独自技術でプラスチック部品の拡大を図る---ランクセス

自動車 ビジネス 企業動向
ランクセス代表取締役社長の辻英男氏
  • ランクセス代表取締役社長の辻英男氏
  • 2017年度の業績
  • 自動車向け素材事業も好調
  • 2018年度はEV向け軽量化ソリューションに注力する
  • ポルシェ『パナメーラ』やベントレー『コンチネンタルGT』に採用されたオールプラスチック製ブレーキべダル
  • 非常に高い強度と信頼性が要求されるブレーキペダルに、同社の技術が採用されたことは象徴的なできごとだといえる。
  • プラスチックの一体成型による部品点数の削減が見受けられる
  • 強度が安全性に直結するシートパンも同社のプラスチック技術が使われた。

4月17日、ドイツの化学会社ランクセスは都内において、「2018年度の活動に関する記者説明会」を開催し、好調な業績をアピールした。自動車業界においては、樹脂素材を提供する化学素材メーカーとして知られている会社だ。

直近の事業の進捗について


記者説明会に登壇したランクセス代表取締役社長の辻英男氏はまず、2017年度におけるグローバルの業績について説明した。

「2004年の会社設立以来、過去最高収益を達成することができた。原材料高騰にも対応し、またコスト削減を実施することができた。また昨年買収したケムチュラ社(米国の化学会社で、難燃剤および潤滑油添加剤の大手サプライヤー)の買収による負債も大幅に解消することができた。売上高は前年比+26%の96億ユーロ(=約1兆2400億円)。EBITDA(利益指標のひとつ)は12億9000ユーロ(=約1590億円)。ケムチュラ社も業績に大きく貢献した」

「純利益は減収となったが、これはケムチュラ社の買収やバリューチェーンの見直しなどによるもの。このような特別費用を除けば、純利益は3億7900ユーロ(=約397億円)となる計算だ」

「部門別の業績においても、すべての事業部門で前年比増収増益を達成した。(自動車産業に関連する)エンジニアリングマテリアルズ部門は高性能プラスチックが中心であるが、これにケムチュラ社のウレタン事業が加わった。売上高は前年比+29%、EBITDAも+38%となった。タイヤ事業を展開するアランセオ部門も、非常に厳しいコスト環境のなか、事業を伸ばすことができた」

ケムチュラ社買収後の事業統合についても順調に進んでおり、「(ケムチュラ社の事業は)業績に大きく貢献している。両社の統合のシナジー効果として3000万ユーロ(=39億円)を実現した。これを2020年までに1億ユーロ(=132億円)に引き上げることが目標だ」(辻社長)とした。

また辻社長は、ランクセス日本法人についても事業は順調に推移しているとした。

「日本国内においては、東京・豊橋・姫路の3拠点で活動しており、従業員数は約100名。2017年の売上高は約2億5000万ユーロ(=約331億円)。日本においても全5部門で成長を達成し、またケムチュラ社日本法人との事業統合は順調だ」

最後に2018年度の活動について、「電気自動車などの次世代自動車に向けた軽量化ソリューションの提供や、ケムチュラの事業領域である難燃性素材についてもニーズが高いと認識している」(辻社長)と展望を語った。


自動車向けの素材利用について


説明会の会場には、同社の素材で作られたプラスチック部品が展示されていた。ポルシェ『パナメーラ』やベントレー『コンチネンタルGT』に採用されたオールプラスチック製ブレーキべダルと、メルセデスベンツ『AMG-GT』に採用されたプラスチック製シートパンだ。

プラスチック部品は一般に、複雑な成型が可能なことによる部品点数の削減、組付け工数の削減、軽量化などのメリットがあるが、強度を確保しにくい課題がある。しかし同社の素材を利用することによって、万が一にも破損が許されないブレーキペダルという重要な部品をプラスチックで作ることが実現したという。

これは、ランクセスがもつ独自技術によるものだ、と同社ハイパフォーマンスマテリアルズ統括マネージャーの豊田徳視(とよたとくみ)氏は説明する。

「高い強度を持つ熱可塑性コンポジットシート『テペックス』を、射出成型樹脂と組み合わせて成型することで、通常は金属で作られている部品をプラスチックにすることができる」

熱可塑性コンポジットシートは、同社に限らず各社が取り扱っているが、「射出成型樹脂と組み合わせたうえで、量産品としての完成度や強度、生産性を確保することができるのは、ランクセスにしかできないこと」(豊田氏)とのことだ。

現時点では、新しい素材の部品ということもあり、採用は高級車やハイパフォーマンスカーが中心だが、豊田氏は「ゼロから設計する新エネルギー車などは、軽量化が至上命題のため、採用が広がっていくことを確信している」と今後の展開について明かした。
「XC60が小型になったのではなく、XC40として作りこんだ」。ボルボのコメント通り、外…

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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