プロが伝授するサウンドチューニング「基本と応用」…クロスオーバーの詳細設定

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クラリオン『フルデジタルサウンド』の“クロスオーバー”の設定画面。
  • クラリオン『フルデジタルサウンド』の“クロスオーバー”の設定画面。
  • 三菱電機『ダイヤトーンサウンドナビ』の“クロスオーバー”の設定画面。
  • トヨタ・エスティマ(製作:ブリーズ、オーナー:杠 翔さん)
  • トヨタ・エスティマ(製作:ブリーズ、オーナー:杠 翔さん)
  • トヨタ・エスティマ(製作:ブリーズ、オーナー:杠 翔さん)

カーオーディオ・プロショップ直伝のサウンドチューニングテクニックを紹介する短期集中連載をお届けしている。本命の音調整はプロに設定してもらうのが一番なのだが、それとは別に自分でもこれにトライしてみようと考えている方を、サポートすべく展開している。

サウンドチューニングにはコツがある。そのヒントとなる情報を、毎回濃縮してリポートしている。今回は、奈良県の実力ショップ“ブリーズ”の木村さんにご登場願い、基礎設定のやり方から“クロスオーバー”調整の煮詰め方についてまでを、詳しく解説してもらった。

なお、サウンドチューニングのやり方は各ショップごとで異なっている。今回紹介するものとは違う方法も多々存在している。いろいろなやり方があること知り、その中から自分にあった方法を見つけ出していただきたい。

では本編を進めていこう。木村さんから聴いた話は以下のとおりだ。

■カメラのピントを合わせる要領で、“タイムアライメント”のピントを確認。

今回も、基礎調整の方法から紹介していく。面白いことに、基礎調整のやり方についても各ショップごとでそれぞれ特長がある。さて、“ブリーズ”の木村さんは、どのようなやり方をしているのかと言うと…。

「最初に初期設定から行います。“タイムアライメント”は、リスニングポジションから各スピーカーまでの実測値を入力し、“クロスオーバー”については、ツィーターの“カットオフ周波数”をとりあえず4kHzから5kHzの間に決め、ミッドウーファーの“ハイパス(ローカット)”は60Hzに、“ローパス(ハイカット)”は12kHzとか18kHzとか、かなり上目に設定しておきます。“スロープ”は-12dB/octか-18db/octのどちらかに。この段階ではどちらでも大丈夫です。気分で決めてください。ただ、すべてを統一しておきましょう。ばらばらに設定するのはNGです。

この状態でまずは、“タイムアライメント”の基礎設定に取りかかります。最初は、左右のミッドウーファー間の調整から。遠い方のミッドウーファーの数値は触らずに、近くのミッドウーファーの数値だけを変えていきます。

実測値を入力してあるので大体の設定は出来ているはずなのですが、それで良かったのかをチェックしていきます。以下のようにすると分かりやすいですよ。例えば実測値が、左のミッドウーファーが150cm、右が110cmだったとします。そしたら右の値を、120cmから100cmへとゆっくり変化させてみるんです。そうすると、ぼやけていたピントが段々合ってきて、またぼやけていく。この操作を繰り返して、もっともピントが合うポイントを探るんです。

一眼レフカメラのピントをマニュアル操作で合わそうとするとき、レンズを手で回してみますよね。ボケた状態から合う状態を探していき、ちょっと行き過ぎてみてまた戻す。“タイムアライメント”調整でも、それと同じような操作をするとわかりやすいと思います」

■左右のミッドウーファー間の調整がすんだら、左側の2スピーカー間の調整へと進む。

続いては何を行うのだろうか。

「次は、左のミッドウーファーと左のツィーター間の基礎調整を行います。今度はツィーターの“タイムアライメント”の数値を、先ほどと同じように、ピントが甘いところから合うところへ、そしたまた甘いところへと動かしてみて、ベストなポイントがどこなのかを探していきます。

このときにピントが合いにくいと感じたら、“スロープ”を変えてみたり“正相・逆相切り替え”を切り替えてみましょう。“タイムアライメント”と“クロスオーバー”の両方を微調整して、基礎を整えていきます。

そしてその次には、右側のツィーターとミッドウーファー間の調整を行います。“クロスオーバー”は左側で決めた値と同じにして、同じやり方で“タイムアライメント”のピントの精度を上げていきます。

左右のツィーター間の調整を行うのは、その後です。その際には主に“音量”を調整して、センターの位置を整えます。

この後にいよいよ、フロントスピーカーすべてを鳴らして全体像を確認します。このとき、一旦ミッドウーファーだけをミュートしてしばらくして戻してみたり、その逆をやってみたりするのも有効です。切り替えた瞬間にセンター位置のズレが生じるようなら、“タイムアライメント”や“音量”バランスの微調整をしましょう」

■ベストな“クロスポイント”を見つけるためには、“力強さ”に注目!

お次はいよいよ、“クロスオーバー”を煮詰めていく作業に入っていく。

「ツィーターの限界値を探ることから始めます。下側がどこまで出せるのかをチェックしたいんです。ツィーターの“ハイパス(ローカット)”とミッドウーファーの“ローパス(ハイカット)”とを同じ値にして、その両方を同時に動かしながら音を確認していきます。

ちなみにここまでの調整では、ボーカルと数人のアコースティック楽器というような編成で演奏されている楽曲が使いやすいと思います。それでいて、自分が好きな曲であることも大事です。そうでないと調整がつまらなくなってしまいますから。そしてその曲を、ホームオーディオでも良く聴き込んでおくことも大切です。各楽器の位置関係やステージング、正しい音色等々がよく分かっている方が良いですからね。

ツィーターの限界値を確認したら今度は、ツィーターとミッドウーファー間の“クロスポイント”を厳密に探っていく作業に入ります。大体6kHzあたりから先ほど確かめた限界値あたりまで、その範囲の中でゆっくりと下げていき、特にボーカルとピアノの音色を確認します。

声やピアノがやかましく感じられてきたら行き過ぎです。そうしたらそこからまた上げて行き、もっとも良く聴こえてくる場所を探していきます。

良さのポイントは、まずは“うるさくないこと”、そしてその上で、“エネルギー感が強いこと”。“元気がある”というとわかりやすいでしょうか、力強く聴こえるかどうかはとても大事だと思います」

■「サブウーファーの低域側をカットすると、低音がスッキリするはずです」

さらには、サブウーファーの“クロスオーバー”調整、そして仕上げ方についても教えてもらった。

「サブウーファーの“クロスオーバー”調整ではまず、“クロスポイント”の仮設定を行います。“スロープ”をフロントスピーカーで決めた値と同じにして、ミッドウーファーの“ハイパス(ローカット)”とサブウーファーの“ローパス(ハイカット)”は、60Hzあたりにしておくと良いでしょうか。

そして下側も20Hzくらいでカットしておきます。サブウーファーであってもそれ以下の音はきれいに再生できないことが多いので、その部分は鳴らさない方がベターです。

サブウーファーの設定においては、“位相”を合わせる作業が特に重要です。“正相・逆相切り替え”を操作して違いがはっきりわかれば、より力強く聴こえるほうが正解です。違いが分かりにくいときは、“スロープ”を変化させた上で正・逆を切り替えてみます。

“位相”と“音量”のバランスが合えば、サブウーファーの音は自然と“前方定位”するはずです。しかし、サブウーファー帯域の中で“ピーク”が出ていたりするときには、上手く“前方定位”しないことがあります。その場合には“スロープ”や“クロスポイント”をいろいろと変えてみて、後ろに引っ張られるのを解消させたいですね。

その後には、フロントスピーカーの“クロスオーバー”の精度をさらに上げていきます。今度は、ツィーターとミッドウーファーそれぞれの“カットオフ周波数”を、被せたり離したりしてみます。帯域バランスが良く、そして全体のサウンドに力強さが出るポイントを探っていきます。

“スロープ”ももう1度、ひととおりチェックしておきたいですね。そのときはそれぞれで“正相・逆相”も切り替えて。そして最善な“スロープ”がどれかを決定します。ここまで来たら、いろいろな曲で試してみると良いと思います。特に、自分が良く聴くジャンルの曲で調整してみることも大切ですね。好みの音楽によって、鳴らし方が変わってくる部分もありますから。特に低音の出方は好みが分かれますし。自分にとってのベストサウンドをじっくりと見つけていっていただきたいと思います」

木村さんから教えてもらった話もそれぞれが腑に落ちた。大いに参考にしていただきたい。

さて、次回からは“イコライザー”調整に踏み込んでいく。周波数特性が乱れがちであるカーオーディオにおいては、“イコライザー”調整も重要度が高い。次回以降の当記事も、お読み逃しのなきように。

プロが伝授する、本格サウンドチューニング術!「基本と応用」第4回「クロスオーバーの詳細設定」

《太田祥三》

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