【インディアン スカウト 試乗】由緒正しき血統が生んだ、死角なき完成度に驚く…青木タカオ

インディアン スカウト
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はやっ! 思わず呟いてしまう。発進加速から力強く、ダッシュが強烈なほどに鋭い。

アメリカンクルーザーはフィーリング重視でノンビリしたもの、そう決めつけているとこの動力性能の高さに驚いてしまうだろう。感覚的にはネイキッドスポーツに乗っているような身のこなしの軽さだ。

高性能なDOHC4バルブVツインエンジン

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搭載するエンジンは排気量1133ccの水冷60度Vツインで、なんとDOHC4バルブ。ボア×ストロークも99×73.6mmのショートストローク設計。どうりで、高回転域まで引っ張り上げても伸びがいい。吸気も上方から直線的にダイレクトな経路を確保し高効率なダウンドラフト方式で、最高出力は94PSにも達する。最大トルク97.7Nmは6000rpmで発揮するが、レブリミットが効く8300rpmまで粘り強く力を絞り出していく。

直打式の吸排気バルブ、フラットな形状のピストンヘッド、オイル噴射式ピストンクーラー、ライド・バイ・ワイヤーで制御するφ60mmのシングルスロットルボディなど、そのパワーユニットには死角が見当たらない。それもそのはずで、現行インディアンはアメリカ・ポラリス社の資本下にあり、スノーモービルや四輪バギーなどで培われた技術がふんだんに用いられ、モーターカンパニーとしての信頼や実績は充分すぎる。

由緒正しき血統、スカウト

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インディアンは1901年に米国初のモーターサイクルを発売し、長い間ハーレーダビッドソンとライバル関係にあった。「スカウト」はレースでも輝かしい成績を収めてきた由緒正しき血統で、1937年の第1回デイトナ200で優勝したのは「スポーツスカウト」であったし、48年に新コースで開催されたデイトナ200でも勝利するなど、その名を歴史に残してきた。

しかし戦後から続いた販売不振により、1953年にスプリングフィールドでの生産を終了してしまうと、複雑に絡み合った商標権の問題によって復活への道のりは難航が続く。ポラリス・インダストリーズ社による経営体制となったのは2011年で、現在はまたフラットトラック全米選手権にファクトリーチーム「Wrecking Crew」が復帰し、2017~18年シーズンを連覇中。レースの世界でまた、その高い技術力をアピールしている。

クルーザーとは思えぬ高い旋回力

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話しは少し逸れたが、現行スカウトはその元気溌剌としたエンジンに見合うようシャシーも強度が高く、アルミ製のメインフレームはスピードレンジが上がってもよれる気配が一切なく、特にネック周辺のカッチリとした剛性感が乗り手に安心感をもたらす。

前後サスペンションもしなやかに動き路面追従性に優れるが、荷重がかったときには踏ん張りが効いてコシがあるから、コーナーをアグレシッブに攻め込んでも車体は落ち着いたまま。ホイール径は前後16インチでハンドリングはクイックなもの。コーナーでは素直に車体が寝ていくし、キャスター角が29度と寝て前輪は遠くにあるもののフロントの接地感がしっかりあり、バンク中も安定感が高い。

ノンビリ走っても心地良い

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試乗は一足先に春を迎えようとしている南房総でおこなったが、前半はそのスポーティさに酔いしれて、ついついペースが上がりがちになってしまった。両足を前に投げ出すリラックスしたライディングポジションで、美しい海外を眺めつつ低い回転域だけを使ってノンビリ走ると、これがまた心地がいいことにすぐ気付く。

鼓動がダイレクトに伝わってくるのは、エンジンがフレームにリジッドマウントされているからで、容赦なくVツインならではの不等間隔爆発が乗り手のカラダを突き上げてくる。ハンドルやステップに不快な微振動が出ないのは、1軸バランサーを内蔵しているため。ネイキッドスポーツみたいと冒頭で言ったが、スカウトはクルーザーとしての資質も忘れていないのだ。

つまり、現代的なスポーティさと奥深きテイスティさを両立し、どんなシーンでも、幅広いユーザーが楽しめるモデルとなっている。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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