中古車流通を支える品質管理の最前線に迫る【オークネット総合研究所】

オークネット総合研究所は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表している。

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競りの方法についても、競師が行う手競りからPOSシステムに移行したことも公平性をもたらした大きな要因である。出品台数の増加に伴い、人間の力では限界がきてしまい、オークションが長時間になり疲労によるミスが発生して競りの流れを狂わせる等問題が発生していた。また入札会場では来場者でどこの業者か分かるため、仲の良い業者と同じ車両を競った場合は手を挙げて入札しにくいという障害もあった。さらに中立の立場であるべき競師が顔馴染みの会員には競りで取り計らっている、気に入らない出品店の車は成約しないように流す等の噂が出てきてしまい、手競りに対する信頼感が薄れてきていた。

POSシステム導入により、そのような問題の解決となったと同時に競りの進行が効率化し、参加者にとって公平で取引しやすい会場へと改善されたのである。

ディーラーでなければ参加できなかったメーカー系オートオークションに比べると、JAAなどのオートオークションは門戸が広くなった。しかし協会の会員であることが参加条件になっており、すべての中古車が取り引きできたわけではなかった。

この状況を改善するために、1980年代になってから登場したのがオークション企業だった。この分野のパイオニアは愛知自動車総合サービスという会社名でスタートしたUSS(ユー・エス・エス)で、参加企業から費用を徴収する代わりに、基本的にどの販売店であってもオートオークションに参加することができた。

企業系オークションと呼ばれるこれらの会社は効率を追求するために、大規模な会場を用意し、競りの自動化を進めたことが、今までのオートオークションとの違いだった。次第にこの形態がオートオークションのスタンダードになり、自動車業界におけるオークションは一気に一般的な存在となった。 しかし完全に障壁がなくなったとは言えなかった。オートオークションに参加する場合、出品する側はオークション会場に車両を持ち込む必要があり、また落札する側も会場まで出向いて仕入れたい車を探したり、状態を自身の目で確認したりと大変な手間になっていた。

この問題を解決するためにオークネットが1985年に始めたのが、TVオークションと呼ばれるお店にいながら仕入れや販売ができる在宅オークションだった。当時はインターネットが普及する前だったので、出展車両の記憶媒体としてレーザーディスクを用い、のちに衛星放送やインターネットに移行したが、落札する側はオークション会場に出かけることなく、店にいながらオークションに参加できる在宅オークションを実現した。オークション会場が遠い地方の中古車販売店や、会場に車両を持っていくことがリスクで手元に置いておきたかった高額車両専門店にとっては有難いものとなった。

初代TVオークション端末

多くの問題を解消したTVオークションだったが、現車を見ることができないという不安もある。そのためにオークネットでは、AIS(オートモビル・インスペクション・システム)という第三者検査機関を立ち上げ10段階の独自の評価制度を制定、全国の訪問検査体制を整えた。このAISの検査体制が現車を見ずにデータのみで行うTVオークションの確立に貢献した。これについては次回詳しく解説することとするが、現在はトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業など主要自動車メーカーの販売店でも採用されている、信頼性の高いものとなっている。

2001年4月にはNAK(日本オートオークション協議会)が設立され、「走行メーター管理システム」でメーター改ざん防止に寄与し、またオークション会場ごとに異なっていた「修復歴車(事故車)」の判断基準統一化を始めるなど、中古車流通はより信頼できるものになった。

車両品質評価書
検査風景

これにより中古車のオークション参加比率は飛躍的に伸びた。その結果、新たなビジネスが登場することになる。そのひとつが買取専門店だ。

自動車販売店の下取りは、長い歴史と経験に基づくものであり、市場の人気はさほど反映されていなかった。しかしオークションでは当然ながら、人気車種は買い取り価格が上昇する。その結果、新車を買うユーザーでも下取りに出さず、買取業者により高価で引き取ってもらうことが多くなってきた。自動車販売店の中古車は基本的に、下取りの車両をそのまま店頭に並べて販売するため、一定の広さの展示場が必要であり、それがコストに跳ね返った。しかし買取専門店は、買い取った車両はすぐにオークションに出品するので、在庫はほとんど持たない。よって広大な車両置き場を確保する必要もなくなる。これが車種によっては販売店の下取りより有利な条件で引き取ってもらえる理由のひとつになっている。

オートオークションの普及はもうひとつ、新しい業態を生んだ。特定の車種のみを扱う中古車専門店の登場である。フレックスオートのように、SUVやワンボックスなどの専門店を構えることで、その車種の購入を考えているユーザーが選びやすくしている。リアルな取引では下取りで入る車種は千差万別であり、こうした品揃えは不可能である。オークションによって特定の車種のみを仕入れることができるようになったことで、専門店が実現できたのである。

《森口将之》

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