【スーパーフォーミュラ 最終戦】名勝負を制して、山本尚貴が5年ぶりの戴冠…チーム王座は近藤真彦監督のKONDO RACINGが初獲得

最終戦鈴鹿を制し、2018年SF王者となった山本尚貴。
  • 最終戦鈴鹿を制し、2018年SF王者となった山本尚貴。
  • SFのチーム部門王者KONDO RACINGの近藤真彦監督(左)、SFドライバーズチャンピオンの山本尚貴(右)。
  • #16 山本尚貴がチャンピオンに輝いた。
  • SF最終戦鈴鹿、決勝レースの模様。
  • #3 キャシディ(KONDO RACING)は2位、タイトルを逃した。
  • 決勝3位となる#4 山下健太(KONDO RACING)。
  • チーム部門王座を獲得し、会見に臨む近藤監督。
  • 最終戦の表彰式。左から2位のキャシディ、優勝の山本&手塚監督、3位の山下。

28日、スーパーフォーミュラ最終戦の決勝レースが鈴鹿サーキットで行なわれ、チーム無限の山本尚貴が、王座を争うライバルであるニック・キャシディの猛追を振り切って優勝、5年ぶり2度目の戴冠を果たした。チーム部門王座は近藤真彦監督率いるKONDO RACINGが初めて獲得。

快晴、ドライコンディションの日曜日、スーパーフォーミュラ(SF)最終戦の決勝250kmレース(43周または90分)は14時15分にフォーメーションラップのスタートが切られ、チャンピオン争いの最終章が幕を開けた。そして本番のレーススタート、ポール発進の#16 山本尚貴(TEAM MUGEN/エンジンはホンダ)はしっかりトップを守って1コーナーへ。その後も後続に対してのリードを着実に広げつつ、首位を走る。予選終了時点でドライバーズポイントランキング2位タイの#16 山本は、このまま勝てば自力逆転王座である。

しかし、このレースは鈴鹿マイスター #16 山本の独走とはならなかった。レース後半は、ポイントリーダーの#3 ニック・キャシディ(KONDO RACING/トヨタ)が#16 山本を急追、勝った方がチャンピオンという緊張感あふれる極上の攻防戦が展開されることになる。

伏線は今季から全戦実施となったドライ用タイヤ2スペック制にあった。決勝レースではソフトとミディアム、両スペックのタイヤを使うルール的義務があり、スタート時、#16 山本を含む予選トップ3はソフトでスタートしていた。一方、予選4位の#3キャシディはミディアムでスタート。序盤で5番手に下がりはするが、先頭の#16 山本が19周を終えてミディアムへと交換する時点までに、#3 キャシディは硬い方のタイヤで約15秒差に踏みとどまっていたのだ。

好ペースを維持して走り続けた#3 キャシディは29周終了時にピットへ。ソフトを履いてコースに戻ると、ポジション的には、ミディアムで走る実質首位#16 山本の次位。そこから#3 キャシディは猛追を開始した。35周目にはS字区間で姿勢を乱すシーンもあったが、#3 キャシディは懸命に#16 山本を追い続ける。終盤、差は35周終了時点の4.8秒から、4.2秒、3.4秒、2.8秒、2.2秒と詰まっていき、残り3周で1.8秒、残り2周で1.2秒、最終ラップ突入時には0.8秒に。

しかし、#3 キャシディは最終的にコンマ6秒、トップには届かなかった。日本のトップフォーミュラ史上に残る名勝負を制した#16 山本がポール・トゥ・ウインでシーズン3勝目を飾り、5年ぶり2度目のチャンピオン獲得を果たしたのである(ホンダ勢の戴冠も5年ぶり)。

#16 山本尚貴のコメント
「この日のために、この結果のために、チームとホンダの全員が力を合わせて頑張ってくれました。みんなに感謝したいです。楽なタイトル争いではなかったですし、最終戦もKONDO RACINGの2台、特にニック(キャシディ)が強敵となり、ああいう僅差の決着になりました。ただ、良きライバルがいるからこそ本当に盛り上がったレースになったと思いますし、自分としても志を高くもって『どのドライバーにも負けないように頑張らないといけない』と思って戦ってきました。そのことが今日の結果につながったところもあると思うので、ライバルにも感謝したいですね。いいシーズンを過ごせたと思います」

山本尚貴は1988年生まれ、栃木県出身(現在30歳)。近年は「ホンダのエース」と呼ばれ、国内トップ戦線で活躍を続けているドライバーだ。ビッグタイトル獲得は2013年のSFに続き2度目。なお、山本は現在、もうひとつのトップカテゴリー「SUPER GT/GT500クラス」でドライバーズランキング同点首位となっており、11月11日決勝の最終戦もてぎで、首位タイに並ぶキャシディともう一度、雌雄を決することになっている。同一年の国内2冠制覇という偉業なるか、こちらもさらに楽しみになってきた。

#3 キャシディは惜しくも決勝2位に敗れ、シリーズでも2位ということになった。山本との戦いを「グレートファイトだった」と振り返り、「チャンピオンは獲れなかったけど、ベストを尽くせたと思うし、チームも頑張ってくれた。彼らを誇りに思う」。そして「ヤマモトサン、オメデトウ」と日本語でライバルを祝福している。SFはまだ参戦2年目の24歳(ニュージーランド出身)、将来への期待がさらに膨らむ活躍だった。

SF最終戦の決勝3~8位は以下の通り。もうひとりの自力チャンピオン候補だった#1 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)は11位、今季中に自身初優勝を成し遂げたかった#18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG/トヨタ)は13位だった。

3位 #4 山下健太(KONDO RACING/トヨタ)
4位 #2 国本雄資(JMS P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)
5位 #36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)
6位 #17 塚越広大(REAL RACING/ホンダ)
7位 #6 松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)
8位 #19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)

チーム部門タイトルは、#3 キャシディと#4 山下を擁すKONDO RACINGが初めて獲得。近藤真彦監督は「(チーム設立からおよそ)20年かかりましたが、トップチームと肩を並べられるところまで来ました。ここ2~3年でいろんな改革をスピード上げてやってきた成果も出たと思いますし、ともに2年目の若いふたりのドライバーが想像以上に速かったですよね。総合的にチーム力が上がったことで、現状があるんだと思います」と語っている。

スーパーフォーミュラは来季も全7戦が実施される予定。ワンメイクシャシーが「ダラーラSF19」へと5年ぶりに刷新され、戦いはまた新たな局面に入ることとなる(SF19はコクピット防護の“HALO”を装着することが決定)。久々にカーナンバー1をまとって戦うであろう山本尚貴を中心に、さらなる熱戦が期待される。

《遠藤俊幸》

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