スマートフォン端末を手に入れる感覚で、クルマを所有する時代へ――。
テレマティクス保険やフリートマネジメントなど、IoTによる自動車サービスを展開するスマートドライブは、日本初の定額コネクテッドカー「スマートドライブカーズ」を提供開始した。北川烈代表取締役に、この新たなサービスにかける思いや、今後のビジョンについて聞いた。
◆「個人ユーザーに届く」スマートドライブとは
スマートドライブカーズのオーダーはいたってかんたん。設定された車種を公式サイト上で選び、契約期間(1・3・5年)を選択するだけ。クルマとシガーソケット専用デバイス(DriveOpsの進化版)が届き、自分の運転をデータ化するカーライフが始まる。
このGPSでリアルタイム車両管理されたカーライフの「おいしいところ」は、安全で快適な運転を重ねることでポイントがたまり、WAONポイントやAmazonギフト券といった、暮らしでよく使うポイントに交換できるという点。
公式サイトには、「毎月定額で新車に乗れる」「車検やメンテナンス費、自賠責保険、各種自動車税も込みの定額料金」「安全運転でポイントやクーポンがもらえる」「コネクテッドカーだから車の情報をすべてスマホで」といった文字が並ぶ。
また、「工事費用ゼロ、3分でセットアップ完了」「GPSと各種センサでリアリタイム動態管理」「安全運転促進、交通事故による修理代や保険料を削減」「日報の自動生成で勤怠管理を効率化」といったメリットもつく。
北川代表は、このスマートドライブカーズをリリースするまでの経緯についてこう話し始めた。
「これまで、ユーザーの安全運転レベルにあわせて保険料を割引くテレマティクス保険などを、アクサ損害保険といっしょに手がけてきた。このサービスで得たビッグデータを、BtoB から BtoC へと展開したいという想いでスマートドライブカーズが生まれた」
「この保険サービスからシガーソケットに挿すデバイスの開発を進め、デバイスが正しく動くかどうかという実証実験ベースから、製品ができあがり、保険のリスク分析、車両管理、物流の最適化といったサービスを横展開できた。技術的には、個人の事故リスク、残価予測などもできるようになり、ビジネスとして成立してきた」
こうした背景のなか、同社の「移動を進化させる」という理念のもと、スマートドライブカーズを開発。「個人向けに新しい移動サービスを提供できないか、個人ユーザーに届くスマートドライブとは、と考え始めたのが1年前だった」と北川代表は振り返る。
◆データ化された運転がもたらす近未来
およそ1年という開発期間でつくった「血と汗と涙が詰まっている」という新たなシガーソケット専用デバイスを載せ、同社はこの春、スマートドライブカーズをリリース。その新しいクルマの利用シーンについて、北川代表はこう教えてくれた。
「事故リスクや残価データがわかってくれば、『きょう1日の運転は1000円でした』という時代がすぐそこにある。スマホみたいにクルマが持てるようになって、月額で定額払いして、安全運転のレベルによって、得したり、特典がついたりという時代になる。クルマにちゃんと正しく安全に乗っている人が、得するような時代になる」
「たとえば、安全な運転を継続すると、ガソリンスタンドで給油台を割引くとか、つながってるからこそのサービスを考えているところ。その先には、シェアもある。『あなたのクルマの運転の仕方、利用の仕方、持ち方だと、この時間はシェアして、実質3万円で借りて2万円で貸して、実質1万円でクルマに乗れるよ』といった、新しいスタイルがつくれたらいいなとも思っている」
スマートドライブカーズのドライブ評価は、6軸センサーとOBD IIから得たデータをもとに結果を出している。実際に乗ってみると、自分のドライビングが、すぐに数値化されて、ビジュアル表示されるあたりは新鮮に感じる。では、こうしたデータ化された運転が、どんな近未来を見せてくれるか。
「たとえば、スマートなドライブを実行した人には、有名人や芸能人といっしょにドライブできるといったサプライズや、スマートドライブカーズのランキングで競い合ったり、スマートドライブカーズのオーナー同士が出会うコミュニティの場をつくったり。このコミュニティの醸成という展開は、早いうちに実現させたいと思っている」
◆移動の最適化を広げていく
予想以上の受注を得ているというスマートドライブカーズ。今後の展開について、北川代表はこう教えてくれた。
「ひとつは、コネクテッドカーの要素を増やしたいという点。『つながることでいいところがいっぱいある』という新しいクルマとの過ごし方を提案したい。もうひとつは、コネクテッドカーで得たデータを、ユーザーに戻していくという流れ。『こういうふうに運転すると安全だよ』とか、自動運転向けの渋滞予測など。差分データで利益が出れば、ポイントを3倍、4倍にするという考えもある。車体本体価格を半額でとか、ガソリン代を半額とか、そんなことも実現できると思う」
「毎月定額だけなら、『カーシェアやリースでいい』と考える人もいる。そこを、スマートドライブカーズだけにしかないコミュニティで、ユーザーと共感しながら、輪を広げていきたい。コミュニティでしか得られない体験を積み重ねていきたい」
スマートドライブは、「中国のシリコンバレー」「世界中の工場が集まる街」といわれる深センにオフィスをかまえる。「アジアはまだまだ保険料が高い。フィリピンやベトナムなどもそう。株主のアクサなども、アジアへもっと進出するという基本戦略がある」と北川代表はいう。
「アジアでの可能性を模索している。古い車にも取り付けられるスマートドライブのシガーソケットデバイスで、クルマの持ち方、クルマとの付き合い方、過ごし方も変わってくる。ビジネスのスピードは、日本よりもはるかに進んでて、もはやシリコンバレーよりも進んでいるなと感じた。深センに集まる起業のようなスピード感で事業を進めたいとも思っている」
「東京圏で展開し始めたスマートドライブのコネクテッドカーを、国内全域へ、海外へと展開していきたい」と北川代表。最後は、直近のビジョンについてこう語った。
「5~10年後、スマートカーズの先に、新しい移動サービスがあると思う。チャンスがあれば、クルマそのものをつくるとか、信号機のアルゴリズムを変えるとか、移動の最適化をさらに広げていきたい」