名実ともにファーウェイカー「AITO」に? ファーウェイがOEMになる日も近いか[中国]

広州モーターショー2022のAITOブース全景
  • 広州モーターショー2022のAITOブース全景
  • 広州モーターショー2022のAITOブースに展示されたM5
  • 広州モーターショー2022のAITOブースに展示されたM7
  • 広州モーターショー2022のAITOブースに展示されたファーウェイのスマホ

ファーウェイと中国民間OEM賽力斯(SERES)の展開する新エネルギー車(NEV)ブランド問界(AITO)が3月8日、公式WeChatなどで「HUAWEI AITO」という文言を使い始め、中国国内で話題を呼んでいる。

AITOに関しては、SERESが商標など権利を有していると見られおり、AITOの実車にも今まではファーウェイを示すエンブレムなどは使用されずSERESのエンブレムのみが使用されてきたが、「HUAWEI AITO」の表示はAITOの権利がファーウェイに移行したことを示すものと考えられる。

そもそもスマートフォン製造・販売や通信分野のファーウェイが自動車分野に乗り出してきたのはここ数年のこと。それでも中国らしいスピード感で、ファーウェイは現在、中国自動車業界において存在感を示しつつある。そのひとつがAITOなのだが、AITOについては後述するとして、ファーウェイの自動車分野の取り組みの全体像を紹介する。

ファーウェイの自動車分野への取り組み

ファーウェイは自動車分野において主に3つの取組みを行っている。まずはAITOのパターンで、「華為智選(ファーウェイ・セレクト)」と呼ばれるもの。自動車の研究開発や製造面ではそれほど踏み込まないものの、コックピットにはHarmonyOSを搭載し、各種コンテンツやファーウェイの技術を取り入れる。最大の特徴はファーウェイのスマートフォン等販売における中国全土に広がるリアル店舗で自動車を販売することだ。

一汽VW上汽VW一汽トヨタ広汽トヨタなど中国で依然有力なOEMの販売店は、中国全土に1000店舗前後展開しているが、ファーウェイのリアル店舗はこれを凌駕する数千店舗規模になっている。もちろんすべての店舗で自動車を展示するような広さを有しているとは限らないが、ファーウェイの計画ではゆくゆくは1店舗当たり最大15台程度の自動車を展示販売する、ともされている。

広州モーターショー2022のAITOブースに展示されたM5

次いで、OEMと組んで研究開発を行い、自社のインテリジェント・ドライブ・ソリューションを提供する「HI(Huawei Inside)」で、つまり自動車業界の「Intel Inside」を実現しようとするもの。すでに導入しているものに、中国国有OEM北汽集団のBEV新ブランド極狐(ARCFOX)や、同じく中国国有OEM長安汽車と世界最大級のバッテリーメーカー寧徳時代(CATL)とタッグを組んだ阿維塔(AVATR)がある。中国国有OEM広汽集団も導入を表明している。

興味深いのは中国国有OEM上汽集団は、ファーウェイを徹底的に拒絶することを発表していること。トップが以前「(直接的な名指しはしなかったが、明らかにファーウェイと分かる形で、ファーウェイと組むと)OEMとしての魂を抜かれる」と発言して一時話題になった。その上汽集団、現在はスマホ製造販売ではファーウェイと競合になるOPPOと連携している。

以上の2パターンがファーウェイの自動車業界における主な切り口だが、ファーウェイは独自にモーターやその他自動車部品も製造しており、単純なサプライヤーとしても自動車業界に足場を固めつつある。

ファーウェイ・セレクト第一弾、SERESとの取り組みまとめ

AITOのパターン「ファーウェイ・セレクト」について、ファーウェイがまずパートナーに選んだのがSERESだ。SERESと言っても、重慶市を拠点とする泡沫OEMで、当時は業界関係者以外、誰もその存在すら知らないと言っても過言ではないほどのものだったが、AITOが相応に当たり、今では一気に知名度を高めた。


《有田直矢@インサイツ》

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