【ホンダ 将来安全技術】2050年交通事故死者ゼロ…人研究やAIなど活用

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ホンダは2050年に全世界でホンダの二輪車および四輪車が関与する交通事故死者ゼロにするという目標実現に向けて開発中の先進安全技術の一部を報道陣に公開した。

本田技術研究所先進技術研究所で安全安心・人研究領域を統括する高石秀明(※)エグゼクティブチーフエンジニアは「従来の安全は衝突や事故回避を主とした一律の技術や教育を提供していきたが、新しく提供する価値は日常運転での安心に注目し、一人ひとり違う、状況によって異なるニーズに応えるもの」と説明。※高ははしごだか

その上で「この一人ひとりに合わせた安心を高め、その集合体である社会の安全の総量を拡大することで、交通事故死者ゼロの社会を実現していく。そのために人に寄り添い、ともに進化する知能化されたモビリティ社会の実現を目指していく」と強調した。

ホンダは2050年交通事故死者ゼロ実現にあたり、まず2030年にホンダ車が関与する交通事故死者数半減を目指す中間目標を示した。この中間目標に対しては先進国と新興国それぞれに異なるアプローチで達成を目指すという。

先進国での取り組みについて高石氏は「2030年ホンダ4輪が関与する1万台あたりの交通事故死者数を半減することを目指していく。これは新車だけではなく2030年に市場に現存するホンダ4輪を対象にしている。これを実現するために死亡事故の起きたシーンのすべてをカバーする技術を2030年までにすべての4輪へ展開していく」と述べた。

高石氏によると「事故分析からどの技術がどのような効果を出すかを推定しており、死亡事故の62%はホンダセンシングの進化と普及で削減」できるとし。残る38%に関しては「歩行者保護、衝突性能の強化、さらには先進事故自動通報の進化により削減していく」方針。

このうち衝突性能の強化では「リアルワールドでの衝突を想定した斜め衝突対応エアバッグや小型車への搭載も可能にする2輪エアバッグの開発を進めていく」ことを明かし、開発中のエアバッグが報道陣に公開された。

一方、新興国でのアプローチに関しては「ホンダ2輪、4輪が関与する1万台当たりの交通事故死者数を半減することを目指していく。こちらも新車だけではなく2030年市場に現存するすべてのホンダの2輪、4輪を対象にしている。これを実現するため、2030年までに2輪、4輪双方への投入可能な技術をすべての機種へ展開、またすべての人に安全教育の機会を提供することを目指す」と述べ、とりわけ安全教育の重要性を指摘した。

このため「従来の実技トレーニングを中心にした教育の強化に加え、普及を加速するためにスマートフォンを用いて提供する安全運転教育技術の開発を進めていくことで、2030年までにホンダのお客様を含めたすべての人の安全教育の機会を提供していきたい」との方針を示した。

最終目標である2050年交通事故死者ゼロに向けて高石氏は「ドライバーによる明らかに誤った運転操作に起因する事故まで対処する必要がある」とした上で、「そこでホンダは未開拓領域である人の運転行動、体調変化、心理状態を徹底的に研究し、事故を引き起こすヒューマンエラーゼロを目指すことに着手していく。ここまでやらなければ真の交通事故死者ゼロは達成できないと考えている。これが世の中を先駆けるホンダ安全の独自の取り組みとなっていく」と強調した。

このため「ひとり一人に合わせた安心を提供する、運転時のヒューマンエラーゼロを目指す知能化運転支援技術」および「すべての交通参加者との共存を可能にする、人、モビリティ、インフラが通信でつながることで多様なリスクを回避する安全・安心ネットワーク技術」を開発することで「2050年に全世界でホンダ2輪、4輪が関与する交通事故死者ゼロの実現を目指す」という。

まず知能化運転支援技術では「従来の運転支援はリスクに直面してから回避するものだったが、AIがドライバーの認知状態、交通シーンを理解し予測判断することで、先読みしたリスクをドライバーに伝えることにより、早期に自ら安全行動することに導く。これによりリスクに近づかない、リスクを見落とさないことを可能にしていく。この技術は2020年代前半に要素技術を確立、2020年代後半の実用化を目指していく」とした。

一方の安全・安心ネットワーク技術は「交通事故死者ゼロを可能にするためには、すべての交通参加者に対象を広げていく必要がある。ホンダ独自の人研究により、すべての交通参加者の行動、状態を推定し、その情報を統合的に判断することで道路環境におけるリスクを予兆する。この先読みしたリスクをそれぞれの交通参加者の状況に合わせて知らせることで、事故が起こりうる手前で未然に回避行動を促す。それぞれの交通参加者の状態と交通シーンに応じた適切な情報を提供することで、誰もぶつからない交通社会の実現を目指していく」と高石氏は解説。

その上で「この技術は2030年以降の社会実装に向け、2020年代前半にホンダが先駆けてシステム構築、効果検証を完了させ、2020年代後半に標準化することを目指し、業界、官民一体での取り組みを加速していきたい」と述べ、競合他社や異業種、さらには行政との連携の必要性も語っていた。

《小松哲也》

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