マイカー公共交通「ノッカル」ライドシェアで地方交通の共通フレームワークづくり…博報堂 堀内悠氏[インタビュー]

マイカー公共交通「ノッカル」ライドシェアで地方交通の共通フレームワークづくり…博報堂 堀内悠氏[インタビュー]
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ライドシェアによって地域の交通課題を解決するのは、主に事業性の面で難しいとされる。移動のニーズはあっても絶対数が少ない地方では事業が成り立たないからだ。しかし、この難題に取り組んでいる企業がある。

博報堂が展開する「ノッカル」は、そのような企業の取り組みのひとつだ。ノッカルでは、地元在住の自家用車のオーナーが、「ノッカル」のドライバーとして自分が移動する日時や車をだせる日時を登録する。利用者は自分の移動予定にあう移動があれば、予約してドライバーの移動に乗っかり目的地まで乗せてもらう。

見知らぬ人の車に乗るのではなく、各自治会や近所の単位でのマッチングを行う。事業よりも互助の考え方で成立するライドシェアともいえる。

このサービスや地域課題の事業に取り組むのは、博報堂だ。同社 マーケットデザイン事業ユニット グロースプラニング局 局長補佐 堀内悠氏は、下記のレスポンスセミナー「日本型ライドシェア開始から3ヶ月~都市・地方の展望と課題~」に登壇する。


■高度成長期のインフラが維持できない日本

――まず、ノッカルを始めたきっかけ、背景事情はなんでしょうか。

堀内氏(以下同):日本は2004年以降、人口減少が急速に進んでいます。現在の社会インフラや生活インフラは、戦後の高度成長期に作られたものが多く耐用限界を迎えているものも増えています。これからの日本社会の基盤として、これまでの延長線上ではなく、時代に合ったものへインフラ再編も考えるべき時代だと考えています。地方の行政サービスを支える国の「地方交付税交付金」は国家予算の約15%を占める規模になっており、地方自治体では、自主財源が3割ほどしかないエリアも見られます。地域交通は、生活に密着したインフラですが、民間バスの減便や撤退が急速に進んでおり、1,700以上ある自治体で、自治体主導のコミュニティバスを運営しているエリアは、1,400以上にのぼると言われています。

博報堂では、社会課題解決を目指すプロジェクトとして、多様な領域の社会インフラ/生活インフラの再構築を目指した活動を続けています。その中には、各産業のDX推進に着目した活動もあり、5G/IoT関連のプロジェクト、MaaS/CASE関連のプロジェクトなどでは、自動車メーカーや自動車販売店との共創で、地域交通やマイカー交通のサービス開発にも取り組んできました。東京都西部や富山県など具体エリアでの実証実験を経て、2021年には、富山県朝日町でノッカルあさひまちを社会実装。ノッカルは、現在複数エリアに展開されています。

――採算がとれない地方の公共交通事業は長年の問題ですね。

生活に密着した地域交通においては、民間路線バスの減便/撤退が顕著で、自治体運営のコミュニティバスが大きく増加しました。コミュニティバスの収支率は15%程度のエリアが多く、国や都道府県の補助がなければ維持できない路線がほとんどです。また、交通事業者の減少やドライバーの高齢化も共通課題で、朝日町では、コミュニティバス3台、タクシーは9台しかなく、運営する交通事業者も1社しかありません。そこで、目を付けたのが地域住民の保有するマイカーです。人口1万人余りの朝日町にマイカー登録は8000台以上あります。これを資産として活用できないかと考えたのがノッカルです。

■なぜ社会課題にマーケティング企業が取り組むのか

――社会課題解決は重要ですが、なぜ博報堂なのでしょうか。


《中尾真二》

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