では現在、ピーク時に14~15本/時、オフピーク時は10本/時を運転している。

有楽町線延伸区間(豊洲~住吉間)は計画区間約5.2km、建設区間4.8km、総建設費は約2690億円と見積もられ、2030年代半ばの開業をめざす。輸送需要は30万3000人/日の予想。所要時間は約9分で、現在の路線を乗り継いでの約20分から大きく短縮される。また東西線の混雑率(木場→門前仲町間、ピーク1時間、2023年度)が148%から約20ポイント低減すると期待される。

住吉2丁目。半蔵門線・有楽町線の住吉駅はこのあたりの地下住吉2丁目。半蔵門線・有楽町線の住吉駅はこのあたりの地下

◆50年以上前からの計画

有楽町線延伸については、1972年3月に都市交通審議会答申第15号で、地下鉄8号線(後の有楽町線)の亀有への分岐が初めて答申され、1982年1月に帝都高速度交通営団(東京メトロの前身)より豊洲~亀有間の免許申請がなされた。

有楽町線は1974年10月に最初の区間、池袋~銀座一丁目間が開業、1988年6月に新富町~豊洲~新木場間が開業して現在の区間が完成する。いっぽう半蔵門線の水天宮前~住吉~押上間は2003年3月に開業した。2004年4月に帝都高速度交通営団が民営化され、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)が設立された際には、副都心線を最後として新線整備を行なわない方針が表明された。

その後2016年4月に交通政策審議会答申第198号おいて、有楽町線延伸区間(豊洲~住吉間)が国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクトと答申され、2021年7月に交通政策審議会答申第371号において、延伸区間は早期の事業化を図るべき路線と答申される。

東京メトロは2022年1月に豊洲~住吉間の鉄道事業許可を国土交通大臣へ申請、2022年3月に大臣による許可がなされた。

《高木啓》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

教えて!はじめてEV

特集