リターンには115系の部品取り体験なども…しなの鉄道が新型車導入の資金調達にファンドを活用へ

2020年7月から運行を開始した有料快速用のSR1系。車体色は「沿線に爽やかな新風を」をコンセプトに、ロイヤルブルーと115系のDNAを承継したというシャンパンゴールドの組合せとなり、側面には山並と清流を表現した緑と水色のラインが入っている。
  • 2020年7月から運行を開始した有料快速用のSR1系。車体色は「沿線に爽やかな新風を」をコンセプトに、ロイヤルブルーと115系のDNAを承継したというシャンパンゴールドの組合せとなり、側面には山並と清流を表現した緑と水色のラインが入っている。
  • 3月13日のダイヤ改正から運行を開始する一般列車用SR1系のデザイン。「地域に寄り添い、その先の未来へ」をコンセプトに、しなの鉄道社員が地域に寄せる「情熱」「温かさ」を表わしたという赤をベースに、「地域の未来へ挑戦していく姿勢」を表現したというゴールドのラインを配置。両端の曲線は地域を包み込む「やさしさ」、中央のラインは沿線の地域をひとつにつなぐ、力をあわせるといった意味合いが込められている。

しなの鉄道とミュージックセキュリティーズ株式会社(MS社)は1月6日、しなの鉄道の新車導入へ向けた資金調達でファンドを活用することを明らかにした。

しなの鉄道では2020年7月から115系に代わる新型車両としてSR1系を導入。現在は有料快速用の2両編成3本が投入されているが、3月13日に実施されるダイヤ改正では、一般列車用の2両編成4本も投入されることになっており、全列車の約3割がSR1系に置き換えられる。

同車は当初、26本52両が導入される計画だったが、最終的に23本46両が導入されることになり、その費用は国が3分の1、長野県が6分の1、沿線市町が6分の1、しなの鉄道が3分の1を負担。車両の付帯設備については、しなの鉄道が全額負担するとされている。

しかし、しなの鉄道では「自治体にかかる損失補償のリスク軽減につながる新たなリスクマネーの調達で、県民や市民の皆様の負担軽減にもつながる」として、今回、資金調達の一部に金銭的リターンに留まらず、社会や環境にもリターンを生み出す案件へ投資する「インパクト投資」を活用。「ブレンド・ファイナンス」と呼ばれるリターン手法で調達するとしている。

「ブレンド・ファイナンス」は投資家によって期待するリターンが異なる点を踏まえたもので、たとえば鉄道マニアからの投資に対しては、115系の部品取り体験とオリジナルグッズがセットになったプランを用意するなど、期待に応じてリターン内容を変えることで、資金調達を有利にできる利点がある。

またSR1系は、115系比で40%の消費電力(2両編成1kmあたり)、年間約160tのCO2削減につながるとしており、46両すべてが導入されれば、年間のCO2削減量は約3600t以上と予想されており、この点でインパクト投資の理念や、脱炭素社会の実現を含む持続可能な開発目標である「Sustainable Development Goals(SDGs)」、財務状況のみならず、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素を考慮した「ESG投資」に叶うとされている。

募集は1月14日から開始され、個人から3000万円、機関投資家などの法人から2000万円の計5000万円を調達することを目標とする。第三セクターの鉄道事業者が新型車両を導入する際にファンドを活用する例は、国内で初めてのことだという。

パートナーとなるMS社は東京都千代田区に本社を置く投資会社で、しなの鉄道が沿線の活性化協定を締結している三菱地所との縁が深いことから、同社の仲介により、MS社との連携が実現することになったという。

三菱地所とMS社はこの資金調達について「ファイナンスを通じて鉄道における環境性能の向上に寄与するとともに、地域の足である第三セクター鉄道会社を支え、関係人口増加や地域活性化につなげてまいります」としている。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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