【キャデラック XT5 新型】新生キャデラックの第2弾

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昨年12月、ゼネラルモーターズ・ジャパン(以下GMJ)2017年にキャデラックから新モデルを発表するという公約通り、SUVのキャデラック『XT5クロスオーバー』(以下XT5)をデビューさせた。

◇日本とキャデラック

日本にキャデラックが正式に輸入開始されたのは1915年。そしてGMJ(当時は日本ゼネラル・モーターズ)の創立は1927年で今年90周年を迎える。同社は一時、大阪に組み立て工場も保有していた。

現在、GMJの従業員数50名強、ディーラー数はおよそ30店舗と、「少数精鋭、これが我々の強みだ」とは同社代表取締役社長の若松格氏の弁。そして、「ニューヨークのキャデラックやデトロイト本社、そしてGMのグローバルのネットワークの資産、資源を使って価値の高いものをお客様とともに、ビジネスパートナーにも提供、支援に取り組んでいる」という。

GMJの当面の目標について若松氏は、「むやみに販売台数を追うのではなく、質の高い、そして特別なクルマを市場に届けることだ」とコメント。この質にこだわった特別なクルマを提供するとはどういうことか。

若松氏は自身の子供の頃のエピソードを交え説明する。「子供の時に楽しかった家族旅行の思い出や、若い頃の武勇伝などを思い出す時、同時に乗っていたクルマを覚えているだろう。私の場合は幼少時、ワシントンD.C.の郊外に住んでおり、その時父親はシボレー『シェベル』の1966年の中古車に乗っていた。姉と私はその後部座席から見た風景や車中で聞いた音楽を決して忘れることはない。なぜ思い出は色褪せないのか。それは、クルマは文化や流行の象徴であって、そして我々にとって友人や家族や自分の歴史の一部であるからだ」という。

そして、「日本は世界でもトップレベルの自動車産業国であり、自動車社会も成熟している。しかし、自動車を文化として考えた場合、まだまだ発展の機会はあるのではないか。GMJとしても微力だがその発展に少しでも貢献出来ればと思っている。そのために、アメリカラグジュアリーブランドとして、自動車会社として、質の高い特別なクルマとともに、ストーリーのある貴重な特別な体験を皆様に届けするように務めていきたい」と説明。

具体的方策として、5月にブランドスペシャルウェブサイト、「キャデラッククレスト」を立ち上げた。その中では商品のスペックや価格などの情報だけでなく、「アメリカ車の驚きの真実やニューヨークの今、或いはキャデラックがグローバルにどのように展開しているかというコンテンツを充実させている」とコメントした。

◇成長基調のキャデラック

さて、グローバルでのキャデラックブランドの状況はどうか。グローバルキャデラックCMOのウーヴェ・エリングハウス氏によると、「2016年は販売台数30万9000台と1986年以来の最高水準だ。2017年も成長基調で、1~6月の世界の販売台数は27%以上の成長率を誇っている」とし、「グローバルでの高級車市場でのシェアも伸びて来ており、キャデラックが進化し、変わってきたということが認知され始めた結果だ」と好調をアピール。

この成長は「中国が牽引役になってはいるが、日本、韓国、中東、カナダやその他の国々でもキャデラックは成長をしている」と述べ、XT5は、「これまでで最も成功しているモデルだ。高級車市場においてのベストセラーのひとつで、日本でも人気が出ると思っている」と自信を見みせる。

◇キャデラックがトランスフォーメーション

現在キャデラックは変革期にあるという。「“トランスフォーメーション”、変身という言葉はあまりにも使われすぎているかもしれないが、今の我々にとっては最も相応しい言葉だ」とウーヴェ氏。

「キャデラックは素晴らしくユニークな歴史、伝統を持っているブランドであることはこれからも変わりはない。しかし、キャデラックのブランド認知率は世界的に見ても非常に高いものの、キャデラックがコンテンポラリーなブランドであるという認識は低く、今まではこの伸びしろを上手く利用出来ていなかった」と振り返る。

一方で、「これから世代交代が世界的に起こる。ラグジュアリーな高級車を購入するユーザーの8割方が49歳未満の方々になっていく。その傾向は中国が一番顕著であるものの、中国だけに限らない。中国の新車購入層の平均年齢は33歳という数字があり、それだけも人口統計的に見て世代交代、若返りが起きていると理解して欲しい」と話す。

「だからこそキャデラックのラグジュアリーなブランドイメージを次の世代の人たちに向けて作り、提案をしていく。その提案は、彼らの期待を上回るようでなければならない」とし、「良いデザインの、より良い製品、より良いコミュニケーション。これらをただ宣伝するのでなく、ブランド自体が生まれ変わらなければいけないのだ」と変革の理由を説明する。

そして、「ブランドのエッセンスを再定義し、現代化し、キャデラックのブランド価値が、コミュニケーション、イベント、デザインランゲージなど全ての主軸になくてはいけない。これはたった1年で出来るような容易なものではなく、マラソンの様に忍耐を要し、長年かけて積み重ねていくものだ」とウーヴェ氏。更に、「一貫性を持って取り組んでいかなければいけない。時代が過ぎていく中で、まさにこれこそキャデラックだといわしめるようなものにしていかなければならない」と語った。

そういった一環がキャデラックの本社機能をデトロイトからニューヨークのソーホーに移したことにも表れている。ウーヴェ氏は、「ニューヨークはラグジュアリーの拠点になっているところであると同時に、色々なトレンドが生まれる場でもある」としたうえで、「ニューヨークの精神、スピリッツ、立ち止まることのない、眠ることのない街だ。自動車以外のラグジュアリーの専門家が世界各地から集まる街でもある」とその魅力を説明。従って、「コンテンポラリーなラグジュアリーブランドであればニューヨークにいることが当然である」とした。

◇XT5はキャデラックのクロスオーバーの要

キャデラックは現在、製品ポートフォリオを全面的に再構築しておりウーヴェ氏は、「お客様の高い期待に応えられるよう、一貫性あるブランド価値を提供していかなければならない」とし、その第1弾として投入した『CT6』は、「我々のラインナップの頂点に立つモデルとして開発された。そしてXT5はキャデラックのクロスオーバーの要になる」と位置付ける。

そのXT5は人気の高いラグジュアリーSUVセグメントへ、『SRX』の代わりのクルマとして投入した。ウーヴェ氏は「ラグジュアリーSUVセグメントほど急成長を遂げたセグメントはない。従ってXT5は、SRXよりも一歩も二歩も前進している。デザインにおいても、グリルやフロントライトは非常に特徴的で、これこそが我々が伝えたい顔なのだ。これを見てキャデラックだということは誰の目にも鮮明に映る」。更に、「ピンと張っていながら、滑らかな流線を描くボディ。そしてフォルムは大胆でありたいのでシャープなエッジを効かせているなど、キャデラック独特の表現を纏っている」と話す。

使い勝手についても、「目の肥えているラグジュアリークロスオーバーを求めるお客様の期待に応えられる」とし、新設計のプラットフォームにより、「今までにないユーザーエクスペリエンスを生み出す。これはレジャーや、ビジネスなどあらゆる場面にマッチし、SRXよりも軽量で俊敏性に富んだ、そして安全で効率性の高いクルマに仕上がっている」とその特徴を語る。

XT5のホイールベースはSRXに比べ2インチ長くなり、室内幅はおよそ1インチ広くなったにも関わらず、ボディサイズは若干小さくなった。また、後部座席のレッグルームはこのクラス最大のゆとりを実現。リアシートにはリクライニングと前後スライド機構が搭載されたことで、居住性とともに、ラゲージスペースを上手く活用することが可能だ。

ゼネラルモーターズ・ジャパンマーケティング&カスタマー エクスペリエンスの久保慶太氏によると、「レッグルームでは最大1m確保。リアシートは12度リクライニング出来るので、競合モデルよりもリラックスして座ることが出来る」という。また、「ヒップポイントが高いので、後席でも苦にはならないだろう」と述べる。

そして、XT5のターゲットユーザーは、「流行に敏感で自分のスタイルを持っている人だ」という。また、「アメリカでの傾向として女性に人気がり、これはSRXから如実な傾向だ」(久保氏)とした。

◇SUVで更に2モデルを投入予定

今後のキャデラックの動向についてウーヴェ氏は、「今後数年にわたって積極的にモデル展開する。クロスオーバーに関してもXT5より大きいサイズと小さいサイズの計2モデルを投入する」と明言。

デザインの方向性は、「コンセプトカー、『エスカーラ』が表している。これこそがデザインの大胆なアプローチを示すものであり、今後のキャデラックに踏襲されることになる」とコメント。

その一方で、「テクノロジーはより先を目指していきたい。例えば高速道路でのハンズフリー機能を実現出来る、スーパークルーズをトップレンジのCT6に搭載する」とし、「快適性や利便性、長距離ドライブだけではなく、毎日の通勤にも快適さと利便性を提供する」と述べる。そして、「日本のお客様にも、なるべく早くキャデラックの最先端テクノロジーを届けられるようにしていきたい」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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