【川崎大輔の流通大陸】アセアンからの外国人自動車整備エンジニア その5

洗車中のベトナム人(アマギ)
  • 洗車中のベトナム人(アマギ)
  • 工場で働くベトナム人(小倉自動車)
  • ベトナム人技能実習生(アマギ)
  • ベトナム人の面接(アマギ)
  • 小倉社長(小倉自動車)

日本の少子高齢化でいえば、不足しているのは労働者だけでなく、若者そのものの数が急減している。すでに外国人なしでは日本の企業はやっていけない状況を直視しなければならない。そのためには、国として企業として彼らの受け入れる枠組みをどのようにしていくか本気で考える必要がある。

◆愛情と思いやりを持って接することが重要

株式会社小倉自動車(小倉 龍一社長、神奈川県座間市)は、創業50年の会社だ。鈑金塗装修理と車検のトータルカーメンテナンスを行っている。2019年1月より、ベトナム人塗装技能実習生2名が小倉自動車で働き始めた。2名のベトナム人たちは、メインが塗装業務で、そのほかに鈑金の下地作りなどの業務も行っている。

初めての外国人の受け入れに全く不安がなかったわけではない。「コミュニケーションに関しては従業員でも不安に思っていたようです。私自身も言葉は不安でした」(小倉社長)。だが、実際に受け入れてみると思った以上にコミュニケーションが取れることがわかったという。「受け入れ当初、我々が彼らベトナム人に近づいていかないとダメと思っていました。しかし実際は逆で彼らが近づいてきてくれました」と語る。

「外国人だからということでなく、仲間を受け入れるという気構えがないとダメだと思います。外国人だからということで特別扱いはしません」(小倉社長)。更に「従業員は朝礼で順番に発表をするようにしています。当然、ベトナム人にも発表の機会があります。あるときベトナム人が『工場の横に段ボールを捨てるとき、細い段ボールは奥に持って行って捨てましょう! 手前に捨てると邪魔になるからです』といって、日本人従業員が気づかなかったことをしっかりと指摘しました。そのとき、朝礼は笑いの渦になりながらも、それ以降、細い段ボールは奥に捨てられています」と語ってくれた。

話を聞いていると、小倉社長含め従業員が、ベトナム人に対して愛情を持って接しているということを感じる。思いはベトナム人にも共有される。だからこそ近づいてきてくれ、良い信頼関係を築けるのだろう。受け入れ側の考えがしっかりとしていないと、いつまでも外国人を助手のように扱う。そうでは長続きしない。怒るにしても「怒るではなく叱る」。彼らの将来を本気で考えているから叱る。感情で怒ってはいけない。受け入れ企業の社長や社員1人1人が愛情と思いやりを持って彼らに接することができるかどうか。受け入れていく企業にとって、大変重要なことだ。

外国人材用の教育マニュアルと作り、彼らのキャリアプランを描く

株式会社アマギ(小川一弘社長、神奈川県相模原市)を訪問すると、3名のベトナム人が、洗車や社内清掃、点検などの業務を行っていた。彼らは現場近くに会社が借りた3DKのアパートに一緒に暮らしている。「ベトナム人は経験がなかったため、日本に来て最初に車検整備を教えました。日本人より若干時間はかかりましたが、初心者を教えるマニュアルと仕組みがあるので、比較的スムーズに、たどたどしい日本語でも教えることができました」(小川社長)。更に「ただ、背中を見て覚えろというのは無理。外国人のための『教育プログラム』を作り、彼らに教える仕組みが必要です」(小川社長)。

外国人を受け入れる場合、課題点としてよくいわれるのが日本語でのコミュニケーションだ。なかなか日本語能力が上がらず、実務を教えるのに支障を感じていると感じている企業は多い。確かに言葉もそうだが初心者を教育していくためのマニュアルなどを受け入れ企業側が用意していくことも大切だ。アマギでは、合計11名の整備技能実習生が働く(フィリピン人5名、ベトナム人6名)。

更に今年度中にベトナムの大学を卒業した整備エンジニアが正社員として2名入ってくる。スカイブルー人材候補だ。現地の優秀な理工系大学で自動車整備を学び、現在日本語の勉強もしている高度人材と呼ばれるエンジニア。大学卒業後にベトナムの自動車関連企業で経験を得たのち、日本で更なる経験を積みたいという意欲ある若者たちだ。将来的にはこの2名を技能実習生のマネジメント人材として活用し、外国人チームとして生産性の高い業務が行える体制を目指す。

外国人の採用・生活の担当責任者の中澤氏は「日本人の整備人材を13名雇用できるのかといわれれば無理です。いずれ自国に帰って活躍できる人材になってほしいと思っています。それが日本にいる従業員たちにとっても大きなモチベーションとなります」。更に「キャリアプランをしっかりと描いて伝えてあげことは重要です。特にリーダーになった場合は、給料を変えてしっかり評価をしていくことです。また家族から離れて単身できている分だけ気にかけてあげることが大事」と語る。

外国人を受け入れる企業のマインド

経営者自ら愛情と思いやりを持つことは大前提だ。面倒を見たら見ただけ返ってくることは間違いない。素直な人材をどのように見つけ、採用するか、そしてしっかりと教育体制を作っていくか、これが重要となる。利用しようと考えると相手も心を開くことはない。また最も良くない考え方としては、安い労働者として考えることだ。「日本人と同等の報酬」という考えが理解できないのであれば、外国人ではなく日本人を雇用することをお勧めする。

社内に外国人活用の意義をしっかりと伝え、外国人活用の経験をプラスに考える心構えを持つと良いかもしれない。外国人を雇用してみて、何を感じたか?何を学んだか? そのように考えている企業では、外国人活用後に社内風土が良くなり組織の活性化が起こっている。

記したように、日本は少子高齢化を含む課題を抱えている。だからこそ、課題解決先進国として自らが持つ課題に果敢にチャレンジしていく必要があると思っている。そのチャレンジが新しい成長になり、自動車業界の未来を創り上げる。外国人労働者の課題をどのように解決していくか。答えは、フロントランナーとしてのマインドを持ち、自らが外国人労働者を受け入れて一緒にやって行くことだと自分は考えている。

<川崎大輔 プロフィール>大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年より自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。2017年よりアセアンからの自動車整備エンジニアを日本企業に紹介する、アセアンカービジネスキャリアを新たに立ち上げた。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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