鉄道総研の新しい燃料電池ハイブリッド電車が完成…旧型より出力を5割アップ、機器も小型化

完成した2両編成の新型燃料電池ハイブリッド試験電車。旧型と比べて編成出力は230kW、燃料電池出力は50kWアップしており、起動加速度は1km/h/s向上。台車は旧型の駆動台車が2台中1台だったのに対して、新型では2台とも駆動台車となっている。
  • 完成した2両編成の新型燃料電池ハイブリッド試験電車。旧型と比べて編成出力は230kW、燃料電池出力は50kWアップしており、起動加速度は1km/h/s向上。台車は旧型の駆動台車が2台中1台だったのに対して、新型では2台とも駆動台車となっている。
  • 2008年に登場した最初の試験電車では、搭載機器が大きくなったため、走行に必要なリチウムイオンバッテリーやラジエター、燃料電池モジュール、電力変換装置は車内に搭載されていた。
  • 新しい試験電車の車内。機器類が大幅に小型化されて床下搭載が可能になったため、ほぼ営業用車と同じような形となっている。

公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は8月28日、新しい燃料電池ハイブリッド試験電車が完成したことを明らかにした。

これは水素エネルギーを活用し、省エネ化や環境負荷低減を図るために開発された鉄道車両で、軽油などの化石燃料を使用する従来の気動車と異なり、温室効果ガスの排出量を抑制できる燃料電池を動力源として利用する。

仕組みは、燃料電池とバッテリーからの出力で加速、減速時には燃料電池からの出力を抑制して、制動時に生まれる回生電力をバッテリーに充電。停車後は燃料電池の出力を上げて、バッテリーに充電するというもので、鉄道総研では、2008年から燃料電池とバッテリーを備えたハイブリッド電車を試作し、所内の実験線で走行試験を実施。燃料電池のエネルギー変換効率はディーゼルエンジンより20~25%高いことが確認された。

この時は鉄道車両としての基本性能を確認できたものの、搭載機器が大きいことや、従来の気動車並の加速性能に留まっていたことがネックとなっていた。

そこで、今回完成した試験電車では、燃料電池の高出力密度化と冷却装置の分散配置などにより出力を50%アップ、出力あたりの体積を20%減少。燃料電池用の電力変換装置については、炭化ケイ素(SiC)素子や小型遮断器を使うことで、体積を45%減少させたという。

完成した試験電車は現時点で走行できない状態だが、今後は所内の試験線で走行試験を行ない、ハイブリッドシステムの制御方法の改良や燃料電池への負荷が小さい制御方式の研究開発を行なうとしており、8月29・30日に鉄道総研の国立(くにたち)研究所(東京都国立市)で開催される鉄道総研技術フォーラム2019(要申込み)で展示される運びとなっている。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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