排ガスがない! FCEVバスから駅伝を中継放送---TBSとトヨタが協力

「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両
  • 「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両
  • 「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両
  • 「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両
  • 「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両
  • スタート&ゴールの群馬県庁
  • スタート&ゴールの群馬県庁
  • 「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両や水素の仕組みのパネル
  • 「地球を笑顔にするくるま」コースターベースのFCEV車両

第67回ニューイヤー駅伝が1月1日、群馬県の6市を巡る7区間100kmで争われた。レースの模様はTBSグループによって放送され、TBSグループとトヨタ自動車とタッグを組んで作り上げられた「地球を笑顔にするくるま」から放送された。

第67回全日本実業団対抗駅伝競争大会(ニューイヤー駅伝)は毎年1月1日にレースが行われる正月の風物詩だ。群馬県庁をスタート・ゴールにして群馬県の前橋市・高崎市・桐生市・伊勢崎市・太田市・みどり市を巡る7区間100kmで争われる。全国の予選を勝ち上がった実業団37チームが日本一を目指してレースを行う。今大会は直前で1チーム欠場を発表したため36チームで争われた。

レースはTBSグループが放送しており、中継車2台、機動性を生かしたバイク中継車2台の、合計4台の中継車と、中継所や放送センターなどを経て、約5時間の生放送を行った。

その中継車の2号車を担当したのが「地球を笑顔にするくるま」で、世界初の水素中継車となる。これはTBSが2020年秋にSDGsキャンペーン「地球を笑顔にするWEEK」をスタートして以来パートーナー企業として共にSDGsを推進してきた、トヨタ自動車と開発した車両だ。

マイクロバスの『コースター』をベースに、動力源には『MIRAI』に搭載されているFCスタック(水素を使って発電する燃料電池)を採用し、走行時CO2や大気汚染物質を排出しない優れた環境性能と、低騒音・低振動を実現。環境省の「脱炭素社会構築に向けた再エネ等由来水素活用事業」にも採択されているという。

駅伝やマラソンではランナーや沿道で応援する観客に対して、環境ストレス軽減に繋がると期待されている。実際には、中継車とランナーの間はかなり距離があり、直接排ガスを吸い込むことはそう多くないと考えられるが、CO2を一切出さない水素を使ったFCEV(燃料電池自動車)ならば排ガスという概念自体がなくなる。

このFCEVの仕組みを使い、MIRAIに搭載される水素タンクを4本(水素貯蔵量9.7kg)をコースターの下部に搭載し、航続は約380kmとなっている。今回のレース距離は100kmなのでかなり余裕のある状況だと言える。

通常のコースターであれば直列4気筒4.0Lディーゼルエンジンが搭載されているが、この「地球を笑顔にするくるま」はエンジンを搭載しておらず、FCスタック1基、最高出力134kW/182PS、最大トルク300N・m(34.2kgf・m)を発生させ、全長7.025×全幅2.130×全高3,130mm、車両総重量5,460kgの車体を動かすほかに、車内積まれている放送機材の電源も、このFCスタックで作られた電気を使っている。

実際に運転したドライバーによると、「エンジンを搭載していないので、車内が静かなのと振動がなくてとてもスムーズに走ることができた。車体下に水素タンクを積んでいるため踏切を越える時に少し不安を感じたが、実際には十分な地上高があるので何も問題が無かった。一番良く感じられたのは、選手の走りによって、中継車が距離を取るために前後に加減速をするときがあるが、アクセルを踏めばスッと加速してくれる、これが今までのディーゼルエンジン車と違うところだった」と感想を語った。

TBS関係者も「トヨタとの繋がりができたことにより実現した車両です。マイクロバスベースで開発したことにより、車内の機材の配置をあるていど自由に置き換えることができるため、今回のようなロードレースで走ることもできるし、基地としての中継車として使うこともできる。マルチに使うことができるのが特徴です」と語る。

また群馬県庁内の展示スペースには「地球を笑顔にするくるま」の製作過程や水素で車が走る仕組みをわかりやすく説明したパネルも展示された。

実際にコースサイドで音を聞いていてもまったく音を感じとることはできなかったほど静かな走りを見せていた。今後このような車両が増えれば駅伝やマラソンなどでも、排気ガスを気にせず走ることができることになるかもしれない。

なお、ニューイヤー駅伝はHONDAが4時間48分06秒で優勝し、昨年に引き続き連覇を達成した。

《雪岡直樹》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集