次世代ドローン技術で“空飛ぶクルマ”の開発を目指すエアロネクストは10月15日、開催中のCEATEC 2019(千葉市)でエアモビリティの概念を覆す「空飛ぶゴンドラ」の試作モデルを発表し、そのコンセプトを具現化した原理試作「Next MOBILITY」を初披露目した。
水平乗車実現の鍵は独自の重心制御技術「4D GRAVITY」の採用
世界中で“空飛ぶクルマ”に代表されるエアモビリティの開発競争が進む中、今回の発表は従来の発想と一線を画したゴンドラ方式によって、安全性と快適性を実現するという新しいコンセプトを提示したもの。エアロネクスト社は独自の重心制御技術「4D GRAVITY」を軸に技術ライセンスをビジネスとしたスタートアップ企業で、今回発表したNext MOBILITYはその4D GRAVITY技術と、新たに開発した垂直離着陸機(VTOL)の重心制御技術「ティルトボディ」を組み合わせることでゴンドラのような飛行体験を実現した。
人が機体に乗車する場合、安定した飛行に基づく安全性は欠かせないが、同時に垂直離陸時はもちろん、離陸から水平飛行への移行時、飛行中など、すべてにおいてスムーズであることが求められる。そして、何よりも乗客は座った状態で地面と水平で安定することによる「快適性」を実現することも欠かせない。しかし、「これまでのエアモビリティは前進すると機体が前傾姿勢となり、乗客はそれに合わせた姿勢で搭乗することが強いられていた。これが最大の問題点である」とエアロネクスト社のCEO田路圭輔氏は語る。
今回発表したNext MOBILITYは、4D GRAVITY技術を活用することで、人が乗車するキャビンを観覧車のゴンドラのように常時水平に保つことを実現。これにより、乗客は自動車が地上を移動するのと同じような自然でスムーズな感覚で搭乗していられる。今回発表された試作モデルでは前後左右をガラス張りとしているため、乗客は自然な姿勢で空からの風景を楽しめるというわけだ。試作モデルは一人乗り用だったが、田路氏によれば「複数人で搭乗できる機体の開発も進めている」としており、そうなればまさに観覧車に乗った時のように同乗者とコミュニケーションを取りながら空を移動できることになる。
田路氏「遊園地や観光地で2023年の実用化を目指す」
田路氏は発表にあたり、「ドローンが普及している現在は“フライングカメラ”の第一世代。ドローンである以上、自律して空を飛ぶロボットとなるのが本来の姿でそれが第二世代と言える。我々は宅配ドローンや産業用ドローンを4D GRAVITY技術の活用によって実現しているが、その次の第三世代として“フライングカー”を想定して開発を進めており、今回の発表はそれを具現化したもの。日本政府がエアモビリティの社会実装を想定している2023年の実用化を目指したい」と述べた。
とはいえ、日本でのドローンに対する規制があるように、エアモビリティを実現するまでのハードルは高い。航空法を含む様々な規制をクリアしなければならないし、何よりも人々がクルマが空を飛ぶという概念を受け入れるのはそう簡単ではない。さらにバッテリーによるエアモビリティは飛行時間が短いという問題もある。
これについて田路氏は「世界的に都市交通の渋滞対策の一環としてビジョンを想定されているが、2023年の時点でその実現性はかなり低い。当面は遊園地や観光の領域でエアモビリティに乗車して体験してもらうことが大事なのではないか。そうした体験がまずあることでエアモビリティの受容性が高まっていく」と述べた。また、エアロネクスト社では今後も新たなエアモビリティの構想があるとし、同社がビジネスモデルとするライセンシーとしての事業を拡大していく方針だ。