【インタビュー】立ち往生が発生しやすい大型車の特徴は?…国交省が往生防止に向けて対策を強化

冬用タイヤ・チェーンに関する注意事項をまとめたパンフレットの一部
  • 冬用タイヤ・チェーンに関する注意事項をまとめたパンフレットの一部
  • 国土交通省 自動車局 安全政策課 安全監理室長の渡邉敬さん
  • 国土交通省 自動車局 安全政策課 安全情報係長の千葉友樹さん
  • 国土交通省 自動車局 審査・リコール課 ユーザー情報企画調整官の田村大輔さん
  • 冬用タイヤ・チェーンに関する注意事項をまとめたパンフレット
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近年、大雪時の車両の立ち往生が問題となっている。特に被害が大きかったのが、2020年に関越道・北陸道で発生した大規模な車両の滞留。これを受け、国土交通省は立ち往生の原因と思われる車両に対して、追跡調査を行うなど対策を強化している。

2021年1月には、バス・トラック事業者に対して、使用限度を超えた冬用タイヤの使用を禁止とし、安全性を確認することをルール化した。今後、運送事業者やドライバーが注意するべき点について、話を聞いた。

国土交通省 自動車局 安全政策課 安全監理室長の渡邉敬さん国土交通省 自動車局 安全政策課 安全監理室長の渡邉敬さん

―2021年1月の改正の概要とは。

渡邉(国土交通省自動車局安全政策課安全監理室長。敬称略)「大雪による自動車の滞留は数年おきに問題となっています。こうした流れの中で、昨シーズンに関越道・北陸道で大規模な車両の滞留が発生しました。これらを受け、大雪への警戒を周知するだけではなく、大雪の際の運送事業者の対応をさらに推し進めるため、昨年1月26日に『貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用』『旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用』の一部改正を実施しました」

今回の改正では、点検整備において整備管理者が雪道を走行する事業用自動車のタイヤの溝の深さがタイヤ製作者の推奨する使用限度を超えていないことなどの点検を行うこととしました。また、『異常気象』の具体例として『大雪』を明記し、運行管理者は、雪道を走行する可能性のある場合には、必要な措置として、運行前点呼時に、日常点検において冬用タイヤの安全性が確認されていることを再度確認しなければならないことを明確化しました」

―改正で気を付けるべきポイントとは。

渡邉「雪道を走行する可能性がある場合には日常点検における冬用タイヤの状況を確認することが必要であり、整備管理者と運行管理者が連携して輸送の安全を確保するための措置を講じなければなりません」

田村(国土交通省自動車局審査・リコール課ユーザー情報企画調整官。敬称略)「日常点検時の冬用タイヤの評価方法として、プラットフォームが主な目安になっています。プラットフォームは溝の深さが新品時の50%(使用限度)の位置にあるものです。これ以上摩耗したものは冬用タイヤとして使用できないことを示しています」

国土交通省 自動車局 安全政策課 安全情報係長の千葉友樹さん国土交通省 自動車局 安全政策課 安全情報係長の千葉友樹さん

―行政が営業所に出向いて冬用タイヤ装着の確認をすることはできるか?

千葉(国土交通省自動車局安全政策課安全情報係長。敬称略)「冬用タイヤを装着しているかどうかを我々行政が日常的に確認することは難しいです。許可を受けている運送事業者は、輸送の安全を確保する責任があり、運行管理者という国家資格を所有している者を営業所ごとに選任しなければなりません。その運行管理者が日々の確認をすることとなります。行政としては、監査において事後チェックを行うことで、法令遵守のための体制を整えています」

―冬用タイヤ未装着運送車両・摩耗未点検に対する行政処分の内容は?

渡邉「雪道において冬用タイヤをつけていなかったこと等により滞留した場合には、「異常気象時等における措置」違反として処分の対象になります。この場合まず、道路管理者より滞留した旨の通報があり、その事実が確認された場合は、運送事業者の営業所に監査が入ることとなります」

国土交通省 自動車局 審査・リコール課 ユーザー情報企画調整官の田村大輔さん国土交通省 自動車局 審査・リコール課 ユーザー情報企画調整官の田村大輔さん

―過去に大幅な立ち往生が発生したエリアは。

渡邉「国土交通省のHPでも情報を纏めて公開していますが、2020年12月には関越道で約2100台もの大規模な立ち往生が発生し、北陸道でも年明けの大雪で約1600台の車両が立ち往生しました。そのほか昨シーズンは、中部縦貫自動車道、東海北陸自動車道、下道では国道8号などでも立ち往生が発生しました。一方で、このような普段から積雪の多い地域以外、例えば新東名高速道路や首都高の中央環状線などでも、過去5年で立ち往生が発生しています。いつどこで状況が変化しても対応できるよう、常に備えておくことが大切です」

―立ち往生しやすい車両の特徴は?

田村「大型の一軸駆動車や連結車が多いですね。そのほかにも、年式の古い車両は駆動の回転を調節するトラクションコントロールが付いていないため、立ち往生しやすい傾向があります。また、荷物が入っていない状態、いわゆる空荷状態のトラックも危険性が高いです。これらのデータは、昨シーズンの大雪を受けて発足した『大雪時の車両の立ち往生防止対策に係るタイヤの技術的分析・検討を行う勉強会』にて、自動車メーカーやタイヤメーカー、大学教授などからお話を伺ってまとめたものです」

―冬用タイヤ装着義務についての周知は進んでいますか?

田村「国土交通省としては、今後も勉強会での議論をもとに作成したチラシとパンフレットにより、全日本トラック協会や運送事業者団体を通じて周知し、一層の啓発を図ってまいります」

《保知 明美》

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