実験名「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期『自動運転(システムとサービスの拡張)』東京臨海部実証実験」。この説明会では、同実験 プログラムディレクター葛巻清吾氏(トヨタ自動車先進技術開発カンパニーフェロー)が登壇し、その概要を伝えた。
東京臨海部実証実験は、第1期・第2期とも、内閣府が道路交通インフラの整備・提供し、参加者は実証実験に使用する自動運転車両やその車両運用、運転手の整備、実験データの取得・分析、実験結果の報告などを重ねる。
世界有数の大都市、東京の、実際に動いている公道での、国際的でオープンな産学官連携の実証実験は、世界的にも類をみない試み。国際標準活動にむけた取り組みとしても注目を集める。この説明会で葛巻ディレクターは、第2フェーズとなる同実験の具体的な試験内容について公表した。
◆実験の柱は、無線通信信号・高速道本線合流支援・レベル4自動運転バス

信号情報分野は、信号現示認識の確実性向上、信号交差点での円滑な車両制御が目標。交差点では、車載センサと通信の2重系で信号現示認識の精度向上を狙う。また、信号先読み情報(残秒数)によるジレンマゾーン回避も試みる。このジレンマゾーンとは、信号が黄色で停止線を通過できず、かつ急減速なしでは停止できないタイミングのことをいう。
◆高速道路上は、安全で円滑な合流とETCゲート通過へ

信号・合流・ETCゲートのいずれの実験も、実用化への見極め、データ仕様の共有と合意、インフラ整備の考え方の整理へと結実させる。
◆レベル4相当の次世代都市交通システム(ART)実現へむけて

同実験では、混在交通下でのドライバー介入要因の分析、定時運行に有効なインフラ連携などを検証。世代都市交通システム(ART)実用化を見極め、インフラ整備の考え方を整理する。
◆インフラ側のハードウェア・ソフトウェアの更新に注目

羽田空港エリアには、同様の信号情報をはじめ、磁気マーカー路線、仮説バス停、専用レーンなどを整備する。また、その両エリアを結ぶ首都高速道路上には、合流支援情報・ETCゲート情報・車線別交通規制情報などを提供する環境を整備する。
◆初日には同実証実験に参加する車両がずらり登場

メディアや関係者が注目した車両のひとつが、埼玉工業大学の自動運転バス。参加車両のなかで唯一のマイクロバスで、ベース車両に依存しない、自動運転システム後付けモデル。また、同実験に参加するバス車両のなかでも唯一のマイクロバスで、磁気マーカーを必要としない自律走行版ということで、多くの記者たちがこのクルマのまわりに集まった。
この自動運転バスを開発する埼玉工業大学の渡部大志教授は「次世代都市交通システム(ART)の実現にむけて、すべての自動運転車両が共有するインフラ側の整備機器などとの協調した自動運転にどんな有効性があるかを、この第2フェーズのインフラ協調ART走行試験などで検証していきたい」と伝えていた。
◆2020年7月には自動運転車試乗イベントも実施

NEDOが管理法人を務め、内閣府が実施する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、信号や首都高速上にインフラ機器を整備し、さらにバス専用レーンや仮説バス停、磁気マーカー、公共車両優先システム(PTPS:Public Transportation Priority Systems)などを設置し、各実験を順次開始。東京オリンピック・パラリンピックに先立つ2020年7月に日本自動車工業会と連携し自動運転車試乗イベントも開きながら、2021年度末に実験結果をまとめるという。