JR東日本とNTTドコモは1月28日、新幹線試験電車の360km/h走行時における第5世代移動通信方式(5G)による通信に成功したと発表した。
両社は、2020年10月から12月にかけて、東北新幹線仙台~新青森間の一部区間において、新幹線試験車両『ALFA-X』を使用しての5G通信実験を行なった。
高周波数帯を用いる5Gを高速鉄道で利用するには、音源が動く際にその周波数が変化する「ドップラー効果」と呼ばれる現象や、線路周辺の遮蔽物の影響を避けられず、通信品質が不安定になる問題があった。
今回の実験では帯域幅100MHzの4.85GHz周波数帯を用いて、移動局を車内に、基地局を線路沿いに900m間隔で2カ所設置。約5kmの通信範囲で、最大通信速度は移動局で受信時500Mbps以上、送信時100Mbps以上を達成。「ハンドオーバー」と呼ばれる移動中の基地局切換えも、通信速度を落とすことなく行なうことができたほか、双方での4Kと8Kによる高精細映像の安定した伝送やストリーミング再生にも成功。約30分間の4K映像を1分程度でダウンロードすることもできたという。
これまで高速鉄道における5Gの通信実験は、2019年8~9月に東海道新幹線で行なわれた実験で283km/h走行時に成功した例があったが、東北新幹線での実験はその記録を大幅に塗り替えるものになった。
今回の実験結果を通してJR東日本とNTTドコモでは、高速鉄道でも安定した5G通信が実現できることを確認。「今後も高速鉄道環境での快適なモバイル通信と付加価値の高い移動空間の提供をめざして取り組んでまいります」としている。
実験に使用された『ALFA-X』は、「さらなる安全性・安定性の追求」「快適性の向上」「環境性能の向上」「メンテナンスの革新」という4つのコンセプトを基に開発された次世代新幹線車両で、2019年5月に落成した。
その名は「最先端の実験を行うための先進的な試験室(車)」を意味する「Advanced Labs for Frontline Activity in rail eXperimentation」を略したもので、正式にはE956形と呼ばれる。
10両編成の先頭車は、トンネル突入時の圧力波を抑制するため、先頭長は東京寄りの先頭車(1号車)がE5系よりやや長い約16m、新青森寄りの先頭車(10号車)がE5系より大幅に長い約22mで、環境性能が比較されている。
2022年3月まで走行試験が行なわれる予定となっており、最高速度は360km/hだが、400km/hでの走行も視野に入れている。