新連載[スピーカーの鳴らし方・大研究]デッドニングにこだわる

「デッドニング」用部材の一例(フェリソニ・C-1)。
  • 「デッドニング」用部材の一例(フェリソニ・C-1)。
  • アウターパネルへの「制振・吸音作業」の施工例。
  • インナーパネルへの「制振作業」の施工例。
  • 「デッドニング」用部材の一例(フェリソニ・DS-1.5WP)。
  • 「デッドニング」用部材の一例(フェリソニ・S-1)。

スピーカーは「音の出口」だ。ゆえに、「何を使うか」によって最終的なサウンドクオリティが変化する。そしてさらには「どう鳴らすか」でも結果が変わる。当特集では、そこのところを掘り下げている。今回は、「デッドニング」について考えていく。

◆「デッドニング」とは、ドア内部の音響的なコンディションを整えるための作業!

最初に、「デッドニング」とは何なのかを説明していこう。ひと言で言うなら以下のとおりだ。「クルマのドア内部の音響的なコンディションを整える作業」だ。なお「デッドニング」はDIYにて行われることも少なくないが、今回の記事では「カーオーディオ・プロショップ」にて施される場合の「デッドニング」について説明していく。

さて、なぜにこのような作業が必要になるのかというと…。

まずは、ホームオーディオ用のスピーカーを思い浮かべてほしい。店頭に並べられているスピーカーは普通、スピーカーユニットが箱に取り付けられた状態で完成品となっている。つまり箱も含めてスピーカーであり、その箱にもメーカーの英知が注がれている。

対してカーオーディオではドアが箱の役割を果たすのだが、クルマのドアはスピーカーとしては設計されていない。なので音響的なコンディションがよろしくない。それを改善するために「デッドニング」が行われるのだ。

なので「デッドニング」は、スピーカーを交換する際には必ずセットで行いたい。そうしないと、交換するスピーカーの性能を引き出しきれないからだ。

アウターパネルへの「制振・吸音作業」の施工例。アウターパネルへの「制振・吸音作業」の施工例。

◆音にこだわるならフルメニューを。しかし、段階を踏むのはアリ!

ただし、どこまでやるかはオーナーの考え方次第だ。もちろん、最初からフルメニューを行った方が音への効果は大きい。しかし、段階を踏むのはアリだ。むしろそれを薦める「カーオーディオ・プロショップ」もある。

その心は以下のとおりだ。段階を踏むことで都度音の進化を楽しめる。また、それぞれの作業の効果も体感できる。結果、より深くカーオーディオの面白さに触れられる。

ちなみにいうと、スピーカーを交換せずにまずは「デッドニング」のみを行っても面白い。それだけでも確実に音が良くなり、「デッドニング」の効果のほども確認できる。

では、「デッドニング」ではどのようなことが行われるのかを詳しく紹介していこう。

ただし、細かくは各「カーオーディオ・プロショップ」ごとで異なる。というのも「デッドニング」は奥深く、考え方やセオリーがさまざまあり実践される内容が少しずつ変化する。各店ごとで積み上げられた経験と理論により、それぞれにとってベストなやり方で「デッドニング」は行われている。

インナーパネルへの「制振作業」の施工例。インナーパネルへの「制振作業」の施工例。

◆スピーカーの裏側から放たれる音による影響をコントロール!

とはいえ、幹となる作業内容は大きくは変わらない。ざっくり、以下のようなことが行われる。「背圧の処理」、「アウターパネルの制振」、「サービスホールの閉塞」、「インナーパネルの制振」、「内張りパネルへの処理」、以上だ。

それぞれがどのような作業なのかを説明していこう。まず「背圧の処理」とは、スピーカーの真裏にて行われる吸音・拡散・制振作業のことを指す。スピーカーは振動板を動かすことで空気を震わせて音を伝えるわけだが、その営みはスピーカーの裏側でも行われている。そしてその裏側から放たれる音エネルギーのことが「背圧」と呼ばれていて、これがさまざな悪さをしでかす。なので、まずはそれを小さくしたり散らすことが目指される。

そしてドア内部の鉄板は薄く、背圧の影響を受けて簡単に共振し異音を放つ。それを抑える作業が、アウターパネルとインナーパネルの両方に施される。

またインナーパネルには「サービスホール」と呼ばれるメンテナンス用の穴が開けられているのだが、その穴から「背圧」が表側に回り込むと表側の音を劣化させる「キャンセリング」と呼ばれる現象が引き起こされる。それを防ぐべく、サービスホールが塞がれる。

さらに、内張りパネルのコンディションも整えられる。共振が抑え込まれたり空間に吸音材が貼られたりする。これにて「デッドニング」のフルメニューが完成する。

今回は以上だ。次回以降もスピーカーの性能を引き出すためのテクニックをさまざま紹介していく。お楽しみに。

《太田祥三》

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