「マリン版CASE」実現でさらなる飛躍へ、船外機好調のヤマハ発動機、営利の約半分を担うマリン事業

ヤマハ発動機の主力製品となる船外機。手前が今春発売予定の450馬力モデル「F450」
  • ヤマハ発動機の主力製品となる船外機。手前が今春発売予定の450馬力モデル「F450」
  • 新操船システム「Helm Master EX」を搭載するヤマハ発動機のボート(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)
  • 初公開となったヤマハ「YFR-コンセプト」ヤマハ製品のアクセサリーなどを手掛けるワイズギアは探知機などを展示(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)
  • 初公開となったヤマハ「YFR-コンセプト」ヤマハ製品のアクセサリーなどを手掛けるワイズギアは探知機などを展示(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)
  • ヤマハの新操船システム「Helm Master EX」(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)
  • ヤマハの主力製品となる船外機。手前が今春発売予定の450馬力モデル「F450」
  • ヤマハの電動操船システム「HARMO」(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)
  • ヤマハ発動機 マリン事業本部長の井端俊彰執行役員

日本最大級のマリンイベント「ジャパン・インターナショナルボートショー2023」が3月23日に開幕した。62回目となる今回は「あふれる笑顔 この海でずっと・・・・」をテーマに、海の魅力を発信する。会場はパシフィコ横浜など。

自動車などと同様にコロナ禍以降の調達の遅れなどが影響しボートの国内販売状況は微減しているが、免許取得者数やシェアリング需要はコロナ前より増加するなど、明るい兆候を見せるマリン業界。その中でも、ボート用のエンジン(船外機)や水上バイクを販売するヤマハ発動機は、国内外での需要増をとらえ、過去最大の売上、営業利益を更新したと発表。新製品のお披露目と同時にマリン事業へのさらなる注力をアピールした。

◆ヤマハが目指す「マリン版CASE」の実現

初公開となったヤマハ「YFR-コンセプト」ヤマハ製品のアクセサリーなどを手掛けるワイズギアは探知機などを展示(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)初公開となったヤマハ「YFR-コンセプト」ヤマハ製品のアクセサリーなどを手掛けるワイズギアは探知機などを展示(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)

ヤマハ発動機の出展テーマは「海、とびきりの週末」。初公開となるコンセプトモデル『YFR-コンセプト』を筆頭に、ヤマハ製の船外機を搭載するボートやスポーツボート、水上バイクの「ウェーブランナー」シリーズなどを展示する。

ヤマハが成長戦略のひとつとして掲げるのが「マリン版CASE」だ。これにより提供価値を拡大し、「マリンライフをさらに安心・快適な経験に変える」という。これを商品として具現化したもののひとつが、今回公開されたYFR-コンセプト。CASEの中の“A”つまり“Autonomous”を担う、オートパイロットを実現する新操船システム『Helm Master EX(ヘルムマスター・イーエックス)』を搭載する30フィートクラスのボートだ。スティック操作で細かい制御が簡単にできるだけでなく、様々なパターンのオートパイロットに対応する。このヘルムマスターを搭載するボートはすでにサイズ・用途違いで3機種あり、今後も採用を拡大していく。

ヤマハの新操船システム「Helm Master EX」(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)ヤマハの新操船システム「Helm Master EX」(ジャパン・インターナショナルボートショー2023)

このほか、“Connected”ではスマートフォンでボートを遠隔監視できる「リモートモニタリング」を導入。“Shared”ではフィンランドのITスタートアップ「Skipperi」に出資しデジタルプラットフォームを開発。快適なマリン体験を提供するボートクラブの運営をおこなう。そして“Electric”ではボートのカーボンニュートラル実現に向け、電動推進システム「HARMO(ハルモ)」を開発。すでに欧州では販売を開始し、日本でも小樽運河で実証運行をおこなっているが本格導入に向け検討を重ねていくという。これらマリン版CASEを中期計画の中で確固たるものとし、長期的には「海の価値をさらに高める事業」へと成長させていく。

◆海の価値を更に高める事業へ

ヤマハの主力製品となる船外機。手前が今春発売予定の450馬力モデル「F450」ヤマハの主力製品となる船外機。手前が今春発売予定の450馬力モデル「F450」

ヤマハのマリン事業における2022年の売上高は5170億円と、2021年の3911億円から1259億円増加。営業利益は1092億円で、2021年の768億円から大きく伸ばし過去最高を記録。ヤマハ発動機全体の売上の23%、営業利益の実に49%を担う大きな柱となっている。その背景には、大型船外機の需要増加、多機掛け(船外機を複数搭載すること)大型ボートの増加などがあり、欧米においては過去10年にわたり大型船外機の需要が伸び続けており、今後もこの傾向は続いていくという。

今回のショーでは今春米国で発売予定のヤマハ最大馬力(450馬力)のV8船外機「F450」が展示されていたが、これらの生産能力を増強することで事業競争力を強化し、高収益体質を維持する。大型船外機では2024年までの中期計画で+20%を見込んでいるが、さらに2026年までの次期中期内でさらに+15%の成長を見込んでいる。

ヤマハ発動機 マリン事業本部長の井端俊彰執行役員ヤマハ発動機 マリン事業本部長の井端俊彰執行役員

またこれらの事業基盤を強化するため、米国でのR&D機能を強化し、日米での連携による商品力の向上を目指す。同時に、バイオマス由来の樹脂を船体のハッチに採用したり、日本製紙と開発した植物由来のセルロースナノファイバー樹脂をエンジン部品に採用するなど、環境への対応も進める。

マリン事業本部長の井端俊彰執行役員は、「マリン長期ビジョンとして、お客様に『信頼性と豊かなマリンライフ』を提供し、海の価値を更に高める事業へと進化してまいります。『マリン文化を変える、日常が変わる』『海・人・社会を結ぶ』『今日よりもっと素晴らしい海を、未来へ贈る』『海の秘めたポテンシャルを解放する』。今後もヤマハ発動機は、マリン中期事業戦略を着実に実行することで、これらの長期ビジョンの達成をめざしていきます」と語った。

◆26日まで開催、フローティング展示や高級車も

高級車ブランドも軒を連ねる。写真はアストンマーティン (ジャパン・インターナショナルボートショー2023)高級車ブランドも軒を連ねる。写真はアストンマーティン (ジャパン・インターナショナルボートショー2023)

「ジャパン・インターナショナルボートショー2023」は3月23日から26日まで開催。パシフィコ横浜での屋内展示のほか、ベイサイドマリーナでは実際に海にボートを浮かべた状態でのフローティング展示もおこなう。

ヤマハ発動機や、同社が販売するフランスのボートメーカー「PRESTIGE」の展示だけでなく、トヨタやホンダ、スズキ、カワサキなどをはじめ、様々なメーカーがボートや水上でのライフスタイルに関する展示をおこなう。高級自動車ブランドによる展示もあり、楽しみ方も色とりどり。

入場料は一般(高校生以上)1500円で、中学生以下は無料。2会場に入場可能となっている。

《宮崎壮人》

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