[カーオーディオ用語解説2021]システム…「バイアンプ接続」というワード

「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されているスピーカーの一例(ダイヤトーン・DS-G400)。
  • 「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されているスピーカーの一例(ダイヤトーン・DS-G400)。
  • 「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されているスピーカーの一例(カロッツェリア・TS-V173S)。
  • 「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されているスピーカーの一例(ロックフォード フォズゲート・T2652-S)。

「カースピーカー」や「メインユニット」のカタログを見ていると、専門用語が多々目に入る。初心者にとってはそれらが難解で、壁を感じることとなる…。当特集はその壁を取り払うことを目指して展開している。今回は、「バイアンプ接続」というワードを取り上げる。

「バイアンプ接続」とは、「パッシブクロスオーバーネットワーク」を使って実践する特殊な接続方法!

「バイアンプ接続」とはスピーカーに付属している「パッシブクロスオーバーネットワーク(以下、パッシブ)」を用いた、特別な接続方法のことを指す。そしてこの接続方法を実践するためには、「パッシブ」がこれに対応した仕様となっている必要がある。

まずは「パッシブ」について説明しておこう。これについては以前の記事の中でも説明しているのだが、簡単におさらいすると以下のとおりだ。「パッシブ」とは、音楽信号の帯域分割を行うパーツだ。「セパレート2ウェイスピーカー」を鳴らす際には、フルレンジの信号をツイーター用の高音とミッドウーファー用の中低音とに分割する必要があり、「パッシブ」はそれを行うためのものだ。

で、通常の「パッシブ」には入力端子が1系統しか備えられていないが、「バイアンプ接続」に対応している「パッシブ」には、入力端子が2系統備えられている。「ツイーター」用の入力端子と「ミッドウーファー」用の入力端子、これら2つを装備している。

さて、このような仕様となっている「パッシブ」を用いて、どのように接続されるのかを具体的に説明していこう。「メインユニット」の「内蔵パワーアンプ」を使ってスピーカーを鳴らす場合を例に、解説していく。

「メインユニット」の「内蔵パワーアンプ」は普通、4ch仕様となっている。そして通常の「パッシブ」を使ってスピーカーを鳴らす場合には、以下のような接続方法が取られる。「内蔵パワーアンプ」のフロントの右ch出力を右側のスピーカーの「パッシブ」の入力端子に接続し、フロントの左ch出力を左側のスピーカーの「パッシブ」へと接続する。

「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されているスピーカーの一例(カロッツェリア・TS-V173S)。

「バイアンプ接続」を実行すると、「スピーカー」の性能をより一層引き出せる!

対して「バイアンプ接続」では、以下のように接続される。リアの右ch
出力を「バイアンプ接続対応パッシブ」のツイーター用の入力端子に、フロントの右ch出力を右の「パッシブ」のミッドウーファー用の入力端子に、リアの左ch出力を左の「パッシブ」のツイーター用の入力端子に、フロントの左ch出力を左の「パッシブ」のミッドウーファー用の入力端子にそれぞれ接続する。つまり、「内蔵パワーアンプ」の4ch分の出力をすべて、フロントスピーカーを鳴らすために使い切る。

なお、「パッシブ」とは信号を帯域分割するための装置だと説明したが、「バイアンプ接続」される場合には、仕事内容が少々変わる。そもそも2系統の信号が入力されるわけなので、信号を2つに分ける必要はなくなる。そのかわり、不要な成分をカットするという役割を担う。ツイーター用の入力端子から入れられた信号については中低音をカットし、ミッドウーファー用の入力端子から入れられた信号については、高音成分をカットする。

さて、何のためにこのような接続方法が取られるのかと言うと…。答はズバリ、「スピーカーの性能を一層引き出すため」だ。

先述したように「内蔵パワーアンプ」の4chすぺてをフロントスピーカーに割り振ることとなるのだが、この状態はつまり、前回の記事で解説した「マルチアンプシステム」を組んだときと同様の状態だ。「内蔵パワーアンプ」の1ch分のパワーを1つの「スピーカーユニット」に注げるわけなので、よりパワーをかけて、そして余裕を持ってスピーカーをドライブできる。これが音に効いてくる。

さらには、「パッシブ」を普通に使うときと比べて「パッシブ」内での信号の流れもシンプル化する。「ツイーター」用の信号の流れと「ミッドウーファー」用の信号の流れがそれぞれ独立するからだ。結果、各信号が干渉しにくくなる。このことも音質向上に好影響をもたらす。

「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」が付属されているスピーカーの一例(ロックフォード フォズゲート・T2652-S)。

「バイアンプ接続」を実行すると、サウンドチューニングの面でも利点を発揮!?

ところで「マルチアンプシステム」では、各スピーカーを緻密にコントロールできる。そのこともメリットだと前回の記事の中で解説したが、「バイアンプ接続」ではそのメリットは得られない。なぜなら「バイアンプ接続」は、「メインユニット」に高性能な「プロセッサー」が搭載されていない場合に取られる接続方法だからだ。つまり「バイアンプ接続」とは、高性能な「プロセッサー」がなくても「マルチアンプシステム」と同じようにパワーアンプを贅沢に使える接続方法なのである

しかし条件が整うと、「バイアンプ接続」はチューニング面でも利点を発揮する。条件とは、「メインユニット」に簡易的なタイプの「タイムアライメント」機能が搭載されていること、だ。

「タイムアライメント」とは、スピーカーの発音タイミングを変更できる機能だ。クルマの中ではリスニングポジションが左右のどちらかに片寄るので、各スピーカーから放たれる音の到達タイミングがズレてしまう。しかし「タイムアライメント」機能を用いれば、近くにあるスピーカーの発音タイミングを遅らせられるので、到達タイミングを揃えられる。

で、簡易的な「タイムアライメント」機能では、フロントの左右、リアの左右、これに対して「タイムアライメント」をかけることとなるのだが、ツイーターとミッドウーファーの個別制御は行えない。ツイーターとミッドウーファーを“1つのスピーカー”として扱うわけだ。

しかし「バイアンプ接続」を実行すると、「タイムアライメント」機能を1つ1つのスピーカーに対してかけられるようになる。「内蔵パワーアンプ」のそれぞれの出力が各スピーカーユニットとダイレクトに繋がるからだ。

このように「タイムアライメント」機能が簡易的なタイプであった場合には、「バイアンプ接続」を実行することで、一層のメリットを手にできる。覚えておこう。

今回は以上だ。次回以降も難解な専門用語を詳しく解説していく予定だ。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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