スーパースポーツカーを持つこと、楽しむことへの提案…MAGARIGAWA CLUBいよいよ始動

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コーンズ・アンド・カンパニーリミテッドはアジア初の会員制ドライビング、“THE MAGARIGAWA CLUB”を千葉県南房総市にオープンする。それに先立ち一部報道陣向けの見学会が開催された。

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◆コーンズを選ぶという意味

このプロジェクトが発足したきっかけは、同社代表取締役社長の渡謙作氏がスペインのアスカリサーキットを訪れたことがきっかけだった。その後、千葉県の許認可を経て、2020年5月に工事着工。そして今年の7月にグランドオープンを目指して進められている。

そもそもなぜMAGARIGAWA CLUBが作られたのか。コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドはグループ会社にてフェラーリをはじめとした高性能スーパースポーツカー等の車両販売やメンテナンスを行っているほか、エレクトロニクス・産業機械、保険、海図、アパレル等広範囲にビジネスを行う総合商社だ。その中のクルマにフィーチャーしたときに、「ただクルマを販売して直すだけの会社ではいけないということをずっと考えていた。そうではなく、クルマには楽しいと思えるような要素が多くあり、それを実際に体験できるのがコーンズだという感覚になっていただきたかった」と話し始めるのは同社MAGARIGAWAプロジェクト室室長の山口オスカー博義氏だ。現状では、

コーンズ・モータースでクルマを購入された方は“1861銀座”にてスーパーカーを眺めながら食事ができる。自分のクルマを持って海外に行き、そのクルマで走って楽しむことができるグランドツアーも企画。レースをしたいとなるとそのサポートも行っている。そして、止めおける場所がないときにはコーンズリザーブが京浜島や、MAGARIGAWAにも300台ほどが預けられるようになっている。このようにクルマは楽しいということを感じてもらえるような取り組みを展開しており、その一環として、走る場所を提供する目的にMAGARIGAWA CLUBが発足したのだ。

◆なぜドライビングクラブか

その背景には、同社が扱う高性能スポーツカーの走らせる環境が厳しくなってきたことが挙げられる。「排ガス規制、騒音規制から、お持ちのクルマがもしかしたら公道を走らせられなくなるかもしれない。クルマのスペックの一割も出せないようになるかもしれない。そうすると走らせる場所がなくなって、こういうクルマを持つ意味がなくなってしまうという問題があった」と山口氏。

もうひとつ、「自動運転やカーシェアの普及で、そもそもクルマを持つ必要がないという考えがある。そうすると、クルマを持つ友人がいなくなり一緒に走る相手もいなくなってしまう。その点でもクルマを持つ意味がなくなる」と危機感があったそうだ。

一方で、「今後、高級車やスーパーカーがなくなるのかと問われれば、おそらくなくならないだろう」と述べ、山口氏は時計を例に、「クォーツが出てアップルウォッチが出て、では機械時計はなくなったのかというと、ある一定の方々は魅力を感じて複数所有されている。実際に高級腕時計メーカーの中には在庫切れというところもあるほど欲しい層は一定数いる」とし、それはスーパーカーも同様だと語る。

ただし、購入すること自体は(時計と)同じだが、では複数持った時の保管場所や走らせる場所が問題になってくる。その解決方法が海外にあった。それが冒頭のアスカリサーキットなどの会員制のドライビングコースだったのだ。

もうひとつプロジェクトを進めるにあたり、重要なポイントがあった。それはアクセスだ。山口氏によると、この点が解決できなければこのプロジェクトはとん挫しただろうというほど重要視されていた。アスカリサーキットに行くにはバルセロナ空港からクルマで10時間、あるいはバルセロナ空港から最寄りのローカル空港まで1時間半かけてフライトし、そこからでもクルマで1時間もかかるという。これは他のドライビングコースも同様なのだとか。そこで、「羽田空港、あるいは都心からとにかく1時間程度で来ることができる場所が絶対条件」と山口氏。

場所の選定も成田方面や神奈川も含めて検討した。しかし、「これだけ起伏に富んだ場所で、自然が豊かで、ここに作ったらとても楽しいだろうとイメージできたので、南房総の地を選んだ。大阪から来ても空港から1時間。アジアの方も、これまでは遠くのアメリカやヨーロッパに行っていたのが、羽田まで飛んでそこから1時間で着くのは近いといわれる」とロケーションは理想的なようだ。

これまで日本ではこういった会員制のドライビングコースはなかった。では、どうしていたかというとサーキット走行が多かった。そこで山口氏たちに気付きがあった。「サーキットを走ろうとすると、ヘルメットやレーシングスーツ、グローブ、靴が必要で、予約も半年前にはするだろう。そしてレッスンを受けてライセンスを取って、周りの上手い方々の中で大丈夫かなと不安になりながら走る」とハードルの高さを指摘。

さらにホスピタリティ面にも抵抗感があった。「サーキットイベントではピットが寒かったり暑かったり。そこに折り畳み椅子を持っていって、奥様に長時間そこに座ってもらう。帰りは軽食を持って帰ってもらって、大渋滞の中を帰宅する。そんなイメージが強くついてしまうと、ご家族皆さんで行こうというアイディアには繋がらない」というのだ。

そこでMAGARIGAWA CLUBでは、「アクアラインや館山道で1時間ほどドライブした後に、コーヒーを飲みながら少しくろいで、3から4周走って満足したら、お食事をしてワインを飲んで宿泊する。そんな気軽な遊び方ができれば」という。

さらに、レストランをはじめとしたホスピタリティはKANAYA RESORTSが手掛け、そのクオリティを維持。そのほかに温泉やジム、フィットネス、スパでマッサージも受けられる。プレイグラウンド(キッズルーム等)なども完備していることから、「走りの面だけでなく、このようなホスピタリティがきちんとしていれば、家族の方から今日はMAGARIGAWAに行って遊ぼうといってもらえる。そうなることを目指している」と述べた。

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◆安全面は最重要課題

MAGARIGAWA CLUBは、クラブハウス、コース、オーナーズパドック(宿泊施設)などから構成されている。

クラブハウスはすべて切妻屋根の和のイメージで作られている。レストランや、25mプール、天然温泉、ジムやスパ、フィットネスなどもある。そしてクラブハウス内に36台入るピットも設置。「走行の順番を待ったり、走行後に少しゆったりしながら待つことができる」という。

クラブハウスクラブハウスピットピット

コースのデザインは多くのサーキットを手掛けたティルケエンジニアリング&アーキテクトによるもので、全長3.5km。コーナーは22か所あり、上り20%、くだり16% の勾配があるものだ。プライベートコースのためグランドスタンドなどはなく、クラブハウスからワインディングコースを見ることができる。

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「このコースレイアウトをお客様に見せると、これは危なさそうだという声が出た。ティルケ氏に依頼したきっかけのひとつは、彼らは、これだけのスピードで、どういうクルマがどういうミスをしたら、ランオフは何メートルあれば絶対安全かを計算できるから」と山口氏。またティルケ氏は、「このコースを作るのは楽しかった。観客席の必要もないし、FIAの基準に準拠する必要もない。これだけの山の中に好きなコースを作れる。これはもう本当に今までやったことないくらいエキサイティングだった」とコメントしていたそうだ。

その安全面では、FIAに準拠する必要はないものの、「準拠できるくらいの安全性を持たせた」という。舗装は前田道路に依頼。「滑りすぎない、グリップしすぎない、市販車でも、レース用スリックタイヤのどちらでも楽しめるちょうどいい舗装のパターンを試してもらった」。ランオフエリアが緑なのは、「自然に溶け込ませるため。赤や白など自然に溶け込まないものは作らないようにした」と述べる。さらに、万が一クラッシュしたときにも安全性を確保できるように、タイヤバリアが本来あるべきところには、テックプロバリアーズを採用。「F1サーキットの中でも、安全面に気を使っているコースしか利用していないもの。タイヤバリアを3.5キロ一周でおそらく1000万円くらい。テックプロバリアーズを3.5キロ使用すると、輸送費などを込めて約3億円かかる。それほどまでに安全面を重視している」と山口氏。さらにそれも抜けてしまった場合はガードレールもあり、それも抜けてしまった場合には、「ジェオブルッグ社製のデブリフェンスを採用し、これはネット自体がしなるので絶対にものを外に出さないという、安全性の優れたものを採用している」とのことだった。

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ではコースコントロールはどうか。「通常はマーシャルが各コーナーに配置されフラッグを振るなどを行うが、このコースにはマーシャルが一人もいない。その代わりマイラップスのデジタルフラッグを使っている。これはとても視認性が良いので、雨の日でも晴れの日でも曇りの日でも見えるようになっている。万が一、クルマの速度が急激に遅くなった、あるいは止まった場合は自動的に感知して、イエローフラッグを出す機能を備えている。同時に、コントロールルームでモニター監視し安全面を確保している」と安全性の高さを強調した。

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オーナーズパドックは、「ビラ棟を計9棟用意。分譲タイプではあるが、何日か我々が買い取るので、ホテル利用として一泊いくらという形で宿泊も可能。先に5棟販売したが、即日完売したので、残りの4棟は6月から7月頃に販売開始予定。同時に開業後に14棟ほど建てる予定」と話す。

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そして山口氏は最後に、「MAGARIGAWA CLUBは開業したら終わりではなく、ここから10年20年経ってやっと、クルマ文化に対して少しでもクルマで楽しめる、遊べるようなものになっていたらいいと思っている」と語った。

正会員は上限数500名で入会金3600万円(2023年6月時点、上限250名で締め切り)、年会費22万円。アソシエイト会員は上限数750名で入会金400万円(2023年6月時点、上限100名で締め切り)、年次諸費用105万円となっている。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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