アルプスアルパインが「デジタルキャビン」を初展示、ブレード構成で統合ECUを実現するHPRAも…CEATEC 2020

デジタルキャビン
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  • 大型局面ディスプレイ
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  • 次世代ドアトリム
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  • 天井大型ディスプレイ
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日本版CESともいえるCEATEC 2020が20日より始まった。今年は完全オンライン開催となったが、DXブームに後押しされる形で356社もの出展申し込みがあり、このうち164社が新規参加という。初日はアクセス集中でサイトがダウンするほど盛況ぶりだ。とくに今年は自動車業界からの出展が目立つ。

アルプスアルパインは、電子部品・電子機器の老舗アルプス電気と、自動車ユーザーにはおなじみのアルパインが統合した会社で、コンシューマ向けの車載機器からOEMやサプライヤー向けの電装品、モジュールやコンポーネント、さらにはセキュリティソリューションをビジネスドメインとする企業だ。

同社は2020年の北米CESにおいて、「デジタルコックピット」というコンセプトで最新センサー技術やデバイス技術を投入した車内空間の展示を行っている。CEATEC 2020では、これを「デジタルキャビン」という名前で新しいソリューションも加えて出展している。そのブースの概要をお伝えしよう。

ブースは大きく3つのテーマに分かれている。一つはモビリティとオートモーティブ全般を扱うコーナー(「移動」を、「感動」へ Emotion in Mobility)。もう一つは、IoTやドローンを活用したスマートシティや防災事業関連(Toward a Safe and Secure Society)。3つ目はアルパインブランドでのビジネス(ALPINE Brand Business)。デジタルキャビンは一つ目のテーマの中の展示だ。

オンライン展示だが、チェックしておきたいのは、まずディスプレイ関係だ。車両のメインクラスター向けの「大型局面ディスプレイ」から見てみよう。曲面ディスプレイはコンシューマ製品ではまだ珍しい。参考展示だが、コックピットでの表示の視認性向上や安全性の向上に貢献できる。また、今後の自動運転カーや無人カーでは、さまざまな表示インターフェイスが予想される。曲面配置が可能なディスプレイはコックピットデザインの自由度を上げてくれる。

関連して、「次世代ドアトリム」という技術も面白い。ディスプレイの一種としてみなすことができるが、展示の中では「触覚インターフェイス」として紹介されている。見た目は木目調のドアトリムで実際の肌触りも凹凸がある。ここに窓の開閉ボタンなどが浮かび上がり、実際のスイッチとして操作できるというもの。インテリアのうち物理的なスイッチをなくしたい、必要なときだけスイッチにしたい、といったニーズに応えることができる。

原理はテクスチャーを伴う特殊印刷を施したフィルムパネルの裏側にタッチセンサー(静電容量型)とディスプレイを配置する。パネル越しでもタッチセンサーは感応できるので、ディスプレイにスイッチや操作パネルのグラフィックを表示させると、内装トリムにスイッチやボタンが現れる。内側はディスプレイにせず、ただのランプ類でもOKだ。この場合、パネルにマスクをすれば任意の形に光を透過させることができる。

「デュアルセルLCD」は、名前のとおり液晶パネルが2層になっている。1枚は通常の液晶ディスプレイで、もう1枚がディミングセルという黒を強調する液晶パネルという構成だ。これにより、液晶ディスプレイで有機EL並みの高コントラストが実現可能になる。クラスターパネルに使えば、メーター表示やナビ表示の昼間の視認性を上げることができる。一般的な映像ディスプレイとして使えば、暗い画面や濃い色の表現が広がるので、より高画質な映像が楽しめる。

液晶ディスプレイは暗い場面の表現が難しい。有機ELならばこの点が改善されるのだが、車載ディスプレイとして考えると温度条件から有機ELの搭載は難しい。

最後に取り上げるのは「HPRA(High Performance Reference Architecture)」。ユーザー向けの技術ではないが、CASE車両時代を見据えたECUの提案となっている。自動運転などが高度化するほど、現状の車載コンピュータやECUのモデルでは実装が困難になると言われている。現在、自動車には100から200もの何らかのプロセッサが搭載されており、基本的にこれらは別々に動作している。レベル3以上の自動運転では、クルーズコントロール、緊急自動ブレーキ、レーンキープなどを積み上げるのではなく、一つ(または少数)のECUが統合的に車両全体を制御する必要がある。

テスラはすでにこのアーキテクチャを採用しており、フォルクスワーゲンやトヨタは「ビークルOS」というような名前で類似のコンセプトを実装しようとしている。HPRAは、これに通じる統合ECUアーキテクチャのモデルだが、ハードウェアにブレード構成を導入している。ブレードとは、データセンター内のサーバーに採用されていたモデルで、小型の共通サーバーコンポーネントを一つの筐体にたくさん配置する方式を指す。限られたラックの中で、なるべく物理的なサーバー密度を上げるための手法の一つだ。

HPRAは、統合ECUのコンセプトを採り入れながら、エンジン、トランスミッション、電装系、インテリア制御などサブシステムごとにブレード構成にし、組み換えやアップグレードを容易にする。EVやCASE車両は、ソフトウェアアップデートで車両の性能アップも可能だが、それも搭載するハードウェアの範囲内でのことだ。とくにプロセッサアーキテクチャの進歩にはハードウェアのアップグレードが不可欠となる。HPRAは、メモリやプロセッサの世代交代にも対応できる可能性がある。また、自動運転やADAS機能がモジュール化・ブロック化しやすいので、メーカーオプションの細かい設定もしやすくなるかもしれない。

難点は、ブレード構成のためのラックを車両のどこに配置するかだ。おそらく座席下などが候補になる。EVならばトランスミッションなどがなくなったスペースを活用できるかもしれない。HPRAも参考出品段階なので、実際のハードウェアの大きさや細かい仕様(CANと車載イーサネットには対応)はこれからだという。例えばDINサイズにうまく適用できればセンターコンソールの奥が利用できる。薄型に作ればEVバッテリーのように床下に並べられるかもしれない。

《中尾真二》

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