長過ぎた “賞味期限切れ” 日産ゴーン会長衝撃の逮捕劇[新聞ウォッチ]

ゴーン容疑者
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  • 1999年3月、日産とルノーが提携。前列向かって左端がゴーン。 (c) Getty Inmages
  • スバル・クロストレック・ハイブリッド

気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。

2018年11月20日付

●日産ゴーン会長逮捕、報酬50億円過少記載疑い、東京地検、日産側と司法取引(読売・1面)

●司法取引カリスマ摘発、企業トップ初の適用、日産社員の処分軽減へ(朝日・2面)

●日産三菱・ルノー激震、3社連合要を失う(朝日・7面)

●初のPHVスバル発売、北米向け(朝日・9面)

●世界初、いよいよ公道で、2台同時で自動運転、福井・永平寺(毎日・7面)

●ゴーン流20年統治不全「権力集中負の側面」日産社長(産経・3面)

●社説・ゴーン会長逮捕、巨額報酬の闇にメスを(東京・5面)

●日産、22日に会長解任へ、社長会見「内部通報で不正発覚」(日経・1面)

●トップ不在経営に打撃、3社連合仏政府の対応焦点に(日経・3面)

●AIロボ、次は床清掃、ソフトバンクGオフィス向け開発(日経・12面)

●ガソリン、アジアで下落、中国輸出増、日本に波及も(日経・18面)

●日産社員「一体何が…」トップ逮捕に衝撃「あまりに不意」社内困惑(日経・39面)

ひとくちコメント

師走に入るとメディアは今年の十大ニュースを相次いで発表するが、「日産ゴーン会長逮捕」という衝撃的なニュースは、平成時代の企業不祥事の中でもトップ級の重大ニュースとして経済事件史に克明に刻み込まれることだろう。

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が自らの報酬を過少に申告した疑いがあるとして、東京地検特捜部が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑でゴーン氏を逮捕した。過少申告した金額は50億円以上にのぼるとみられる。

きょうの朝刊は全紙が1面トップ記事として「日産ゴーン会長逮捕」と大きな見出しで報じているほか、各紙は関連記事を経済面や社会面などでも取り上げている。例えば、読売は2面、3面、10面、11面、36面、37面に及んで逮捕劇の背景などを詳細に伝えている。

このうち、3面の総合面では「再建カリスマ失墜、ゴーン容疑者 権限集中に日産社内に不協和音」として「経営危機に陥った日産をV字回復させ、そのカリスマ性で日産・仏ルノー・三菱自動車の3社連合を率いてきた世界的な経営者。まさかの失墜だった」と取り上げた。

また、11面の経済面では「日産 企業統治に綻び」として「ゴーン容疑者の逮捕は、日産が深刻なガバナンスの問題を抱えていいたことも浮き彫りになった」としている。さらに、36と37面の社会面では「『裏切られた』衝撃、不正続きに『追い打ち』」とのタイトルで「社員らの間には衝撃が走り、怒りと将来への不安が渦巻いた」と伝えている。

毎日は「19年長すぎた君臨」として「3社のバランスが不安定化するのは不可避で、自動車業界の勢力図への影響も計り知れない」と説明。朝日も「日産三菱・ルノー激震、3社連合要失う」とのタイトルで「3社連合の行方は一気に不透明になった」と取り上げている。

それにしても、日産の広報体制は、不祥事慣れなのか、対応が素早かった。特捜部の捜査開始情報から1時間余りで「当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について」というニュースリリースを発表。内部通報による数か月間の内部調査を実施するとともに、取締役会で解任を提案する旨を明らかにした。

さらに、夜10時からの西川廣人社長の緊急会見でもゴーン会長に権力が集中し過ぎたことで不正が見抜けなかった背景などを語った。「何が起きたかわからない」という社員や株主らの怒りと不安を、広報による手際の良さで払拭する狙いもあったようだ。そもそも、ゴーン会長は20年近くも君臨していたとはいえ、“賞味期限”はかなり前に過ぎており、そこまで腐敗が蔓延してからの解任は残念でならない。

《福田俊之》

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