貨物用でない車両で貨物を運ぶ交通機関は、結構多いです。
電車では新聞を運搬する「新聞列車」が有名ですし、宅配便の荷物を運ぶ路線バスもあります。

乗客減に悩む日本の航空会社が、一時的に乗客座席にマスク入りの段ボールを運んで空を飛ぶ、なんてこともありました。
タクシーも決して例外ではなく、人以外に荷物を運ぶようになりました。
今回は、タクシーによる料理の出前について紹介します。
タクシーによる配送について国土交通省が特例措置を開始
新型コロナウイルスの影響でタクシーの利用客は落ち込んでいて、運転手を解雇するタクシー会社も出てきました。
一方、巣ごもり需要によってネット通販・デリバリーは利用客が増えていますが、配送業者は忙しく手が足りていません。
このような需要と供給のミスマッチを解消すべく、国土交通省はタクシーによる配送を特例として認める措置を始めました。
5月13日まで実施予定で、タクシー会社の申請から2日程度で許可が出るそうです。
この特例措置により、タクシー業界は利益を得ることができ、飲食店は出前する人手を確保、利用客には選択肢が増えると、「三方一両得」となります。
すでにタクシーによる配送を実施しているところも
今回の特例措置開始前から、配送も行っているタクシー会社もあります。
仙台:タクシーによる料理デリバリー「タクデリ」を開始

宅配代行業者「ハミングバード・インターナショナル」と仙台中央タクシー株式会社は、2020年4月15日~8月31日の期間中、料理の配送サービス「タクデリ」をスタートさせました。

肉・オムライス・ピザ・カレーなど約50種類のフードメニューから選べ、青葉区・宮城野区・若林区・太白区・泉区が配達エリアです。
利用の流れは、以下の通りです。
1. 仙台中央タクシーの配車センターに電話し、「タクデリの注文」と伝える
2. 利用客の住所・氏名・電話番号、商品番号と個数を伝える
3. 配車センターから到着の電話が入る
4. タクシーの運転手に料金を支払う
合計2,000円以上から利用可能で、料理代金とは別に買い物代行料として500円がかかります。
支払いは現金だけでなくPayPayも利用可能です。
札幌:出前タクシー「食べタク」の実証実験

2020年4月17日より、札幌出前タクシー実行委員会では「札幌出前タクシー『食べタク』」サービスの実証実験を行っています。
5月1日をめどに本格始動し、新型コロナウイルス収束まで行う予定です。
利用の流れは、以下の通りとなります。
1. 利用客は、食べタクのサイトのメニューを見て飲食店に注文する
2. 利用客はタクシー会社に注文した飲食店名・賞品受取時間を連絡する
3. タクシー運転手は、飲食店にお金を立て替え、商品を受け取る
4. タクシー運転手は、利用客に商品を届けて代金を受け取る
支払いは現金のみで、料理代金以外に利用客は救援サービス料として、500円を支払います。
熊本県人吉市:「タクシーイーツ」を開始

熊本県人吉市のタクシー会社「つばめタクシー」では、ウーバーイーツならぬ「タクシーイーツ」のサービスを4月より開始しました。
市内6軒の飲食店が参加しています。
利用の流れは、以下の通りです。
1. タクシーイーツのメニューからメニューを選ぶ
2. つばめタクシーに電話をして注文内容と配達先を伝える
3. タクシー運転手が料理を指定の場所まで運ぶ
4. 料理代金とタクシー代を支払う
支払いは現金のほかQRコード決済が利用可能で、タクシー代は距離に応じて450円(777mまで)~1,090円(3,561mまで)となります。
つばめタクシーは料理の配達以外にも、
・ 病院の順番の受付
・ 調剤薬局の薬の受取
などもタクシー代だけで行ってくれる、御用聞きのようなタクシー会社です。
タクシーによる配送のメリット
タクシーで料理を配達してもらうのは、以下の点でメリットがあります。
タクシーを使って自分でテイクアウトするよりお得
車がない人は、「タクシーを使って料理をテイクアウトしよう」とも考えるでしょう。
ただし、そうなると自宅と飲食店の往復タクシー代だけで、1,000円以上はかかります。
タクシーによる配達なら、500円程度の手数料ですので、そちらを使った方がはるかにお得です。
料理を損ねず配達してくれる
ウーバーイーツなど自転車による出前代行を利用した際、届いた料理がぐちゃぐちゃになった経験はありませんか。
自転車なので路面の凹凸の影響を受けやすいですし、料理を入れるリュックは運転中若干斜めになっています。
その点、タクシーなら路面の凹凸もしっかりと吸収してくれるので、料理がぐちゃぐちゃになる可能性も低いです。
配達する人の信頼性が高い
ウーバーイーツの出前は、特に免許が必要なわけではなく、自転車さえあれば誰でもできます。
その点、タクシー運転手は地元の人たちによく知られており、下手なことをするとタクシー会社の信頼も落ちるので、運転手の信頼性は高く、確実に届けてくれるでしょう。
都市部以外でも利用可能
ウーバーイーツや出前館のサービスは、都市部が中心です。
郊外の地方ではなかなか配達してくれません。
地元のタクシー会社が出前代行も行っているのであれば、地方でも出前の注文ができます。

タクシーによる配送の注意点
ただし、タクシーによる配送には、以下のような注意点があります。
料金を対面で支払うことによる感染リスク
現在、配送を行っているタクシー会社では、料金の支払いを対面で行っています。
感染リスクを考えると前払いが望ましいのですが、なかなかそうもいかないようです。
利用客はマスクをして、おつりがないように現金を用意しておくといいでしょう。
特例措置は5月13日まで
今回の特例措置は、5月13日までです。
それ以降延長されるかは、新型コロナウイルス次第でしょう。
利用客は料理と一緒に乗ることができない
通常のタクシー料金と比較して、配送のタクシー料金はかなりお値打ちです。
だからといって、料理と一緒に利用客が乗っても、お得な料金は適用されません。
人を乗せる際には、基本的にメーター運賃が適用されるからです。
今後、料理の出前以外に広がる可能性も
タクシーが人だけでなく料理を運べるようになれば、売り上げの落ち込みが深刻なタクシー業界にとっては貴重な収入源となります。
同時に、出前をする人がいない飲食店にとってもありがたい制度です。
特例措置は5月13日までですが、新型コロナウイルスによっては延長の可能性もあります。
また、つばめタクシーのように、買い物代行などをするタクシー会社が増えてくるかもしれません。(執筆者:角野 達仁)