ステランティス、2024年中に新型車7台を日本へ、ランチア導入は? アジアパシフィックCOO初来日で語る

ステランティス インド・アジア太平洋知地域担当COOのアシュワニ・ムッパサニ氏
  • ステランティス インド・アジア太平洋知地域担当COOのアシュワニ・ムッパサニ氏
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  • ステランティス・ジャパン 打越晋社長
  • ステランティスの次世代EV向けプラットフォーム。写真は「STLAミディアム」
  • ステランティスの次世代EV向けプラットフォーム。写真は「STLAミディアム」
  • ランチア・イプシロン 新型のティザーイメージ

年明け早々、都下のステランティス・ジャパン本社にインド・アジア太平洋知地域担当COOのアシュワニ・ムッパサニ氏が来日し、プレス向けにラウンドテーブル会見を行った。

昨年11月に同職に就いたばかりの氏はインド生まれのアメリカ人で、インドの工科大学で学士号を取得した後、アメリカで生産工学の修士号を修めた。自動車業界ではメカニックから働き始め、GMを皮切りに生産、品質管理やサプライチェーンに、セールスやマーケティングなどの多くの分野を、アメリカは元より中国や中南米、アフリカやインド、欧州などグローバルにあらゆる地域で経験してきた、立志伝中の人物でもある。

「私は生まれも育ちもインドで、スズキやホンダのメカニックやディーラーのビジネスを見ていました。すべてのOEM(完成車ブランド)にリスペクトを抱いていますし、競争があって文化が生まれると考えています」

その彼が、14ものブランドを傘下に抱えるステランティスの、日本を含むアジア・パシフィック地域の最高執行責任者なのだ。

「自動車の業界は信頼関係、同じヴィジョンを共有して前に進むことが大事。ステアランティスには2030年までにこうしたい・こうなりたいという明確なヴィジョンがあります」

◆シェア4倍へ「大胆に前進する」ステランティスの中期戦略

ステランティスには現在、170もの様々な国籍の従業員がいて30以上の製造拠点を世界各地に擁し、130以上の市場に展開しているそうだが、それぞれ異なるバックグラウンドと多様性を理解し、ホーム市場に閉じこもらないことを是としているという。それが「DARE FOWARD 2030(大胆に前進する、の意)」という中期戦略的スローガンだ。

具体的には「ステラ・スモール/ミディアム/ラージ/フレーム」という4つのランニングシャシーたるプラットフォームと、「ステラ・ブレーン」「ステラ・スマートコクピット」「ステラ・オートドライブ」という3種類の新しいテック・プラットフォームを組み合わせることで、サステナブルな未来のモビリティを創り出していくという。無論そこには、2038年に向けたカーボンネットゼロ化と電動化が含まれ、ソフトウェア分野には2021~25年にかけて300億ユーロ(約4740億円)が投資される。

そして北米や欧州以外に、ステランティスがどれだけ注力しているかを、ムッパサニ氏は次のように説明する。

「可処分所得の伸び率が北米や欧州より断然高く、毎年必ず上がっています。グローバル開発の拠点はインドですが、我々インド・アジアパシフィック(以下IAP)の開発本部はマレーシアにあり、製造工場はインドとマレーシアにあります。ソフトウェアやICTハブもインドです。IAP地域のユニークさは、地理的に複雑で各国各市場で多様であること。例えば日本と韓国でもかなり異なりますし、オーストラリアとニュージーも全く違う。IAP内における時差も大きい。そういう複雑性のある地域ですが、域内に28億人の人口を抱え、中国並に平均収入も伸びています。だからこのキー・リージョンで、ステランティスの市場プレゼンスは現状、2%に満たないですが、2030年までに5%を取りたい。正しいポートフォリオをもって成功を収めていくつもりです」

それこそが「デア・フォワード2030」のIAPにおける展開のコア部分で、向こう4、5年内に75種類のプロダクトを揃え、市場シェアは4倍に、うちBEVミックスの比率は最大50%を見込んでいるという。

◆2024年中に7台の新型車を日本へ、ランチア導入は

「昨年の日本の輸入車市場は、為替の影響もあって約10%の縮小を見ましたが、我々ステランティス・グループは逆に伸びています。ユニークでニッチな車を提供しているから、日本では成功しています。我々に大事なことは、数を売ることではない。それはステランティスではない。顧客の満足度を第一に考えることが、最重要事項なのです」

彼のいう「ニッチ」とは、単なる「高付加価値」とか「ラグジュアリー」を言い換えたものではない。それこそ「コモディティ以上、ラグジュアリー未満」のところで、便宜的に「プレミアム」というタームが充てられる領域だ。決して規模ボリュームの小さくない、成熟市場だからこそ、日本市場の嗜好や動向は、IAPあるいはグローバルでの先行指標として重要という認識といえる。

「新車で400万台の規模がある以上、グローバルで見ても比重は高かったですが、今後もエキサイティングだと思います。ですから今年2024年に、日本市場には7台のニューモデルを発売します。車種名までは申し上げられませんが、ジープが2車種、アルファロメオが1車種。プジョーが2車種、フィアットが1車種、シトロエンが1車種です」

つまりグローバルとしてのコミットメント、欧州ではBEV化100%はグループとして是であり、アルファロメオのように2025年には電動化を完成させるといったOEMごとのコミットメントには邁進するが、国ごとの使用環境やインフラ、居住スタイルや補助金政策といった条件に応じて、フレキシブルに各ローカル市場に合わせていくのが、ステランティスのやり方といえるだろう。

質疑応答では、『イプシロン』を発表して話題をまくランチアの日本導入についても、次のように述べる。

「可能性はつねにあり、当然ゼロではありません。日本でランチア・イプシロンが欲しい方がいたら導入に問題はありません。ですが、おそらく(販売)ボリュームとしての台数は出ないでしょう。でも強烈に好きな人には提供したい、ニーズに応えたい。日本市場向けにローカライズするとなると1グレードか2グレードに絞りつつ、そしてローカルの大手、日本車と直接対決するわけではないものの、戦わねばなりません。でも先ほども申し上げた通り、ステランティスは顧客満足度を高いレベルでキープするのが目標。ここ日本の顧客によろこんでもらえるものを提供したいと考える以上、もちろん日本での戦略はあるということです。顧客に満足いただければ、必ず伸びていきます」

◆Things changes on the time

一方で、ディーラービジネスの新しい形について、ブランドハウス施設に関してもステランティス・ジャパンと協議していることを窺わせた。


《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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