10月25日に日本初上陸を果たした新型ドゥカティ『スクランブラー』。そこでファッションブランド『SHINICHIRO ARAKAWA』(シンイチロウアラカワ)の創立者で、ファッションデザイナーの荒川眞一郎さんが「ナイトシフト」をテストライド。自身もドゥカティオーナーである荒川さんのインプレッションと、バイク×ファッションのデザインに対する思いなど、貴重なお話を聞くことができた。

◆「自分で納得のいかないものは作らない」

モーターサイクルウェアを専門的に取り扱うブランドSHINICHIRO ARAKAWAは、Hondaとのコラボ展開で多くのライダーたちにその名を知らしめた。その特徴は、徹底したデザインへのこだわりにある。荒川さんは自身のデザインのアイデンティティについて、「自分で納得のいかないものは作らない」と述べた。

その上でデザインへのアプローチに繋がるものとしてまず初めに挙げたのは「ユーザーからの意見や要望」とのことだった。昔は機能的な面からのアプローチが多かったという荒川さん。最近では自身のブランドのユーザーが増え、意見や要望を多くもらっているとのこと。すべての意見や要望にそのまま答えるのではなく、自分なりにフィードバックすることが大切なのだそうだ。
◆SHINICHIRO ARAKAWAのこだわりは、着用して初めて分かる意外性
そんな徹底したデザインへのこだわりを持つ荒川さんが、完成したときについ笑みを溢したという、こだわりのジャケット。その貴重な開発秘話を聞くことができた。

あまりにも自由度が高く、服を着ていないような感覚に陥ることから「ヌード」と名付けられたそのジャケットは、約2年の構想期間を経て商品化に至ったという。デザインのポイントとしては、普段着として問題なく使用できるものかつ機能的なディテール。そのこだわりは着用して初めて分かるそうで、特に腕まわりの自由度が高く、ライディングポジションを楽にとることができる。
この機能性を生み出すため、荒川さんは“トワル”と呼ばれる試作段階のジャケットを着て、自ら首都高をバイクで走り、修正を繰り返しながら理想を追い求めたそうだ。荒川さんは「そういう他に無い機能性に興味がある」として、ウエアの機能的なディテールとデザイン両立の難しさを語ってくれた。
◆乗りやすいのに刺激的「すぐに楽しく乗れるバイクはいいね!」

新型スクランブラーを見た荒川さんは、シルエット自体に大きな変化はないものの、先代からより現代流に進化したデザインとなっていることに注目。さらにカラーリングについて「クロともネイビーとも言えない、絶妙なナイトブルー」と表現し「こういう選択肢があるのはいいよね」と好印象だ。

いよいよ新型スクランブラー実際に乗って、銀座の街中を駆け抜ける。乗り出し直後、実はドキドキしてぎこちなかったという荒川さん。しかし、驚いたのはまず足つきがよさに加えて車重が軽いこと。そしてスロットルを開けると有機的なドゥカティサウンドに反してスムーズに回るエンジンなど、不安要素がなかったそうだ。

荒川さんは「乗ってそんなに時間が経ってなくても、すぐ楽しく乗れるような感じだったことが印象的」として、スクランブラーの持つ軽快さに驚いていた。
◆バイクに触れる瞬間を大切にしていきたい

多くのライダーにバイクに乗る愉しさを提供している荒川さん。自身の過去を振り返ると海外滞在中もあまり外に出歩くことは少なく、缶詰めで仕事に明け暮れていた日常を「ちょっと勿体なかったかな(笑)」と笑いながら教えてくれた。

そんな荒川さんが最近ハマっているのは、軽井沢~東京間を下道かつスクーターでの往復。そうすることで、普段見ることのない景色やインスピレーションも生まれてくるそう。さらにもっと余裕ができたら、スイスやアルプスにも行きたいと目を輝かせながら語ってくれた。最後に今回のインプレッションについて「とても貴重な経験で、刺激的でした。やっぱり新しい経験はなにより楽しいですね」と短い時間を振り返った。