硬くて丈夫! アクリル樹脂補修でクルマ樹脂パーツを復活させよう~Weeklyメンテナンス~

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メンテナンスをしている最中に、クルマの樹脂パーツを破損してしまった経験ってあるんじゃ無いだろうか? そんな時に樹脂パーツを補修するテクニックを憶えておけば安心感満点だ。

そもそもクルマ樹脂パーツの中には“再利用不可”となっているパーツがある。強い力で引っぱらないと抜けないので、脱着時には破損が前提で必ず交換するという樹脂部品もあるのだ。しかし、大切に脱着すればまだ使えるので素人DIYユーザーは作業前に交換パーツを用意してから作業に取りかかることはほとんど無いだろう。とは言ってもメーカーが再利用不可なんてうたっているだけに、大切に扱っても折れてしまうことも多い。そんな時に樹脂のリペア術を実践してみよう。

樹脂製品といってもクルマのパーツに使われている部品の多くはビスを止めるためであったり、ツメ状のパーツが部品をカシメて固定している場合などが多く、力が加わっている部分の可能性が高い(デザイン上でひっついているだけのパーツは別)。そのため、一般的な樹脂対応の接着剤をうまく利用したとしても“すぐに折れてしまった”と言う結果になりがち。また接着時には完全に接合しているように見えても、接着面が薄く狭小なためツメを差し込むなどの動作で力が加わると再びポキッと折れることも多い。

そこでクルマのDIYを実践しているユーザーからもてはやされているのがアクリル樹脂を用いた補修剤だ。カー用品店やホームセンターなどで手に入るものの代表例としてはプラリペアと呼ばれる製品がある。これは一般的な接着剤とは異なり、溶剤とパウダー状の樹脂が別々に用意されて、これを一定の割合で混合することで硬く固まるというもの。割れた部分を接着すると言うよりも、新たな樹脂パーツを作る感覚の補修剤なのが独特。そのため折れた部分を補修するのはもちろん、割れ部分の補強のために両サイドに盛り上げてみたり、さらには部分的に無くなったパーツを盛り上げて補修することまでできてしまうのだ。

しかも作業スピードの早さも抜群、ほぼ瞬間接着剤のスピードで硬化(完全硬化には少し時間が必要)するのでスピーディ。注射器のような専用の容器の先から溶剤を少し出して、ここに樹脂パウダーを吸い上げる要領で作業する、それを割れのある場所に流し込むことで補修するというかなり特殊な手法なので、最初はとまどうかも知れないが、実際に作業してみるとかなりスマートでサクサク補修できるので楽しくなるほど。

完成して完全硬化させてから補修部分に触れてみるとカチカチの樹脂の硬さに硬化しているのがわかる。力の加わる部分でぐっとビスなどが押しつけられても、しっかり受け止めていることが確認できる。これまでは諦めていた樹脂パーツの補修もこれがあれば、かなり可能性が広がるので車両メンテナンスのお供に用意しておこう。

さらにアクリル樹脂を用いた補修剤の使い方における上級編もお伝えしておこう。先の説明を見てすでに察している読者もいるかも知れないが、ここまでの強度がある補修剤なので“パーツを作ってしまう”ことも可能だ。折れて無くなってしまったツメなどがその一例。元の形状がわかるならばパテや粘度など(型取りくんと呼ばれる専用のアイテムも用意されている)で型を取った上で、補修剤を流し込んで固めるという手法も可能。欠け程度ならば大き目にパーツを作っておいて後からヤスリで削って形状を合わせる方法でも良いだろう。古いクルマですでに純正パーツが手に入らない場合などにも救いの神になってくれる手法だ。しかもこの補修剤はABS樹脂、アクリル樹脂、塩ビ、AESなど、クルマで使っていると思われるほとんどの樹脂パーツに対して汎用的に利用できるのも大きなメリットだ。

ところで補修を趣味にしているユーザーの中には、樹脂パーツの接合部分の強度をさらに高める方法を採っている場合がある。プロの樹脂補修では一般的なヒートリペアという方法だ。こちらは熱を加えて細い針状のパーツ(電熱ピン)を樹脂の中に埋め込むという方法。割れてしまった樹脂に橋渡しするような形状で電熱ピンを設置して、割れた部分の樹脂を接合し強度を高めることができるといった補修方法だ。DIY用としてもヒートリペアのキットが販売されているので、クルマDIYが好きな仲間で1台用意するのも良いだろう。ちょっと荒技になるが、DIYユーザーの中には半田ごてでホッチキスの針を熱してヒートリペアと同様の手法を簡易的に試みているケースも見られる。汎用工具を使うため技術力と工夫、根気が必要だがそんな方法もあることも憶えておくと良いだろう。

クルマの樹脂パーツが折れたり欠けたりするとかなりショック。簡単に交換できる部品なら良いのだが、大きなユニットごと交換になるとかなりの出費になる。そこでこれまで見て来たような樹脂パーツの補修を知識として知っておけば、いざというときに役立つこと間違いなしだ。DIYの可能性も高まるのでますます愛車のメンテナンスを深く楽しむことができるようになるだろう。

土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。

《土田康弘》

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