もしナビソフトが恣意的な経路を案内したら?…ナビタイム勉強会

私の行くとこ、どこでしょう?
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ナビタイムジャパンは、関係者向けの勉強会を適宜開催している。「オンライン モビリティ勉強会~経路探索編~」と題したトークセッションが12月14日に開催された。パネリストはヴァル研究所 CTO 見川孝太氏、ナビタイムジャパン MaaS事業部 部長 森雄大氏の2名だ。

ナビタイムジャパンについて説明は不要かと思うが、駅の乗り換え案内アプリに始まり、現在は徒歩、自転車、鉄道、自動車など移動全般をシームレスに案内するサービスを展開している。ヴァル研究所は創業46年、30年以上前に「駅すぱあと」という経路探索ソフトを開発し販売していた会社。現在はアプリ、ウェブ版とサービスを広げ、ヤフーの経路探索のエンジンはヴァル研究所の駅すぱあとがベースとなっている。

勉強会のテーマは「日本におけるMaaSの課題や可能性」「経路探索事業者の悩みや要望」「IT側がもっと頑張らなければいけないところ」の3つでトークが進んだ。内容は交通事業者、MaaSサービスプロバイダーなで業界関係者向けのものだったが、トークの一部はドライバーや自動車業界にも関わるものだった。参考になりそうなトピックを紹介したい。

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◆経路探索側の課題や可能性

最初のテーマ、業界の課題や可能性について森氏は「技術とサービスの広がりから可能性を感じている。MaaSという言葉もメディアでみることが普通になった。実証実験やまちづくりで公金プロジェクトも盛んで市場の盛り上がりを感じる」とした。その一方で、「事業者どうしのノウハウ共有が不十分で、成功事例、失敗事例などを無駄にしない業界横断の連携が課題」とみている。

見川氏もほぼ同意見で「異業種からの注目の高まりと参入も増えている点は、MaaSや経路探索の可能性はまだあると思っているが、これは課題も多いということでもある。ITレベル、実装レベルそれぞれに課題が残っている。また、MaaSのサービスシーンを捕らえ切れていないことも感じている。」とする。

両者ともMaaSや経路探索について技術や応用の伸びしろはまだあるという認識だ。

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◆動的探索やシームレス配車の課題

可能性とチャレンジの部分では、動的経路探索と経路案内と予約・配車の連携技術についてトークが及んだ。動的経路探索とは、渋滞やダイヤの遅れなどリアルタイムの運行状況などを反映した経路探索のことだ。

これについては、両氏とも「機能としては対応している。技術的な問題はない」とするが、「運行状況の情報は交通事業者から得るしかないので、すべての路線、事業者、混雑状況まで把握することは難しく、反映できる情報はあくまで提携している事業者の路線などに限られる」という回答だ。

経路案内から実際にタクシー手配やきっぷの予約をする場合、現状はタクシー会社や配車サービスサイト、予約サイトにリンクで飛んで手続きを行うものが主流だ。これをもっとシームレスにできないかという課題だ。現状、リンクで飛んだ先でもう一度時間や経路情報などを入力しなければならない。この連携ができると利便性が高まる。

「技術的な問題よりも、シームレスな予約手配について事業者側がビジネスメリットを認識できるかどうかが重要。その説得のためのデータが提供できないと、連携できる先は増えない」(見川氏)

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◆経路探索は手段であって目的ではない悩み

経路探索事業者の悩みは「経路探索はあくまで手段であって目的になりえない」という点だと両名とも吐露する。MaaSの課題でもあるが、利用者の目的は、どこに行く、そこで何をする、何をしたいか、である。経路を調べるのはそのための手段のひとつでしかない

サービスや機能を設計する上で、ここをどうフォローするのかが難しいそうだ。ただし、この部分をフォローするとなると、経路探索という機能だけで考えていてはだめだ(見川氏)。たとえば、「1日に数本しかバスがないような地域の交通事業者は経路探索をどう利用すればいいのか」という参加者の質問に、森氏は「事業者の持つデータや経路探索が持つデータを解析すれば、ダイヤやバス停位置の最適化などの提案ができると思う」とした。見川氏は「交通事業者と我々のデータや知見をもちよれば、たとえば貨客混載のようなソリューションに役立てることができる」見ている。

MaaSという視点では、経路探索を手段のひとつとして完結させるのではなく、交通機関利用者の移動目的を助けるツールやプロセスにうまく組み込む必要がありそうだ。

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◆アルゴリズムは中立

参加者からは、経路探索の結果が人々の行動に影響することはないのか、という質問も出された。たとえば、グーグルのルート案内は、実際に人やクルマが通った道の情報を利用している。本来は私有地である場所(コンビニの駐車場など)や、道ではないが地元の人がショートカットしているような場所を、グーグルはルートとして案内することがあった。これとは逆に、経路案内のソフトが恣意的な路線や経路を案内することで、利用者を誘導する結果になることがあるのか。

もちろん両者とも、経路探索事業者がそのようなアルゴリズムを実装することはないと否定した。そうならないアルゴリズムを目指して開発を行っているという。逆に、そのような処理を加えた場合、利用者の信頼を落とすことになり結果的に利用してもらえなくなる。自分の首を絞めるようなアルゴリズムは実装しない

恣意的な操作ではないが、一般的な路線案内や経路探索は移動時間や距離の最適化を優先させるが、観光MaaSのような場面では、このロジックが当てはまらない。寄り道、遠回り、あるいは電車で景色を眺める、珍しい駅や列車に乗るといった体験を優先させる必要がある。

このような用途では、あらかじめ用意したルートを提案したり、経路探索のための経路の重みづけや評価を変えたりする必要がある。カーナビもこのような機能を実装する時代がくるかもしれない。

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《中尾真二》

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