楽天の研究開発機関である楽天技術研究所は、ECサイト「e-zakkamaniastores」や実店舗「zootie」「fablica」の運営を行っているズーティーや会津大学と共同で、人とくるまのテクノロジー展2019名古屋に出展。会場内では異色な“どこでも試着室”を展開し注目を浴びた。
“どこでも試着室”は、訪れた人に対して離れたエリアにいるスタイリストがバーチャルでオススメの服を提案し、その組み合わせが気に入った場合はECサイトで購入できるQRコードを発行するというもの。
車両には日産のEV『e-NV200』を使い、楽天技術研究所が開発した「遠隔スタイリング支援システム」を活用して実現した。車両はキャンピングカーなどの製造で知られるOGUshowで、内装はズーティの実店舗の雰囲気が味わえるものにしたという。
車の後方に設置されたバックドアテントを入ると、そこはズーティーのスタイリングルーム。最大2名が入れる。スタイリングルームには試着する人を写すカメラと、選んだ服が分かるディスプレイと、バーチャルで試着した姿を映し出すプロジェクターを設置。マイクを介してスタイリストと会話しながら要望を伝え、お気に入りのファッションを完成させていく。所要時間はおよそ5分前後で、実際に着替える必要がないので流れはスムーズに行われるようだ。
楽天技術研究所の資料によれば、このサービスを「参加者とスタイリストがリアルタイムで双方向にコミュニケーションをとるということを前提」とする。その上で「参加者は着てみたい色や形、またスタイリングに関しての悩みや今のトレンドなどの情報収集や相談などはもちろん、バーチャルスタイリングを通じて“コミュニケーション”する楽しさも体験できる」としている。
また、同研究所でコーディネーターを務める落合裕美氏は、「想定しているのはシャッター街となった地方の空きスペースで展開することで、ひと味違ったイベントとして注目されることで新たな客寄せイベントにもつながる」とする。また、やり取りを外から聞いていると、スタイリストの音声が作ったような感じで聞こえてくる。これについては、「一人でカメラの前に立つと緊張してしまって思うようにやり取りができなくなる可能性もあるので、スタイリストの声をあえてアニメ風の声に変えて出力している」(落合氏)のだという。
買い物は大型店舗やネット通販の普及により都会と地方でその差はなくなりつつあるが、その一方で買い物によって生まれるコミュニケーションはどんどん希薄になってきている。こうしたサービスが定着することで、そんな時代の流れに一石を投じる新たなショッピングスタイルとなるかもしれない。